トランスポーター 2
そうして警部を案内したのは奥の部屋。
窓はブラインドでしっかり隠してあり、またドアもしっかり鍵をかけて誰も入れないようにされている。それだけではない。魔術で結界が施されており、第三者が簡単に話を聞けないように徹底的に対策されている。シェルシュも、事務所の広間で勉強しているように、と言われて待機させられている。
まぁ、今回はシェルシュの関係のない、全く別件の依頼であるため、彼女が関わる必要はないのだが、あそこまで厳重に警戒されていると逆に気になるものだ。
しかし、シェルシュに出来る事は何もない。
ソワソワしながら、三人が出てくるのは待つしかなかったのであった。
「んで?今回の事件内容は一体なんだ、アイノ警部」
「とある神代の遺物の保護だ」
そう言って、警部が封筒から取り出したのは複数の書類。エニーとトルノーはその書類をペラペラと読みながら、アイノ警部の話を聞き始める。
「一ヶ月前、とある情報がうちに来た。それはこの街、セイムにある魔術学連合支部で保管されている神代の遺物が狙われている、という話だ。何処の、誰が狙っているかはまだ不明だ。だが分かっているのは一つ、この件には魔術名『ヤァヌゥス』のフェルフェット」
「へぇ、アイツか……」
トルノーも聞いたことのある名前だった。
それはかつての西方戦争、敵国だったエルフの国、セレシアで名を轟かせていた伝説の兵士。彼は固有技能を持っており、その力であちこちでダルシェントの兵士を苦しませていたという。トルノー自身は遭遇した事はなかったが、同じ魔術名持ちとして警戒していた、戦いたくなかった相手であった。
また、『ヤァヌゥス』は彼らセレシアに根付く土着の神で、意味は境界を跨ぐ者、というものらしい。神様の名前が魔術名になるとは、きっと自分よりは遥かに優れた魔術師なのだろう。どれほどの実力者なのだろうか。
「フェルフェットは現在、退役しており、現在は運び屋兼盗み屋としてあちこちで活躍しているという。金さえ払えば何でも運び出し、届けるって言われている。何でも屋としているお前と似たような感じだな」
「いやいや、俺の何でも屋は健全だ。犯罪には手を出さねぇよ!!」
「……本当か?」
そう言われ、トルノーは少し固まる。
「……おん、出すわけ……出すわけ……ない、よな?」
「なんで私を見るんですか」
エニーはトルノーを睨みながら言う。
「まぁ、良いわ。犯罪しようとしまいと、お前らが悪人だとは思ってない。だからこうして警察としてではなく、個人的ではあるが、案件を持ってきてやってんだからな」
「信頼してくれてありがとう、こっちもそのお情けで今日も飯食っていけるわ」
「おう、それじゃあ、俺もまだ仕事が残ってるし、今日はこれで失礼するわ。どうせ俺の依頼、受けてくれるだろう?その書類に詳細は載っているから、読んどいてくれ、じゃあな」
そう言って、部屋を出ていくアイノ警部であった。
「……はぁ、面倒な案件を持ち込まれたもんだな」
書類を眺めながらも、呟くトルノーであった。




