トランスポーター 9
西門では、警備員、派遣部隊が銃を構えていた。
銃口の先にあったのは、スーツを着た一人の青年。耳が尖っており、彼がエルフであるという事が一目見て分かる。そうだ、あれが魔術名『ヤァヌゥス』、フェルフェットである。
「壮大な歓迎だね、今からパーティでも始めようってのかい?」
彼は両手を広げ、おどけるように進んでいく。
「舐めやがって……射撃開始!」
ダダダダッ!と火薬が爆発する光と共に銃口から一気に、弾丸が発射されていく。弾丸一つ一つに緻密な魔力が込められており、どんなに厚い魔力の膜を纏っていたとしても、きっと貫き、蜂の巣にしてしまうことだろう。だが──
「残念だったね」
フェルフェットは無傷であった。一切、穴も傷もない。
「これが、コイツの固有技能か!?」
「一体、どういう……?」
周囲の兵士は困惑し、手が止まる。
それに対し、フェルフェットは変わらず余裕の笑みで進んでいく。
「か、構え!どんな能力だろうと、処理限界があるはずだ!撃ち続けろ!!」
そう言われ、再び銃口を向ける彼らだったが──
「遅いよ、全部ね」
いつの間にかフェルフェットは門を超え、兵士の網を潜り、その先へ。魔術学連合の敷地内へと侵入していた。これも彼の固有技能なのだろうか。
「くそォ!」
一人の兵士が迷うことなく、再び彼に銃口を向ける。そして、トリガーを指にかけ、発射しようとしていたその時だった。
ガキンッ!とそれは鉄の切れる音であった。それと同時に兵士の持つライフルが真っ二つに切断され、ネジやバネと言った部品がバラバラとなって周囲に散っていく。それは全て一斉に。誰のモノであろうと関係なく、兵士全員のライフルが使えなくなるのであった。
「物騒だから、壊しておいたぜ」
そう言うと、フェルフェットは次の瞬間には兵士たちの目の前から消えているのであった。ただ圧倒され、何が起こっているのか理解できず、皆が困惑する。だが、まだ終わったわけじゃない。
『部隊に通達する!対象が侵入!繰り返す、対象が侵入!』
皆、通信魔術を用いて情報を共有し、今度こそフェルフェットを打倒せんと動き出す。
『能力は不明!だがあの動きからして奴の能力はおそらく物体移動!動きからして一度に可能な移動範囲は約八百メートルと仮定!奴はまだ十三号棟にはたどり着けていないはずだ!』
しばらくして、その情報を聞き、何処にいるのかを予測していたスナイパーがフェルフェットの位置を補足する事に成功する。
『こちらの二班!発見しました!奴は五号棟の屋上!こちらにはまだ気づかれておりません!』
『了解!そのまま追跡しろ!一班は十三号棟前で待機!二班はそのまま追跡を続けろ!残りは奴の移動範囲内から次、何処へ現れるか予測し、そこで奴を叩く!』
『『『了解!』』』
彼らが必死に動いている中、フェルフェットは五号棟の上から兵士の動きを観察していた。




