トランスポーター 16
頭の中で整理し、次の一手を考えたフェルフェットはとうとう、トルノーとの間合いを詰め始める。シュンッ!と一気にトルノーの後方へ、テレポートで移動し、蹴りを入れる。のだが──
「ッ!」
確かにトルノーに蹴りを入れた。はずなのに、感触がない。まるで幻のようだ。
(やっぱり偽物か……!)
この機会を狙ってすぐにカウンターが来る、そう判断したフェルフェットは迷わずテレポートを行い、上空へと移動する。
(ちぃッ、やっぱり光の屈折率を操っているのか!?くそっ……あまり殺しはしたくないんだが、手加減出来る相手じゃないな!)
そう判断したフェルフェットは固有技能を使い、攻撃を始める。
「何か仕掛けてくるな!」
何か嫌な気配を察知したトルノーはすぐさま中級レベルの防御魔術を無詠唱、無魔法陣で展開し、自分の身を守ろうとする。その時だった。
ザンッ!と衝撃が奔る。一体、何が起きたのかと周囲を見渡すと……。
「な、なんだ、これは……!?」
地面が大きく割れていた。まるで地震で大きく断層がずれたように、くっきりと。しかも一箇所だけではない。あちこちが大きく斬られている。
(今回、たまたま外れただけだが、これほどの威力……バリアだけじゃ防げなかったな…!)
もしも、少しだけでもずれていたら自分はもう真っ二つだった。そう考えると、凄まじい冷や汗が身体中にジトッと流れ出す。
フェルフェットの纏う気迫がさらに強くなる。この攻撃をさらに連続で行うつもりらしい。魔術であればこれほどの技を連続発動というのは難しかっただろう。しかし、この攻撃はきっと魔術ではなく、固有技能によるもののはず。
固有技能と魔術は似て非なる力。
魔術は魔力によって運用される技術であり、また脳の演算能力を用いて発動させる。それに対し、固有技能は個人の持つ力。現代の魔術学でも解明出来ないほど謎の力で、魔力ではないナニカを消費して発動させているという。
(英雄と呼ばれるレベルの固有技能だ……これぐらいの威力を余裕で放ててもおかしくはない!だが、俺の固有技能も甘く見られちゃ困るな!)
切断攻撃が降り注ぐと同時にトルノーもまた固有技能を発動させる。すると、切断攻撃が歪み始め、トルノーを避けるように逸れていく。
(おいおい、これもトルノーの固有技能か?俺の攻撃が歪んでやがる……。やはり光の屈折を利用し、攻撃目標をずらされているのか?いや、それだけでは判断がつかない)
攻撃すればするほど、トルノーの固有技能が理解できなくなってくる。一体、奴の能力はどういう仕組みなのだ?そもそも、前提を間違えているのか?奴の力は光ではない?
(ここまでやっても分からないなら、本気以上でいくしかないか!!)
そうなると、こちらの能力が完全にバレる可能性があるが……仕方がない。フェルフェットは意識を切り替える。あの時の……ただひたすら機械のように人を殺し続けてきたあの頃の意識へと。




