第133話 アイデア出し
闇邪教をやっつけたい。
従者のファントムを呼び出した。
「最近、お呼びが掛からないので、忘れたのかと思ってましたぜ」
「悪い、悪い。交換日記のやり取りの仕事がなくなったからな。でも囮としては役に立ってるよ」
「オークとオーガ素材を毎日1体売って、あっしの取り分で遊んでいるだけでさぁ。もう、スリは無理みたいですぜ。すっかり腕が鈍っちまった」
「札を貼って回るぐらいはできるだろ」
「それぐらいなら、ちょろいもんです」
計画はこうだ。
感染する呪いを開発する。
それに、頭が馬鹿になる呪いを加える。
嘘判別で、闇邪教しか掛からない。
一般人に危害を加えるような教義を持つ宗教がもれなく対象だ。
闇邪教でなくても、条件に合ったなら、馬鹿になってもらう。
後で解除して、裁判する手筈。
めんどくさいけどね。
魔力を操るのは微弱な電気だと判明してる。
呪いを感染させるのもこれで問題ない。
設計は大変だけど。
この手法は危ないので、サマンサ先生にも教えられない。
AIなら、プログラムを書いてくれるのにな。
いまの魔力コンピュータの性能ではAIは夢の彼方。
「ライド様、お茶は如何です。さっき誰とお話になってたのですか?」
「従者のファントムだよ。あまり姿を現さない」
「お久しぶりですぜ」
「ああ、交換日記を持ってきてくれた方ですね」
「声で分かったのか?」
「声以外に匂いがしないのですわ」
「へぇ、そこは気をつけてますさぁ。匂いでばれたら、命がいくつあっても足りませんぜ」
カリーナの鼻が良いのが判った。
これは気を付けないとな。
女に抱きつかれて、香水の匂いとか移ったら、ちょっと不味い。
「カリーナは香水を付けないのか?」
「ポーション作りの趣味がございます。ポーション作りは匂いの成分でも、失敗することがありますので」
なるほどね。
料理人とかは香水を嫌がったな。
似たような物か。
さて、呪いだな。
危険な信者に感染する呪い。
ちょっと待て。
永遠の眠りの呪いは破られたよな。
空になるまで、魔力を抜けば良いだけだから、分かれば簡単だ。
その手法は闇邪教に知られてる。
解けない呪いにするには?
呪いの魔力供給を、呪いが掛かった人の魔力ではなくて、遠方から補給すれば良い。
魔力結晶の中継器は、この国全体にばら撒いてある。
そこから、供給させる。
それには制御する魔道具が必要だな。
こういう時こそ、魔力コンピュータだ。
意外に大規模プロジェクトだ。
サマンサ先生、いやサマンサ教授にお願いしたい。
うーん、でもそれをすると、俺の秘密が色々とばれる。
俺がふたりいればな。
何か画期的なアイデアが必要だ。
「二人とも、魔力コンピュータの資料を読んでくれ。それでアイデアが欲しい」
「はい、わたくしでよろしければ」
「あっしもですかい。まあ、読むだけなら」
こういうのは枠にとらわれない発想が欲しい。
お茶を飲んで、お菓子を食べて、ふたりの考えを待つ。
「わたくしの頭では理解できないですわ。お役に立てなくて申し訳ございません」
カリーナは駄目たったようだ。
ファントムは見えないので、どうなのか分からない。
「あっしが思うに、水路って考えたら、不味いんですかい」
「回路って、まあ水路だって考えたら、近い」
「半導体ってのは水門と考えたら、納得ですぜ。規則的に自動で動く水門みたいな感じでさぁ」
「かなり、イメージ的に近いかもな」
「水路と水門をどうやって作るか考えれば、良いと思いますぜ。地面に水路を作っても、これは作動するんですかい」
「うん、動作の法則が合ってればね」
水路でコンピュータを作るのは現実的ではないけど。
ああ、水路って、空洞だよな。
魔力が通るのは空気。
人体もだけど、それは良いとして。
魔力が阻害されるのは、魔力の塊。
だから、魔力結晶は魔力が通らない。
穴を開けたら通るよな。
うん。
でもって、魔力結晶に半導体の機能を持たせる。
魔力結晶コンピュータ。
サマンサ教授には公開できない方法だな。
魔力結晶なら、自由に作れる。
回路を刻むのも容易い。
微弱な電気を出す魔道具で、自動的に作ることも可能だ。
でも、開発にはかなり時間が掛る。
そんなのやってやれない。
「ライド様、このコンピュータは、頭の中を再現しているのですか?」
「いいや。脳細胞は別の原理で動いてる」
待てよ。
魔力結晶で脳みそを作ったら。
スキャンしながら、そっくりに作るのは難しくない。
実際に思考する魔力結晶の脳ができるだろうか。
ニューロン細胞と、電気信号と、脳内の化学物質を再現すれば良いのか。
これはこれで、かなり開発に時間が掛かる。
うん、サマンサ教授に丸投げしたい。
「ふたりともありがと。参考になったよ」
「大してお役に立てませんでしたわね」
「あっしはこのデジタル回路ってのを気に入りましたぜ。サマンサ教授に弟子入りしたいぐらいでさぁ」
「カリーナお疲れ。ファントムは好きに弟子入りしたら、良いと思うよ」
魔力結晶コンピュータと、魔力結晶脳か。
作るのにどれだけ、時間が掛かるかな。
これを作ったら、古代人文明を超えるかも知れない。
10年ぐらいは掛かるような気がする。
感染する呪いはしばらくアイデアを練ってみよう。
別のアプローチが見つかる可能性もある。
こういうのは山ほどのボツ案が出るものだ。




