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龍祓録(りゅうばつろく)  リメイク版  作者: エビ


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9/10

5話

龍華と並び、人混みへ足を踏み入れる。


その途端、空気が変わった。


わずかに重い。


皮膚が、ぴりりと粟立つ。


濃密な龍気と受験生たちの緊張が混ざり合い、張り詰めた空気を生み出していた。


二人は人の流れに従い、建物の中へ入る。


吹き抜けの広いロビーには、多くの受験生が集まっていた。


その中央には、一基の龍炎炉が据えられている。


腰ほどの高さまで石で囲われた円形の炉。


その中心には、一振りの黒い剣が深く突き立てられ、刀身を包み込むように青紫色の炎が静かに燃え盛っ


ていた。


不思議なことに熱は感じない。


だが、炎からは濃密な龍気が絶え間なく溢れ出し、ロビー全体を満たしている。


受験生たちは事前に送られてきた認証札を取り出し、一人ずつ炎へ投げ入れていく。


札は燃え尽きることなく淡い光へ変わり、炎の上へ文字が浮かび上がった。


『受験番号 A-0218』

『第一試験会場 第三試験室』


表示を確認すると光は静かに消え、認証札だけが元の姿で落ちてくる。

龍華は認証札を取り出した。

白銀色の光沢を帯びた、金属とも紙ともつかない不思議な質感の札だった。


「じゃあ、先にやるね」

そう言うと、龍炎炉の前へ進み、迷うことなく認証札を炎へ放る。

札は吸い込まれるように炎へ消え、一瞬だけ淡く輝いた。

次の瞬間、光の文字が浮かび上がる。


――受験番号 S-0182

――第一試験会場 第三試験室


「同じ教室だといいな」

龍華は認証札を受け取り、小さく笑った。


続いて昴龍が前へ出る。


認証札を取り出し、静かに炎へ投げ入れた。


その瞬間――


轟ッ――。


龍炎炉の炎が爆発するように膨れ上がった。


青紫色の炎は一瞬でロビー全体を覆い尽くし、天井近くまで駆け上がる。


昴龍は思わず目を見開いた。


――俺か……?


考える間もなく、炎は瞬きをするほどの時間で元の大きさへ戻る。


まるで何事もなかったかのように。


「っ!?」


誰かが息を呑む。


数人の受験生が反射的に身を引き、一斉に顔を上げた。


「今……何だった?」

「炎が急に……」

「気のせいか?」


ざわめきは広がる。

しかし、それが何だったのか理解できる者は誰もいない。

あまりにも一瞬の出来事だった。


昴龍もまた、龍炎炉を見つめることしかできなかった。

やがて炎の上へ文字が浮かび上がる。


――受験番号 S-0183

――第一試験会場 第三試験室


「お兄さまも同じ教室だね」

龍華が安心したように微笑む。


「ああ、みたいだな」


昴龍は認証札を受け取り、小さく頷いた。


胸の奥に残る小さな違和感だけが、消えずに残っていた。


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