第132話 金貨チェッカー
王から手紙。
偽金貨を王都内は根絶したが、民衆が不満らしい。
疑心暗鬼になってるってことだな。
守備兵に偽物かどうか、判断してもらっていたりするが、悪徳守備兵が偽金貨にすり替えたりしてる。
近衛騎士が、偽金貨レーダーで逮捕に向かったりしてるけど、常に動いていると捕まえるのは容易ではない。
混乱と怒り。
それが溜まっている。
闇邪教のダンジョンのアジトを勇者スェインが潰したが、判明してないアジトもありそうだな。
分身ナンバー1が、授業の合間にサマンサ先生を訪ねた。
カリーナの分身と一緒にね。
「私がふたりほしい」
「忙しそうですね」
「先生はかなりお金を持っていらっしゃるから、助手を雇われたらどうでしょう」
「駄目よ。ありだけど。婚約者の手前、女性でないと。女性の研究者は少ないの」
「生徒にやらせたら?」
前世の大学では、学生や大学院生が教授の研究を手伝ってた。
「カクルド家でも、女性の研究者は少ないですわ。ライド様の提案がよろしいのではなくて」
「生徒って、選択肢はありなんだけど、実力がぁ! 成績上位者はプライドが高くて、安い金では動かない」
「けちる必要なんかないのでは」
「ですわね。ここぞという時は使わないと」
「成績上位者は寄り道してくれない。他人の研究を手伝うぐらいなら、自分の研究をする。私がそうだったから」
まあ、そうかもな。
前世で講師とかは、自分の研究を優先したがってた。
教授の手前、面と向かって言ったりはしないけど。
権力が必要か。
「ということは、サマンサ先生を教授にするしかないな。今までの論文で実績は十分。ただ、席がないんだよな」
「席がないのなら、作ればよろしいのではなくて」
「だよな。何か新しい学問を立ち上げるか。魔力コンピュータの教授なんていいかもな」
「ですわね」
「ライド君、そんなことができるの? 教授の壁は厚いのよ」
「ふふふっ、国王を動かせば良い。ちょうど良いネタがある。金貨チェッカーだ。これを作ってただで配る。金は俺が出す」
「分かっておりますわ。ライド様。カクルド家で、やるのですね。最初はただで配って、落ち着いたら、それなりの値段で売るですわね。便利さに蝕まれたら、手放せません」
「どうせなら、金貨チェッカーに広告を入れよう」
「ライド様、悪ですね」
「ふふふっ。カクルド屋、そちもな」
「ライド様には敵いませんよ。ほほほっ」
「はははっ」
「それ何です?」
「ああ、劇でそういうのがあるんだ。お代官と大黒屋の話」
「ええ、嵌ってしまって。何度みてもあれは良いものですわ」
「クルクル回すと、ドレスが脱げるってアイデアは、わけ分からんけど受けたよな」
「アーレーって声が秀逸ですわ。ライド様のアイデアをカクルド家が支援してる演劇家が劇にしたのですわ」
「劇は助手をたくさん雇って、暇ができたら行きましょう。ええと、金貨チェッカーを作って、王様にアピール。私が教授ってわけね」
「うん。成分分析の魔法陣は出来てる。あとは重さと大きさも加えたら完成かな」
「楽勝です。誤差の判定が少し難しいだけです。これで、私も教授! るんるん♪」
俺達などいないかのように、サマンサ先生は魔道具を作り始めた。
数日後、サマンサ先生から、魔道具が届いた。
「それにしても、ライド様はやりますわね」
「あれのこと? 金貨チェッカーにパスワードを仕込んだって奴ね」
「ええそれですわ」
「パスワードが入ってない金貨チェッカーは偽物。そういうイメージを植え付けるんだ」
「ライド様、悪ですね」
「そちもな。ただで魔道具を配って、市場を開拓したのを奪われてたまるか」
魔道具が出来たので、今回の計画書を王の執務室に持って行く。
「何度言ったら。わしは王だぞ」
「俺はそんなことを忘れるほどボケてない」
「王様、横やりを入れられると、面倒ですから」
王は計画書を読んだ。
「くっ、良くできた計画で忌々しい。反対できん。褒美がサマンサ女史を教授にか。これから、ずっと金貨チェッカーが売れると考えたら、そんな褒美は微々たる物よな」
「ライド様は悪ですから」
「カクルド屋、そちもな」
「ライド様ほどではございません」
「お礼は山吹色の菓子だぞ。分かっておるな」
「ええ、もちろん」
「悪代官成敗記か。わしも見に行った。斬新過ぎて、目からウロコの劇だったな。アーレーって場面は子供には見せられないが、面白かったぞ」
もちろん本番はなしだよ。
ただ、下着姿でも、この世界ならエロの範疇だ。
王様が気に入っているなら、エロの規制で捕まったりはしないだろう。
「計画発動しても良いってことね?」
「仕方ない。許可する」
数日後、金貨チェッカーは配布された。
王城前と、商業ギルドと、カクルド家の邸宅前で、金貨チェッカーに関する相談を受け付けてる。
金貨チェッカーの修理や、偽金貨を発見した時の対処など、色々だ。
「金貨チェッカーの広告で、カクルド家が作ってる商品の売り上げが上がった。だが、娘はやらん」
伯爵が俺を見て引きつった笑顔でそう言った。
「他の人は認めてますよ。お義父さん」
「誰がお義父さんだ。なんで味方がひとりもいない?!」
「知りませんよ」
「屋敷で、カリーナといちゃいちゃしてるそうだな。許さん」
ああ、蝶々部隊から、情報が漏れたな。
「メイド達もたくさんいますし、ふたりきりってことはないですよ。安心して下さい」
「安心できるかぁ! 大きくなったお腹で結婚式をやって、俺はきっと殺意が芽生えるに違いない」
「あなた、言いすぎですよ。それに、結婚式って言葉は、結婚を認めたってことではないですか」
「知らん。結婚式なんて言葉は知らん」
「見苦しいですよ。いい加減にしませんと、先代の伯爵様に、告げ口してしまいそう」
カクルド伯爵はカリーナが好きだな。
孫でも産まれたら、きっと考えも変わるかもね。




