↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
キル・レコード・マジック ~忘却の英雄は失踪した戦友の真実を追う~  作者: rinoe


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
48/49

取引 2

 ノルコフ閣下はフェルフェットの言葉に対し、微笑みながら答える。


 「あぁ、もちろんだ。あの戦争で負けたとはいえ、国からしっかりと働いた分の金は毟り取ってやったからな。お前の働き分を払うぐらい、たいしたことはない。とはいえ──」


 閣下は机の引き出しを開け、そこから布巾着をいくつか取り出し、机の上に置く。ゴトッ!と重々しい音が鳴り響く事から、小さくもそれなりの重さがある物が入っていることが分かる。


 「お前の報酬を現金で払うとなると、いくつスーツケースがあっても足りん。だから代替品を用意した。宝石、魔力石、貴金属の類だ」


 フェルフェットは布袋に手を伸ばし、中を確認する。


 中には確かに、金や銀といったものが入っている。見た目はただの石ころのようなものも入っているが、少し不思議な雰囲気が漂っている。きっと、現代のさまざまな機器に仕込まれている魔力石なのだろう。案外、このような使い道のあるものの方が価値があったりするものだ。


 「なるほど、これほどの品なら問題なさそうだな」


 報酬は受け取った。であれば、これで依頼は完了だ。


 「そんじゃ、取引は終わりだ。良い仕事だったよ」


 フェルフェットは右手を出す。


 「あぁ、私も満足のいく結果だった」


 ノルコフ閣下もまた、手を出して固い握手を交わすのであった。


 「そんじゃ、また仕事があればいつでも」


 しばらくは依頼はなく、食い扶持に困ることはないだろう。フェルフェットは少しばかりの休暇を明日から楽しむか、と考えながら部屋を出ようとする。


 が、その時、ふと思ったことを述べる。


 「しかし、そんな物騒な神代の遺物(アーティファクト)を手に入れてどうするつもりだよ。噂によれば、その杖だけで天変地異を引き起こせるだけの力があるんだろ?神代が終わって力が弱まっている状態とはいえ、そんなもの──」


 「おい」


 その一言に強い重みを感じるフェルフェット。


 目だけを動かし、後ろにいる彼女へと意識を向ける。


 彼女の表情はしっかり見えない。だが、嫌な気配だけが彼にたんたんと注がれている。


 「余計な詮索はするなよ……依頼は終わったんだろう?」


 「あ……あぁ、そうだな。もしかして、と思ったことがあっただけだよ」


 「……お前が確認すべきことはない」


 「そうだよな、聞かないでおくよ。だから、ここは俺の独り言になるが──」


 フェルフェットは嫌な汗をかきながらも、脳内に浮かんだ言葉を口から吐き出す。


 「戦争をまた始めるつもりじゃねぇだろうな……?まぁ、するにしろ、しないにしろ、もしやるつもりだっていうんなら……俺もまた………」


 そこまで言って彼の舌は止まり、しばし考え込んだのちに出た言葉は「いや、なんでもない。忘れてくれ」というものであった。


 ばたり、とドアは閉まり、彼はどこかへと消えていく。


 「……やはり、アイツも──」


 そうだ、まだ戦争は終わっていない。


 私たちは負けていない。


 ただ……苦汁を飲むだけでは終わらない。


 ノルコフ閣下はそのように心に刻み、彼女もまた未来へ向かって進み始めるのであった。 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。