トランスポーター 17
ずっと上空という安全圏内から攻撃してきたフェルフェットはテレポートを開始する。向かう場所はトルノーの死角となっている背後。
「ちぃッ!」
トルノーもすぐさ後ろへと振り返る。彼はまだフェルフェットを視覚や聴覚と言った五感で認識はしていなかった。が、テレポートするならば背後という予測はついていた。だから、上空から消えたその瞬間に迷う事なく自分の後方を確認したのだ。
しかし、もう遅かった。
ぽん、とお腹に触られた感覚。それはフェルフェットの右手であった。
(まずい……!)
そのタイミングでトルノーの体全身に強い衝撃が奔り、後方へ吹っ飛ばされる。それは何十、何百メートルと。この天井も、壁もない広い空間をただひたすらと吹き飛ばされていく。このままではフェルフェットとの距離が二、三キロも離れてしまいそうだ。
「ってェなッ!」
トルノーは魔術を用いて、空気中の酸素や窒素、二酸化炭素と言った物質を固め、透明な壁を作ると足でその壁を蹴り飛ばし、地面に着地する。
しかし、着地地点を読んでいたのか。地に足をつけ、態勢を立て直そうとしている時には、既にフェルフェットはトルノーの横にいた。
そして今度はバスバスバスッ!とトルノーを切り刻もうと切断攻撃を行う。のだが、やはりその攻撃はトルノーから逸れていき、当たることはない。
「ちぃッ、なんなんだ、テメェの能力は!」
そう叫びながら、フェルフェットはトルノーに指一本、触れることなく彼を上空へと吹き飛ばす。強い圧力、重力を感じながら、どんどん上へ上へと進んでいく。しかし、トルノーの脳内では余裕が出てきていた。というのも──
(なるほどな、次第に奴の能力が分かってきたぞ)
ここまで手のひらを明かしてくれたのだ。トルノーの中でフェルフェットの能力が何なのか、どんどん分かってくる。それと同時に、彼の能力がとてつもなく恐ろしいものであるということも理解してしまう。
(こりゃあ、誰も奴に勝てないはずだな。だが、俺の能力だったら──)
「勝ち目は残っているぜ!」
トルノーは上へと飛ばされながらも魔力を放出。空中で再度、かき集め魔力球を生成する。そして、それをフェルフェットに向けて勢いよく飛ばす。
魔力球は現代の戦いにおいて、使われなくなってきている技術だ。
現代の銃火器の方が単純な火力が高く、弾丸などに魔力を上乗せすれば大抵の魔力の壁を突破してくれる。それに対し、衝撃力や爆発力は魔力球の方は上だが、相手を確実に仕留める殺傷能力は低い。そのうえ、馬鹿みたいに魔力を食うので使われるのは滅多にない。
「確かに状況は俺の劣勢かもしれないが……テメェ、この程度の魔力球で俺を倒そうというのは、舐めすぎだろうがよォ!」
怒りのままフェルフェットは能力を用いて、魔力球をが自分の元へと到達する前に捩じ切り、破裂させよようとする。しかし──
「なッ……!」
捻じ切った瞬間だった。本来であれば大したことのない魔力量が込められた魔力球だったというのに、それはフェルフェットの予想以上の破裂を見せ、周囲を莫大な熱気に包んでいく。




