第129話 偽金貨
「偽の金貨を作ってます」
元マフィアの闇邪教を監視してた蝶々部隊から報告があった。
姿を消した分身が現場に潜入。
おお、材料は鉛か。
魔力染めで金色にしてるんだな。
よく見ると金貨とはだいぶ違う。
魔力染めは魔力が沢山いるので、それを信者の数で補っている。
偽金貨をいくつか盗んで、本体の下に運ぶ。
届いた偽金貨を秤で量ると、重さも違う。
当たり前だけどね。
「金策と政情が不安定になることも狙ってるのかな」
「そうでございますね。偽貨幣鋳造は死刑なのに、命が惜しくないんでしょうか?」
「闇邪教の任務で死ぬと天国行けるって信じてるらしいからね」
とりあえず、判明しているアジトを潰して、関係者も逮捕しよう。
分身ナンバー3が隠蔽魔法を使って、王様の執務室にお邪魔した。
「おい、あのな。正規の手続きを踏めといつも言っているだろう。何度言えば分かる!」
「闇邪教というカルト教団が偽金貨を作ってるぞ」
「守備兵にでも報せれば良いだろう。わしは忙しい」
「闇邪教のスパイは、守備兵にも貴族にも潜入してる。近衛騎士は嘘判別魔法で確かめたから、大丈夫だが」
「守備兵のスパイも調べたら良いだろう」
「守備兵を確かめても、そばにいる人間までとなると大変だ。それに相手は魔法をはじく結界を使ってる」
あの魔道具は闇邪教の幹部が使っていたが、おそらくいまは量産しているだろうな。
「近衛騎士はどうやって確かめた?」
「奴らは魔法をはじくのを、魔道具でやってる。そういうのは近づけば、分かるんだ」
魔力の流れのエキスパートだからな。
近くに寄れば、流体把握魔術で分かる。
「ふむ、近衛騎士に命令するとしよう。こっちの得もあるからな。犯罪を減らすと、人気が上がる」
「だがアジトが王都だけとは限らない。地方都市にもあるかもな。偽金貨の監視は何か必要だ。じゃな」
「くそっ、面倒な仕事を押し付けて、消えやがって。王をなんだと思ってる」
王の悪態を聞きながら、その場を後にした。
偽金貨対策か。
警告はしたから、王がなんとかするだろう。
数日の報告書で、判明してるアジトは全て潰されたと書かれていた。
その場にいた関係者は処罰されたようだ。
死刑ではなく。
鎖に繋がれ身動きできなくして、魔力を搾り取るだけの存在にされたらしい。
栄養価はあるが、不味い飯を胃に無理やり入れられ生きているだけの存在。
惨い刑だが、仕方ない。
この刑の内容は立て札に書かれてた。
見せしめだろうな。
そして、偽金貨が大量に出回った。
王って無能かよ。
対策はどうなってる?
偽金貨注意のお触れは出したらしい。
商人は重さで判断してる。
何枚になるのかで、掛け算での計算は必要だが、表にしておけば、問題はない。
ただ、めんどくさい。
露店などでは、そんなことはやってられない。
騙される奴が多数出てしまった。
庶民の怒りが広がっている。
これは、良くないな。
都市の門などで、門番が金貨をチェックしてるが、自己申告だ。
馬車には隠す所などいくらでもある。
密輸は完璧に防げない。
馬車に乗ってる人が、そうと知らずに密輸してる場合もある。
例えば、馬車を借りた場合などだ。
貸した業者が密輸の品物を仕込んでも、馬車を使っている人は気がつかない。
嘘判別魔法も役に立たない。
質問領域で、闇邪教をあぶり出すのも難しい。
近衛騎士に逮捕された信者の中に、闇邪教と違う名前の教団所属が多数いた。
根っこは同じなんだけど、信者は別の名前の教団だと信じてる。
全滅させるのは難しい。
幹部は例の結界を使ってるから、質問領域も効かない。
とりあえず、偽金貨をなんとかしよう。
成分分析と形状分析と重さ分析、このみっつで偽金貨をあぶり出す。
この機能の魔道具を広範囲に作動させるのには、巨大魔石だな。
あって、良かった巨大魔石。
近衛騎士の建物の中に設置した。
王都に存在する偽金貨の場所が全て分かる。
「これ全部を俺達がやるのか?」
「激務過ぎる。絶対に死ぬ」
「神よ」
「赤い点恐怖症になりそうだ」
「くそったれ」
近衛騎士団長の執務室に入る。
「ファントム様、偽金貨探知魔道具ありがとうございます」
お礼を言いながら、怒った顔だな。
「金貨10万枚を寄付する。労ってやれ」
「ありがとうございます」
今度のお礼は笑顔だった。
「仕事は急がなくて良い。確実にやっていけ。根絶は難しいからな。仕事は毎日、定時で終わらせろ。で、飲み食いを存分にさせたら良い」
「はい、その仰せの通りに」
「王や大臣を文句を言ったら、俺が何とかしてやる」
「それは、ありがたいですね」
こんなところで良いか。
「偽金貨の工場が判明しました。ダンジョンです。ダンジョンから出された不審な袋を積んだ馬車が出てます」
蝶々部隊はやるな。
ボーナスを弾まないと。
「でかした」
ダンジョンコアに寄生してるな。
邪教の幹部もそうしてた。
その技術が受け継がれているのだろう。
ダンジョンコアの魔力があれば、かなり大量の偽金貨が作れる。
他のダンジョンにも、偽金貨工場はあるんだろうな。
だが、馬車への積み込みを監視すれば良いだけ。
1000人はいる蝶々部隊の9割ぐらいをそれに当てよう。
ダンジョンの偽金貨工場は、勇者スェインが潰すと言う。
勇者なら負けないな。
あまり、勇者に人殺しはさせたくないが、仕方ない。
数日後、スェインが全員を生きたまま逮捕したと、立て札で知った。
思ったよりやる。
勇者選抜試験の時より何倍も強くなっているのかもな。
侮れない奴だ。




