第130話 看守ゴーレム
分身ナンバー2。
プリンクの様子。
「それは何だ?」
「マッサージ魔道具の差し入れだ」
「魔力が使えないのに、魔道具の差し入れか?」
「看守に頼んで、魔力を充填してもらうのは問題ないだろ。使うのも看守が見張ってる」
「調べるから少し待て」
調べたが、問題はなかったようだ。
隣にいるカリーナの顔を見ると真っ赤。
うん、あの魔道具はマッサージだけど、マッサージではない。
一部分を刺激はするけどね。
サマンサ先生が開発してる奴だ。
女の囚人からの、注文らしい。
映像と音声を切った。
そして、様子を見に行くと、女の囚人の牢の前で、ニヤニヤしながら笑う看守。
あれの一部始終を見たんだな。
問題なのは、癒着が起こりそうな雰囲気ってことだ。
大胆な色仕掛けだな。
AV女優も真っ青だ。
「女性の看守を採用するように進言するか」
「あの、牢って分身の映像で見ても、体に悪そうな職場ですわ。看守さん達が可哀想に思います」
「うん、確かに。じめじめして、ネズミとかも出るし。カビ臭いし。体には悪そう。カリーナは優しいね」
「看守として、ゴーレムを採用してみてはどうでしょうか」
「カクルド家のゴーレムを国に買ってもらうのか」
「最初は無料で提供いたします」
「どんな劣悪な環境でも耐えるし、囚人に殺されたりしない。力も人間よりずっと強い。その、便利さに手放せなくなったら、高値で売り込むのか。カリーナ、お主も悪よのう」
「ライド様ほどではございませんわ。おほほほ」
「はははっ」
うん、ロボットみたいなのは、長い目でみたらお得なんだよな。
人件費ってのは高い。
看守なんてのはほとんど立っているだけだから、10体のゴーレムをひとりで操ることも可能だ。
それに、暴動なんかの時は、応援のオペレーターをすぐに呼べるような部屋で、操作してればいい。
専門のオペレーターはひとりだけで、使用人の何人かを副業とかで使えば良い。
空き時間があるような職は、使用人だけではない。
看守が牢から出る必要がないなら、牢と地上を隔てる扉は、物凄く厳重にしても良い。
そうすれば、ゴーレムが賄賂を受け取っても、それを牢から運び出せない。
癒着は減る。
扉の門番は信用できる者にやらせないとだけど。
嘘判別魔法もあるし、何とかなるだろ。
数日後。
「何で看守がゴーレム!」
プリンクが驚いている。
「ゴーレム5号です。何かあれば、お近くのゴーレムに申し出て下さい」
「うん……」
何となくで納得して、頷いてしまうプリンク。
ゴーレムを壊そうとした囚人は多数いるが、鉱山で使っているゴーレムが簡単に壊れるわけはない。
囚人同士の喧嘩も簡単に仲裁。
汚い、危険、臭いの3K職場も、ゴーレムなら楽勝。
「看守が解雇されて可哀想だな」
「ご心配なく、カクルド家で雇用しておきましたわ。カクルド家はゴーレム作成で、人手が常に不足しているのですわ」
恩を売ったってわけね。
抜け目ないな。
女囚人のマッサージのあれが、魔力電池式になった。
協議の結果、許されることになったようだ。
息抜きが必要ってことだね。
看守ゴーレムは、電気ショック付きにバージョンアップされた。
大人しくならない囚人が出たからだ。
さすがに電撃を食らうと大人しくなる。
王から、手紙が来た。
カリーナと来いとある。
分身のカップルでお邪魔する。
「何でいつも、規則を守らない?」
「めんどくさいから」
「刺客に狙われていますので、手続を省略いたしました。申し訳ありませんわ」
「お前ら、悪いなんて思ってないだろ」
「まあね」
「心外ですわ。わたくしは王様の臣下でございます」
「もう、良い! 話が進まん! ゴーレムを兵士として運用できないか?」
「そんな兵力要らないだろう」
「カクルド家と致しましては、死の商人になるつもりはございません」
「貴族達があれを知って、うるさいのだ」
「兵器産業は儲かるからな。利権の一部でもウハウハだよな。反吐が出る」
「産業が興れば国が潤う」
「落ちが見えるんだよ。ゴーレム兵士が揃ったら、つぎ込んだ金を回収するために、侵略か。穏便な策でも兵器輸出だな」
「戦争の引き金を引いた愚王と呼ばれると言いたいのだな。憎らしい程、ずけずけ言う奴だ」
「嫌なら、今後一切手を引くぞ。沈黙させてもらう」
「エリクサーを止められただけで、王家は滅亡する。できるわけなかろう」
「分かってたら良い」
「兵器は駄目か?」
「ああ、人の暮らしを豊かにするように見えて、兵器は何も生産しない。待つのは破壊だ」
「いずれ、カクルド家と同等の性能のゴーレムが開発されるであろうな」
「損をしたとか、時流に乗り遅れて古臭いとか、当家が陰口を叩かれても構いませんわ。血塗れの金貨を手に入れて、なんの価値がありましょうか」
「あい、わかった」
戦争が起こりそうになったら、どんな手を使っても止める。
俺は人殺しだが、良心に背いたりしない。
殺しでもカリーナに話せないことはしない。
カクルド家では殺人ゴーレムは作らないようだ。
分かってたよ。
作るのなら、既に作ってただろう。
カリーナも反対しそうだ。
カクルド伯爵も嫌なんだろう。
エリクサーで完全に、善人のイメージがついたからな。
ぶち壊すのは馬鹿のやることだ。
悪名で生きるのもそれはそれでありだが、普通の人はそんなのは嫌だ。
後ろ指を指されるよりは、尊敬されて生きたい。
こういう、イメージの力は馬鹿にできない。
領主が良い人だというイメージだけで、侵略や苦難が防げたりする。
いざという時に助けが来るひとは強い。
カクルド伯爵は馬鹿ではないから、その辺は計算してるに違いない。
王にもなると汚い物も飲み込む必要があるんだろうな。
だから、王がこういう提案をしてきた。
そんな感じかな。




