突きつけられたもの
こんな戦い方は初めてだった。
鼓が剣術も仙術も使わない状態にも関わらず、攻撃を当てることすらままならない。
これまでは自分たちの実力に鼓が合わせていたのだという確証が、悔しさに拍車をかける。
「希、俺が遣り合ってるうちに」
「やってみる」
鼓へ突進し、渾身の力で刀を振り下ろす。
ガチンという音が耳を突き、骨まで響く抵抗を感じた。
「やっと出したな……!」
「出さなくても結果は変わらない。が、お前らのためだ」
瑞の刃を止めたのは、目の前に現れ交差する2本の長刀だった。
希と瑞との日々の特訓において、鼓が使ったことがあるのは、今右手に構えている長刀と、瑞の初撃を捌いた短剣のみだった。
かつて希の父・錦との手合わせで2本の刀で応戦した、それ以来の長刀による二刀流だった。
本当に、底が見えない──。
(でも2本使うなら、単純に考えれば込められる力は両手の時よりも減る。
──数に怯むな)
そう心の中で言い聞かせ、もう一度勢いをつけて仕掛ける。
対する鼓は、瑞の斬撃をいなしながら、希の飛び道具を器用にはたき落とす。
至近距離で力をぶつけているはずなのに、これといった手応えはなく、体力だけが削られていく。
一瞬、力を受けた2本の刀が沈み込み、上へ押し上げて瑞の刀を弾いた。
反動で鼓は跳躍し、背後から隙を突いて飛び込んできた希と瑞が向き合う格好となった。
途端に2人の身体は上からの圧力で押さえつけられ、瑞の背は再び熱を帯びる。
(この感覚───……っ!)
身体にかかっていた力が軽くなったが、2人とも地面に膝をつく。
「希……っ!!」
こめかみ辺りを抑えた希に声を掛けるも、返事はない。
「鼓、てめえ……!」
「終わりだ」
鼓が両刀を鞘に収めると、「刄風城塞」がどんどん解けていき、激しい風は元の穏やかで澄んだ空気に戻っていった。
「そろそろ開講時刻だろ。
……希は無理かもしれないけど」
「平気だってば……!
それよりなんでこんなことしたの……っ」
「じきに分かる。
俺はこのまま見回りへ行くからここで解散。
旋は連れて行かないから好きに使ってくれ。それと午後の訓練はお前らの希望次第でいい。
──気をつけろよ。じゃ、あとは頼んだ」
最後に交互に目線を配ると、疲れなど微塵もないかのように、早々と常若の外へ出ていった。
「……希、旋に運んでもらおう」
「歩けるよ。
でもちょっと、支えは欲しいかも」
「分かった。──旋!」
呼びかけに応じて空気が徐々に形を帯びて烏が現れたが、翼は邪魔と判断し、すぐに姿を消した。
直後、希の身体が勢いよく持ち上がり、一気に足の裏が地面を捉えた。
「塔に戻るか?」
「いや、学び舎行くよ。また休んだら成績に響きそうだし」
「……無理、すんなよ」
見えない支えに頼りながら、ふらついた足取りで、2つになった影が元来た道を戻っていく。
お読みいただきありがとうございました。
元々次のエピソードと合わせて1話だったのですが分割しました。
相変わらず小説内外で書きたいことだらけです。
次回はおそらく8月になってしまうと思いますが、引き続きよろしくお願いします。




