トランスポーター 14
今度こそ、意識を失ったのか。ばたり、と床に倒れたままシェルシュが起き上がる事はなかった。
「うわぁ……マジで女の子殴るの罪悪感しかねぇなぁ」
そのように呟きながら、フェルフェットは『神代の遺物第三保管庫』とネームプレートが置かれた部屋のドアを開ける。
どうやらこのドアにも結界が貼られているようだが、彼には関係ない。そのままドアノブを捻り、そして気づけば知らない、真っ白な空間に彼は立っていた。
「おぉ……話には聞いていたが……本当にだだっ広い空間だな…………」
天井も、壁もない。何処まで広がり続ける異空間。
しかし、あちこちで異様な力の気配が漂っている。きっと、ここに保管されている神代の遺物から放たれているものだろう。
「さて、目的のものを探してさっさと──」
その時だった。
彼はまたもや咄嗟に敵意を察知し、両手、両腕で自身の体を守るように構える。しかし、「っらぁ!!」という声と共に襲ってきた衝撃は予想以上に強いモノで、彼は数十メートル後方へと吹っ飛ばされる。しかし、フェルフェットも戦闘においては一人前。すぐさま態勢を立て直す。
「痛っ!」
その時、右腕に痛みが走る。攻撃を腕で受け止めはしたのだが……この感覚は骨にヒビが入ったようだ。
「油断体的してたな、ったく。お前程度の相手ならもっと上手くやれただろうに」
そう言いながら現れたのは一人の男。そして、フェルフェットが最も警戒しなければいけなかった相手。
「ファイム・トルノーか……!」
「初めまして、フェルフェット……!」
二人は睨み合いながら、これまで以上の警戒態勢に入る。指先から全体、身体の動き。それだけじゃない。呼吸や瞼のまたたき、仕草全てを確認している。お互い、ただの兵士ではない。あの戦争で名を挙げた、まさに伝説の存在だ。
ただ、なんともない動作が致命的な結果に繋がるかもしれない。
「「ッ!!」」
それは同時だった。
二人はまさに同時に一歩、足を踏み出し、距離を詰める。そして魔力を纏った拳、脚による高度な攻防、凄まじい近接戦闘が始まる。互いの両手、両足がぶつかり、躱されていく。その圧倒的な動きはまさに映画のワンシーン。
数秒、数十秒と戦闘は続く。しかし、互いの攻撃が一切、当たらない。攻撃は必ず防がれるか、躱される。しかし攻めすぎれば、その隙に相手が攻撃を当てて来る。
これまた、同時であった。
二人は拳を引き、今度は距離を取り始める。
「ふぅ……戦闘能力はほぼ互角ってところかな?」
フェルフェットは頬を伝って流れ出す汗を腕で拭う。
「いいや、俺の方が少しばかり上かな」
トルノーは余裕の笑みを見せつける。
「ははっ、強がるなよ。それに近接戦闘だけが戦いの勝敗を決めるわけじゃない。アンタもさっきのは小手調べ、だろう?」
「そうだな、本腰を入れるのはここからだ!」




