トランスポーター 8
二日後、深夜一時。そこは魔術学連合支部の十三号棟。
シェルシュはあくびをしながら、眠くなってきた目を擦る。
「大丈夫か?ほれ、貰ってきたぞ」
そう言ってトルノーが持ってきたのは紙コップに入ったコーヒーであった。シェルシュはありがたく受け取り、経口摂取から頭の中にカフェインを注入していく。
トルノーもコーヒーをずずっ、と飲んでいるが彼はあまり眠くなさそうだ。
「さすがですね……私はもう…」
ふわぁ〜、とまたあくびを繰り返す。
「一時間ほど仮眠取ってくるか?」
「良いんですか……」
「今日、フェルフェットが来るとは限らんからな」
警察に流れてきた情報は神代の遺物が狙われているというモノだ。いつ、どこで、どのように……そこまでは分からなかったようだ。
そもそも、この情報も信用できるのか?という話でもある。
警察はこの情報を何処で手に入れたのか?ちゃんと信用出来る相手から受け取ったのか?
今回はアイノ警部個人との契約だから、この件がどう転がろうが金は受け取れる予定だ。そのため、トルノーたちは情報源に関してそんな深く気にしていないのだが……。
「そ、それじゃあ…少し休憩を……」
シェルシュはふらふらとなりながら、休憩室へと歩いていく。
(まぁ、来なかったら何もせずに金がもらえる。何か起きたら、準備しておいて良かっただけの話か…)
そのように考えながらトルノーは外へ出て、タバコを吸い始める。
トルノーの脳は疲れていないわけではない。だが、緊張が抜けず、眠る気になれなかった。
夜、寝なくても大丈夫になったのはあの西方戦争からだ。
あの時は四六時中、夜も昼も死ぬかもしれないい状況だった。常に緊張状態。安心して寝れる時なんてなかった。だからトルノーも含め、あの戦争を経験した兵士の多くは今も寝る時は睡眠薬を用いている。でないと、寝れない。寝れたとしても、眠りが浅いからだ。
ふぅー、と煙を吐きながら周囲を見る。
敷地内にはいくつもの警備員が巡回している。中には警察署から派遣された部隊なども配置されている。かなり厳重に感じるが、相手はあのフェルフェットだ。逆に少ないぐらいなのかもしれない。
(まっ、そもそも来ないとこの警備も全く意味は──)
とその時だった。
『緊急!緊急!』
突如、支部内に設置されたスピーカーから警告音と音声が流れる。
『西門前!目標の確認!警戒せよ!繰り返す、西門前……!」
音声は繰り返し、警告を放つ。周囲の警備員、部隊は各々の役割を果たすため、行動を開始する。さて、トルノーは自由に動くよう、言われているのだが──
「まじか……本当に来るとはな。さて俺はどう動くか……」
西門からとは、強気だな。確かに、フェルフェットほどの実力であれば、正面突破ぐらい余裕なのかもしれない。だが、結界もあるし、警察から派遣された部隊も決して弱くはない。
「まっ、待ち構える場所としてあそこが適切かな」
そう言って、トルノーは何処かへと向かっていくのであった。




