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キル・レコード・マジック ~忘却の英雄は失踪した戦友の真実を追う~  作者: rinoe


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少女の依頼 6

 男は反応しないシェルシュに痺れを切らしたのか。容赦無く彼女の腹に蹴りを入れる。


 「……ッ!」


 「おいおい、早く決めろよ。テメェは選択するしか道ないんだよ。これでも寛大な対応してるつもりなんだぜ?それとも何だ、ここで死にてぇか!」


 男は懐から拳銃を取り出すと、銃口をシェルシュの頭に向ける。引き金を引くだけで彼女の頭は吹っ飛んでしまうだろう。


 それに抵抗するようにシェルシュは身を守るように全身に魔力を纏わせる。


 「へぇ、魔術の基礎は身につけてるのか。勤勉だな。だが、こいつはただの銃じゃねぇ。魔力の膜で身を守った程度じゃあ、この弾丸には耐えられない。軍で秘密裏に開発された特別な代物だ。俺も聞いただけだから詳しくは知らんが、コイツの中には磁石と魔力回路が仕込まれている。そして、魔力を流し込むことで磁石の磁力を底上げし、弾丸を発射する。その威力は従来の火薬を用いた拳銃よりも威力が高い。弾丸自体も魔力伝導率の高い魔鉱石を加工して作られた弾だ。基礎程度しか身につけてないような魔術師が耐えられるわけがねぇ。耐えられるか自分の頭で試してみるか?」


 シェルシュの体内で心臓がバクバクと強く鳴っていく。嫌な汗が全身から噴き出ている。どうするべきか?こんな所で死ぬわけには行かない。とはいえ、この男の言う通りにはしたくない。


 まだ何か、道があるはずだ!


 考えろ!


 考えるんだ!


 しかし、男は容赦無く、引き金に指をかける。


 もう、ここまでか……、そう思った時だった。


 「アンタら、そこまでにしておけ」


 皆、声の方向へと視線を向ける。そこに立っていたのは見知らぬ男。シェルシュも、チンピラたちも、誰もその男の顔に見覚えはない。


 「テメェ、何処から入ってきた?見張りはどうした?」


 銃口をシェルシュから男の方へと向け直す。


 しかし、見知らぬ男は一切、同様することはない。


 「あぁ……そういえば今朝、喧嘩売る時は自己紹介するようにしろと言われたんだったな」


 そのようにポツリ、と小さな声で呟いた直後、彼はその場にいる者、全員に聞こえるように叫ぶ。


 「俺の名前はファイム・トルノー。この街で何でも屋をやってる者だ。これを聞いて俺に喧嘩を売るバカはまだいるかい?」


 その名前を聞いて、一気にざわつき始める。


 「ファイム・トルノーってあの英雄の?」


 「この街にいるって聞いていたが……」


 「こんな覇気のない奴だったとはな」


 「偽物じゃないのか?」


 疑惑や驚きの声があちこちから聞こえてくる。うーん、喧嘩売る時は自己紹介する事をおすすめされたんだが……あまり良い効果ではなかったようだ。もっと慄いて、ビビってくれれば、無駄な争いをせずに済んだのかもしれないのだが。


 「へぇ、アンタがあの『グレイ・ゴースト』か?」


 「魔術名(マギア・コード)で呼ぶの止めてくれるか?連合の奴らが勝手に作って俺に与えた名前で、俺自身は気に入ってないんだが」


 「そんな話はどうでも良い。俺にとって大事なのはテメェが本人かどうか、だ。どうせこのガキを助けるためのブラフだろ?そんな嘘でビビると思ってたら大間違いだ!」


 そう言うと、男は迷う事なく引き金を引き、トルノーに向けて弾丸を発射する。火薬を用いらないとためか、派手な音が鳴り響くことはなく、シュンッ!と空虚に風を切る音だけが聞こえてくる。


 そして、弾丸はトルノーへと着弾した。


 はずだった。


 それはまるで幻のようにすり抜けていき、弾丸は倉庫の壁を貫通して何処かへと消えていく。 一体、何が起こっているのだろうか?避けたのか?それとも魔術を用いたのか?


 そう考えているその直後、男の顎に強い衝撃が奔る。それはまるでボクサーにアッパーカットされたかのようだった。強い脳震盪を起こし、思考を鈍くさせる。


 「「「リーダー!」」」


 周囲のチンピラたちが心配の声をかける。はたから見ていた彼らもまた何が起こっているのか分かっていなかった。だが、リーダーがやられたことだけは確かである。


 警戒し、武器を構える。しかし、既にトルノーの姿は見えなくなっていた。一体、彼は何処へ消えたのか?きょろきょろと周囲を見渡し、警戒する。しかし、彼らもまた一人、また一人とやられていく。ばたり、と急に倒れたかと思えば、強く吹っ飛ばされ者、鼻や口から血を吹き出す者……。


 そして、とうとう最後の一人になる。


 「な、何だ!?ま、魔術か……?ここ、来いよ!俺がぶっ殺して──」


 と啖呵を切るものの、凄まじい力で吹っ飛ばされ、倉庫の壁に背中を強く叩きつけられる。そして、すぐに気絶してしまうのであった。

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