トランスポーター 18
トルノーも自分の放った魔力球の爆発に巻き込まれていてもおかしくはなかったのだが、フェルフェットの能力で上空へと吹き飛ばされていたおかげで巻き込まれずに済んだのであった。
そして、諸に攻撃を喰らったフェルフェットはトルノーへと意識を向けられなくなったのか。上空へ押し上げる力が弱まっていき、とうとうトルノーは落下をし始める。が、何も慌てる必要はない。この程度の高さであれば、脚に魔力を纏わせておくだけで衝撃には耐えられるだろう。
そうしてトルノーは爆発によって炎煙が燻る地上へと降り立っていく。
(無傷ではないだろうが……さすがにこの攻撃で倒れたとは思えないな)
トルノーは強く警戒を始める。そりゃあ倒れてくれていた方がかなり楽で助かるのだが……。
そして数秒、数十秒と時間が経ち、煙がおさまっていく。そんな中、トルノーの前へと出てきたのは、満身創痍のフェルフェットであった。
「はぁ……はぁ……!」
大きく肩を揺らしながら呼吸し、こちらを見ている。肌は一部、黒くこげており、血と汗が交わったものが地面へとポタリ、ポタリと垂れていく。
「あれほどの、魔力球……凄まじい、魔力量がひ、ひひ…必要のはず、だ」
痛みか、苦しみか。声を震わせながら出てきた彼の言葉は質問であった。
「どうやって………?いいや、それがトルノー、お、お前の?」
「言う必要はないし、言うつもりもない。それよりも、お前の能力だ」
トルノーはフェルフェットをまっすぐ見ながら、たんたんと述べ始める。
「最初から空間系の能力だってのは知っていた。だが、具体的なところまで知ることはできなかった。空間の固有技能も、いろいろあるからな」
今回、フェルフェットが使っていたようなテレポート系、周囲の物質を把握する探知系。とても珍しいものには空間を圧縮し、時間を止めるというものもあったという。
「だが、お前の能力は出来る事が多すぎる。まぁ、俺たちのように一線を画す戦士はより複雑であったり、概念系にまで及ぶ力もあるからな。どんな能力であっても不思議じゃなかったが──」
そう、俺は空間『系』だとずっと思っていた。
だが、そうじゃなかったんだ。
「『空間そのもの』を操る力だとはな」
「……」
トルノーのその言葉に彼は一切、反応しない。それはトルノーのように、言うつもりはないということなのか。しかし、その無言はただ、トルノーの言葉を肯定しているようでもあった。
「お前のあの切断攻撃は物質を切断してるんじゃなくて、空間そのものを斬っていたんだな。テレポートも物質を移動させているんじゃなく、周囲の空間ごと自分を入れ替えていた。俺を上に吹き飛ばしたのも、何百メートルも吹っ飛ばしたのも、全て空間そのものを操っていたんだ」
きっとあの爆発に耐え切ったのも、空間ごと熱と炎を遮断させたからだ。しかし、少し反応が遅れてしまったらしい。それがこの勝負の決定打になってしまったというわけだ。




