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キル・レコード・マジック ~忘却の英雄は失踪した戦友の真実を追う~  作者: rinoe


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トランスポーター 21

 トルノーは眠りかけていた脳を起こし、上半身だけ体を起こす。そこでようやく自分の胴体には包帯がぐるぐる巻かれているのに気づく。また、また心臓部分がかなり痛み、苦しい。


 「無茶するなよ、寝ている状態で良いからな。というか、まだそんな状態なら、まだ果物も食えないかもな。しばらくは点滴生活確定だな」


 そういうアイノ警部の言葉を無視して、トルノーは紙袋にあったリンゴを掴み取り、頬張る。


 「はっ、点滴で腹は満たせねぇよ」


 そう言って、むしゃむしゃと美味しそうに食べ始める。


 「ったく、相変わらず無茶するやつだ。今回も治癒魔術をてきとうにかけていただろ?まぁ、そのおかげで出血は治り、死なずに済んだらしいが、そのぶん、縫合し直すのに苦労したそうだぜ?」


 「そうなのか?」


 確かに最後、治癒魔術で傷口を塞ごうと思っていたが……確か間に合わなかった気がする。いいや、無意識に発動出来ていたのか?死に際っていうのは本能が働き、無意識かでも延命出来るよう行動する、っていうのは聞いたことがあるが──


 「まぁ、そんな話はどうでも良い。その後を聞かせてくれ。俺が倒れたあと、どうなった?」


 トルノーのその質問にアイノ警部は苦々しい表情をし始める。


 「お前も想像はついているだろう?神代の遺物(アーティファクト)は盗まれちまった。フェルフェットの消息も不明。こちらはただ被害を出し、世間からの信頼が下がった。くそっ、情けねえこと、この上ない。悔しいったらありゃしねぇ」


 やはり、かなり面倒なことになっているようだ。


 それに今回は自分もフェルフェットを止められなかった。実力を信頼してくれていたから、回ってきた依頼だというのに、期待に応えることができなかった。


 「……すまない」


 「なに、お前が謝る必要はない。そもそも、お前でも止められなかったんだ。誰であっても止められなかっただろうよ。それほど、フェルフェットが強かった。それだけだ」


 アイノ警部は笑いながら、そう答えてくれる。しかし、真正面から戦っての敗北。ここまで文句なしの完敗は本当に久しぶりだ。


 (俺もまだまだって所、か)


 それにフェルフェットは固有具現化まで使えるようだ。自分ですら、まだその領域には到達していない。最近はシェルシュに魔術を教えるばっかりだったが、まだまだ自分も成長出来るということなのかもしれない。これからは自分も魔術の勉強をしなおしてみるか。


 そういえば、シェルシュは──


 「そうだ!シェルシュは!?彼女は無事なのか!?」


 一応、彼女はあの現場にいた人間の一人だ。最後、休憩すると言って眠りに行ったため、戦闘に巻き込まれていないと思うのだが、もしかしたら──


 「あぁ、彼女は大丈夫だ。無傷、ってわけじゃないが、骨に数本、ヒビが入っている程度。一ヶ月もあれば完治するらしい。安心しろ、お前のほうが重体だ」


 「それは安心を与える言葉か?」


 「出来ないか?」


 「いいや、充分だな」


 「んじゃあ、良いじゃねぇか」


 そう言って、二人は軽く笑い合う。


 悔しくも、情けなくも、依頼は失敗に終わった。だが、まだこれで終わりじゃない。そう思い、トルノーはリンゴを綺麗に完食するのであった。

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