取引 2
ノルコフ閣下はフェルフェットの言葉に対し、微笑みながら答える。
「あぁ、もちろんだ。あの戦争で負けたとはいえ、国からしっかりと働いた分の金は毟り取ってやったからな。お前の働き分を払うぐらい、たいしたことはない。とはいえ──」
閣下は机の引き出しを開け、そこから布巾着をいくつか取り出し、机の上に置く。ゴトッ!と重々しい音が鳴り響く事から、小さくもそれなりの重さがある物が入っていることが分かる。
「お前の報酬を現金で払うとなると、いくつスーツケースがあっても足りん。だから代替品を用意した。宝石、魔力石、貴金属の類だ」
フェルフェットは布袋に手を伸ばし、中を確認する。
中には確かに、金や銀といったものが入っている。見た目はただの石ころのようなものも入っているが、少し不思議な雰囲気が漂っている。きっと、現代のさまざまな機器に仕込まれている魔力石なのだろう。案外、このような使い道のあるものの方が価値があったりするものだ。
「なるほど、これほどの品なら問題なさそうだな」
報酬は受け取った。であれば、これで依頼は完了だ。
「そんじゃ、取引は終わりだ。良い仕事だったよ」
フェルフェットは右手を出す。
「あぁ、私も満足のいく結果だった」
ノルコフ閣下もまた、手を出して固い握手を交わすのであった。
「そんじゃ、また仕事があればいつでも」
しばらくは依頼はなく、食い扶持に困ることはないだろう。フェルフェットは少しばかりの休暇を明日から楽しむか、と考えながら部屋を出ようとする。
が、その時、ふと思ったことを述べる。
「しかし、そんな物騒な神代の遺物を手に入れてどうするつもりだよ。噂によれば、その杖だけで天変地異を引き起こせるだけの力があるんだろ?神代が終わって力が弱まっている状態とはいえ、そんなもの──」
「おい」
その一言に強い重みを感じるフェルフェット。
目だけを動かし、後ろにいる彼女へと意識を向ける。
彼女の表情はしっかり見えない。だが、嫌な気配だけが彼にたんたんと注がれている。
「余計な詮索はするなよ……依頼は終わったんだろう?」
「あ……あぁ、そうだな。もしかして、と思ったことがあっただけだよ」
「……お前が確認すべきことはない」
「そうだよな、聞かないでおくよ。だから、ここは俺の独り言になるが──」
フェルフェットは嫌な汗をかきながらも、脳内に浮かんだ言葉を口から吐き出す。
「戦争をまた始めるつもりじゃねぇだろうな……?まぁ、するにしろ、しないにしろ、もしやるつもりだっていうんなら……俺もまた………」
そこまで言って彼の舌は止まり、しばし考え込んだのちに出た言葉は「いや、なんでもない。忘れてくれ」というものであった。
ばたり、とドアは閉まり、彼はどこかへと消えていく。
「……やはり、アイツも──」
そうだ、まだ戦争は終わっていない。
私たちは負けていない。
ただ……苦汁を飲むだけでは終わらない。
ノルコフ閣下はそのように心に刻み、彼女もまた未来へ向かって進み始めるのであった。




