4話
前方に、世界龍評議会日本支部の建物が見えてきた。
世界龍評議会の建物は、周囲のビル群の中でもひときわ異彩を放っていた。
無機質なコンクリート色の外壁。
装飾らしい装飾はほとんどなく、その姿は、まるで都市の中に築かれた要塞のようだった。
建物へと続く道もまた、この街には似つかわしくない。
石畳が一直線に伸び、その両脇には等間隔で石灯籠が並んでいる。
まるで古い神社の参道だけが、そのまま都市へ切り取られてきたような光景だった。
だが、その存在感とは裏腹に、どこか違和感がある。
建物の輪郭がわずかに霞み、視線を向けても印象が定着しない。
目を離した瞬間、そこに建物があったことさえ忘れてしまいそうな、不思議な感覚。
昴龍には、その正体が分かっていた。
龍気を用いた認識阻害術式。
一般人が不用意に近づかないよう、建物全体を覆う形で結界が張られているのだ。
龍族の施設では珍しくない技術だが、ここまで大規模なものはそう多くない。
「……すごい」
隣で龍華が石灯籠を覗き込み、小さく感嘆の声を漏らした。
その視線は建物ではなく、石灯籠の中を流れる龍気へ向けられている。
「それが何か分かるのか?」
昴龍が尋ねると、龍華は小さく頷いた。
「うん。灯籠の中を龍気が巡ってる。それぞれが繋がって、大きな結界を作ってるみたい」
龍華は灯籠から灯籠へと視線を移し、龍気の流れを目で追う。
「流れにも、ほとんど無駄がない。すごく綺麗……」
感心したように呟きながら、道の先にそびえる建物を見上げた。
「これだけ高度な術式を、ずっと維持してるなんて……」
その声には、隠しきれない驚きが滲んでいた。
「やっぱり、評議会ってすごいんだね」
昴龍も改めて建物を見上げる。
確かに、その言葉に間違いはない。
世界龍評議会。
世界中の龍族を管理し、支援し、秩序を維持する世界最大の統括機関。
その力の一端は、目の前に建つ日本支部を見るだけでも十分に伝わってきた。
そして――。
建物の正面には、すでに大勢の受験生たちが集まっていた。




