アイン
殺した。
沢山殺してしまった。
そんなことしないつもりだったのに。
膨れ上がった感情に任せて殺してしまった。
案外簡単に殺せた。
思いっきり殴ったらとんでって動かなくなった。
それからどんどん人が来た。
そして、怖くなった。
止まらなくなった。
武器を持った人も来て、余計に止まらなくなった。
殺さなくちゃ、殺される。
殺さなきゃ。殺さなきゃ。
殺す。殺す。殺す。
途中で殺した人の武器をとって。
また、殺しやすくなった。
あんまり、覚えていない。
途中からはただの作業のように殺していった。
あまり、何も感じなかった。
でも、殺した時の感触はまだ残っている。
骨が折れる鈍い感触も、肉が切れる感触も、生ぬるい赤い血の感触も。
泣き叫ぶ声も。僕から逃げる姿も。
気持ち悪い。
冷静に戻った時も特に何も感じなかった。
涙も出なかった。
ただ、気持ち悪かった。
そういえば、あの人、ロイスって言ったっけ。
あの人は何だったんだろう。
あんなに優しく笑う人は初めて見た。
声も、頭に置かれた手も優しかった。
つい、安心して寝てしまったけど。
「~ね。~~いそうに。」
??声が聞こえる。
「でも、ほんとに魔人なのかしら。耳も爪も普通だし。牙もないし。」
もっとはっきり聞こえた。女の人の声?
「眼が赤かったんだろう?」
今度は男の人だ。
目を開ける。
ここは?外??
緑色の草木。近くに川が流れている。
僕は大きな木の陰に寝かされていた。
右側に女の人がいる。さらさらな紫色の髪を肩より上の方で切っている。
「そう言ってたけど・・・。あっ、起きたのね。って、どこが赤よ!きれいな青い色じゃない!!」
女の人がこっちを向いた。眼も紫色だ。きれい。
女の人の向かい側に男の人もいる。がっつりした、筋肉質。・・・髪がない!?
なんで髪がないの??
髪がない人なんて初めて見た。
「大丈夫?痛いところはない?」
「・・・(こくん)」
うなずいた。男の人を見ながらうなずいた。
「そぅ、よかったわ。私はレリィ。あっちの人は見た目はあんなだけど怖くないからね。安心して。」
僕が凝視しているからのセリフだろう。
「ガトーだ。」
しゃべった・・・!!
「あなたは??」
レリィ・・・さん?が言った。
が、意味がよくわからない。
「・・・??」
「あなたの名前はなんて言うの??」
僕・・・
僕の名前??
・・・674号??
・・・やだ。
それは、僕の名前じゃない。
あの白衣の人は
674号。
成功品。1号?
あと・・・
「・・・アイン。」
「アイン??」
「・・・(こくん)」
「そう、アインね。よろしく。アイン」
名前。アイン。
あの白衣の人が付けた名。
あの怖くて嫌な人。
でも、この人に呼ばれるのは嫌じゃない。
アイン。
僕の名前。
僕は・・・アイン・・・。




