トランスポーター 7
エルフの青年は支部の外へと出る。
そしてしばらく歩き、人が少ない場所へと移動した彼はポケットから何かを取り出す。
それは魔法陣が掘り込まれた木の札であった。描かれた魔法陣の式、図形から見るに音声を魔力を通して電波に変える……簡単にいうなら通信魔術のものであった。
「聞こえるか?俺だ」
彼は木の札を耳に当て、話始める。
「下見は終わった。依頼の決行日は二日後。そっちに依頼物を届けるのはそれから四日後になりそうだ」
『了解した、他に問題はないか?』
「問題といえば、だ」
青年は先ほどのシェルシュの会話を思い出しながら、通信先の相手へ伝える。
「支部の方にトルノーが来ていたらしい。こんなタイミングで、だ。怪しくないか?」
『……情報が漏れている、と?』
「可能性は高い。だから、この連絡が最後だ。もしかしたら傍受されている可能性がある」
『その可能性は低いだろう。この通信は何十にも暗号、封印魔術で他者には聞けないようにしている。どこかの天才法陣解析者がいない限りは、な』
法陣解析者はハッカーはサークルを合わせた言葉で、その名の通り、魔法陣を解析し、相手の魔術に介入する技術者の事を言う。西方戦争では魔力兵器を遠隔支配し、暴発させたり、通信解析を行い、敵軍の先回りをするなど、多くの場面で活躍していた存在だ。
しかし、今回ばかりはその可能性が低い。
「んじゃあ、裏切りものか。お前のところにスパイがいるかだな」
フェルフェットに仲間はいない。ただ、今回はとある組織から依頼を受けただけ。であれば、この通信先の組織に情報を売った奴がいるのかもしれない。
『それじゃあ、次会う時は荷物の受け取りか。刑務所で差し入れする時かの二択だな』
「はははっ!笑えない冗談だな」
二人は軽く笑い合う。話の内容はかなり物騒だというに、余裕の表情だ。それほどまでに、このエルフの青年は肝が据わっているのか、それとも──
『まぁ、良い。俺たちはお前を信じている。では任せたぞ、フェルフェット』
そうして、通信は相手の方から先に切られるのであった。
「さて、お前は俺をどう楽しませてくれるんだ、ファイム・トルノー」
フェルフェットと呼ばれた青年は不敵の笑みで呟くのであった。




