平和の終わり
一週間後……。
無事に退院したトルノーとシェルシュは何でも屋の事務所で変わらず魔術の勉強を行なっていた。
あんなに面倒で、覚えることが多い魔術の本をシェルシュはひたすらと読み込み、問題式を解いて魔術の方式を学んでいる。
トルノーもまた、空いた時間にシェルシュに魔術を教えながら、魔力を肉体から放出させ、練り込み、肉体に纏っている。シェルシュからすれば何の練習かは知らないが、きっとトルノーも強くなるための修行を行なっているのだろう。
フェルフェットを止められなかった……それは仕方のないことなのかもしれない。出来る限りの全力を尽くした。しかし、二人の中では確実に意識、考えのようなものが変わりつつあった。
もっと強くならければ、もっと知らなければ──
「………」
その二人の様子を見ているのはエニーであった。
人は変わっていく物だ。前へ進み、時には過去を振り返り、昔に戻ってしまったり……しかし、必ず一定の意思を持った生き物ではないのだけは確かだ。
二人が変わっていくことに、エニーは喜びもあり、不安があった。
トルノーとのこの生活も、不便だったが不幸ではなかった。
そこには確かな幸せと……喜びがあった。
しかし、彼は再び強くなろうとしている。それは彼が戦場を求めているからなのか。それとも──
(私がどうこう言う権利はないわね。ただ、今は見守ることしか……)
そうしてエニーはデスク上に残っている書類へと意識を戻し、事務作業を続ける
(固有具現化…イメージを………魔力を練り込み──)
トルノーは両手に魔力を集め、頭の中で想像を膨らませる。
そうだ、このイメージで──
そこでパチンッ!と何かが弾け、集中が切れてしまう。練っていた魔力も収まり、散っていってしまう。
(やはり難しいな、俺はまだ次のステージに立つには程遠いってわけか……)
兵士としては一流だが、魔術師としてまだまだ未熟というわけか。
まだ、何かが足りない。
その足りない何かが分かれば……そう考えているところにガチャガチャ!と事務所のドアノブを勢いよく開け、慌ただしく入ってきたのは、見たことのある顔であった。
「トルノーの旦那!」
それはスルサート家の人間であり、エヌフィーの部下であるウォルツであった。彼は「はぁ、はぁ」と息切れを起こし、額から流れる汗を腕で拭う。
その様子から、ただ事じゃないようだ。
「どうした!?一体、何があった?いいや、まずは落ち着かせるべきか。お茶でも──」
「いいや、大丈夫だ!旦那。とりあえず聞いてくれ。シェルシュの嬢ちゃんもだ!」
事務所にいた三人は一気にウォルツの言葉に耳を傾ける。
「いいか、よく聞いてくれ。リーダーが……エヌフィーがやられた!」
「は……?」
トルノーは最初、理解出来なかった。
あのエヌフィーが……やられた?
しかし、動揺しているトルノーを置いて、彼は話と続ける。
「スルサート本家にバレちまったんだよ!なぜかはわからないけど……情報を漏らしたやつがいるんだ!んで、それで……本家はアンタらを狙っている!街にはスルサート家の兵隊ばっかりで……やべぇ奴も雇っちまって………あぁ、それから」
「とりあえず、ここはまずいから逃げろ、ってことでしょ!」
エニーはすぐさま状況を飲み込み、端的に言う。
「あ、あぁ、そうだ!ここはまずい!話は後でも出来る!」
「ほら、トルノーとシェルシュも動いて!」
その言葉と共に、ようやく頭が回ってきたのか。二人も慌てて動き出す。
「そうだな、まずは一旦──」
その時だった。
トルノーは強い魔力を感知する。
この感覚は……まさか………!
「くそっ、伏せろ!」
そう言いながら、トルノーは真っ先にシェルシュへ向かって走り、彼女を守るように覆い被さる。その直後、強い熱気と真っ赤な炎が事務所へ広がり、建物ごと四人を吹き飛ばしていく。
平和は突如として終焉を迎える。
しかし、彼らの物語は終わらない。
これは平和の終わりでもあり、物語の始まりでもある。
ここから先、戦いはさらに加速していく。
※ここから先は作者のあとがきのようなものです。ぜひ、読んでいってね!
ということで、初めまして。リノエと言うものです。
ここまで読んでくれた方、どうもありがとうございます!一旦、物語はここで終了させていただきます!一応、プロットやエンディングの構想はある程度、進んでいるんですけど、まだまだ書きたい話もたくさんあるうえ、今主力で書いている作品が完結していないので、それが終わってから続きを書こうと思っています。
よければ今、主力で書いている作品『職なし冒険者は諦めない』もぜひ読んでってください!ちなみにこのお話『キルレコードマジック』はこの『職なし冒険者は諦めない』の千年後という設定が実はあったりもします。もし読んでた人がいたら「ん?」となっていたかもしれませんね。
ということで、よければ感想、質問も気軽にください!
それではまたどこかで……




