第128話 魔法半導体
俺とカリーナの分身がサマンサ先生の研究室に入った。
「魔力コンピュータがぁ!」
「サマンサ先生、段々とキャラが崩壊してますよ」
「元からこうでしたわ」
「最初は偉そうな学者口調だったんだよ」
「見る影もありませんわね」
「だって、賢くみられたいじゃない。それより、聞いて。性能で負けた。価格も」
「だから、修羅の道って言ったでしょ」
「ライド様、ゴーレムの性能アップのためにも頑張って下さいまし」
「カリーナの頼みなら、しょうがないな。実は画期的な案があるんだよね」
「早く教えて。先生、何でもする。ライド君、溜まってますよね。結婚前には。あれの男性版を作っても良いですよ」
「先生! ライド様を誘惑しないで下さい!」
「だってぇ」
「よし、発表するよ。魔力の進む速度は遅い。電気か光を使ったコンピュータを作るんだ。何倍も計算が早くなる」
「それって、一からやり直しじゃないですか! 今までの苦労は?!」
「開発にはつきものだ。既存の方法をぶち壊してこそ、新しい物が産まれる」
「ライド様、恰好良いですわ」
「画期的なのは認めましょう」
「魔法って光を曲げられるよね。電撃もだけど。じゃあ、デジタル回路も組めるはずだ」
「研究費が馬鹿になるほど必要になります」
「そこは、カリーナの所が出してくれるだろう。のちのちは大儲けだから」
「ええ、儲かっている時こそ投資ですわ」
「仕事が忙しくて、婚約破棄されたら、どうするんですかぁ!」
「修羅の道には愛など不要」
「でも、忙しくなると、逢瀬が激しくなるんですよね」
「先生、恥じらいはどこに行ったのです」
「カリーナ、この人に倫理とか恥じらいを求めてはだめだ」
「失礼な。先生にだって恥じらいはあります。それより、もっと情報を」
「電気でデジタル回路を作るには、半導体って物質が要るんだよ。詳しくは知らないけど」
「それは研究で何とかしますが。とほほ、どれだけの時間が掛ることやら」
「光は知らん。何で魔法で光が曲がるのかも分からないから」
うん、魔力を込めた魔石とかに半導体の機能を持たせられないかな。
ただ、魔力は使うと減るんだよね。
電池みたいに時間が経つと使えなくなる半導体は、欠陥商品だ。
えっと、電池なら、充電すれば良い。
魔石半導体に魔力供給する仕組みを作れば良いのか。
なんか行けそうだな。
「ライド様、閃いたお顔ですわね」
「ああ、魔石か何かで魔法半導体を作るんだ。そして、それに魔力供給して動かす」
「ふむふむ、半導体の作動は、魔力コンピュータで分かってます。光とか電気を自在に動かして、その機能を実現する。それを魔法半導体で行う。行けますね。魔法半導体の開発次第です。光の発振器と、電気の発振器も必要になりますね」
魔法半導体か。
ええと、魔石や魔力のこもった鉱石が、魔道具ってことだよな。
半導体ひとつの動作は単純だから、魔法陣がなくてもできるかも知れない。
特に鉱石に魔力を入れると、色々な特性が出る。
半導体の働きをする物も存在するかもな。
研究して、試しまくるしかない。
研究者の人数さえ確保できれば、何とかなるか。
魔法電気半導体と、魔法光半導体の開発が始まった。
そのうち、できるに違いない。
でも、これを作ってもすぐに真似されるな。
鉱石の成分分析は簡単だから。
発明者として、サマンサ先生の名前は歴史に残るかも知れないけど。
苦労に見合う価値があるのかな。
俺なら、そんな物は要らない。
でも、研究者ってのは未知を知りたいというのが、原動力であり願いなんだよな。
金とか名誉とかは副産物みたいな物だ。
俺は研究者にはなれそうにないな。
インクジェットプリンターもなんか出来たかも。
インクを焼きつける魔法鉱石が見つかれば良いんだ。
インクを操るなら、水魔法みたいな感じだな。
ただ、これに魔法光デジタル回路または、魔法電気デジタル回路を付けて作動させりゃ良い。
アイデア的には簡単だな。
実際に作るのは、かなり時間が掛りそうだが。
俺がやるのではない。
インクジェットプリンターのアイデアを書いて、サマンサ先生に渡した。
仕事が増えたぁって嘆いていたけど、嫌だとは言わない。
研究の仕事が好きなんだな。
俺はなんちゃって発明家で良いや。
日本で暮らしていた時の生活環境を実現すれば満足。
だって、サマンサ先生に提供したアイデアは、前世の知識だからね。
新しい発見なんかしてない。
そういうのを求めてもないからな。
便利で平和に暮らしたいだけだ。




