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キル・レコード・マジック ~忘却の英雄は失踪した戦友の真実を追う~  作者: rinoe


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流通 14

 エヌフィーもまた、ストールトンという大物の登場に驚きながらも、かつての戦友の再開を喜んでいた。


 「本当に久しぶりだな。また会えて嬉しいよ。アンタとはドットリーナ市街戦以来か?」


 ドットリーナ市街戦は西方戦争の中でも最も激しく、大きな被害を出した戦いとして知られている。市民にも多大な被害が出て、戦後復興にもかなり時間がかかったという。


 しかし、エヌフィーの部隊やストールトンが敵軍を突破し、ドットリーナを抑えた事で戦況はダルシェントが優勢になった。そしてトルノーによってダルシェントはこの戦争に勝利した。


 「あぁ、あの戦いは最悪だった。互いに生き残るため、色んな事をやったよな。本当、あの状況からよく頑張ったよ、俺たちは」


 二人の表情は昔を懐かしむと同時に、その眼は疲れ切った色をしていた。


 きっと、見たくないものをたくさん見てしまったのだろう。トルノーはドットリーナ市街戦に参加していなかった。が、何があったのか、二人が何をしてきたのか、そんな事、簡単に予想出来る。


 「さて、思い出話に花を咲かせるのも良いが、そろそろ本題に移ろうぜ」


 トルノーのその言葉に、二人は意識を切り替える。


 「そうだな、ここに来るまでにシェルシュから何があったのか、話は聞いている。エヌフィー、お前からはいくつか聞いておかないといかない事がある」


 「……騎士団とスルサート家の関わり、か?」


 「あぁ、そうだ。騎士団内部で不穏な動きがあった事は知っていたが……まさか裏社会と接触していたとは、騎士団をまとめる身としては、頭が痛くなる話だよ」


 きっとストールトンの中では貴族同士や有力な商人、権力者との癒着を考えていたのだろう。今の政治や軍上層部が腐敗しているのはストールトンも知っている所だ。


 「多分、軍や騎士団の武具、支給品の横流しだけじゃないんだろう?お前が知っている限りの、騎士団とスルサート家の関わりを教えてくれ」


 エヌフィーは少し考える。


 自分のキャリアを考えるのであれば、ここは黙秘を貫くのが良いだろう。どんな目にあっても、どんな事されてもスルサート家が不利になる事を話さなかった。これは信頼、信用を作る事にも繋がる。


 とはいえ、だ。


 そもそも、ここでトルノーに負けてしまった時点で、エヌフィーの降格は決まっているようなモノだ。それに、エヌフィーはスルサート家よりも信じていた。


 戦友であるストールトンの事を。


 「……分かったよ、俺が知っている事は全部、話す」


 「ありがとう。それじゃ、悪いがトルノーとシェルシュは一旦、外に出ていてくれ。騎士団にも、スルサート家でも、一般的に知られたくない話が出るだろうからな」


 一応、トルノーとシェルシュは今回の当事者なのだが……これ以上、知らなくても良い裏に首突っ込んで、世界の果てまで追いかけ回される羽目になるのだけは勘弁だ。


 「分かったよ、二人だけの密会、充分に楽しめよ」


 そう言って、二人は倉庫から出て、外で待機することにする。


 ガチャリ、と外へ出るためのドアのノブに手をかける。きっとトルノーが戦闘時に発動させた爆破によるものだろう。今にも蝶番が外れそうなほどボロボロになっている。そして、ドアを開き、そこに広がる外の光景は瓦礫に鉄骨、あちこちに倉庫だったものの一部が散っている。 


 「こりゃあ……やりすぎちまったな…」


 自分はこんな手しか思いつかなかったが、もっと良い方法があったのかもしれない。そう後悔しながらも、ちょうど良い高さの瓦礫に腰をかける。


 「あなたがやったのですか?」


 「まぁな、俺の固有技能(スキル)を魔術で拡張させた。魔力量が一気に消費しちまうが、絶大魔術に比べればコスパはかなり良い」


 「……父から聞いていましたが、アナタの能力であれば、もっと良い方法があったのではないですか?」


 「……ウォリスさんから聞いているのか?」


 先ほども述べたかもしれないが、トルノーの能力は戦況をひっくり返せるほどのもの。軍の切り札として、彼の能力は機密情報として一般公開されていなかった。また軍の中でも一部の上層部しかトルノーの能力は把握していないのだが、ウォリス・ウォルモースはまさにトルノーの能力を知る数少ない人間。


 シェルシュは何も言わない。しかし、彼女から感じるその気配は、疑念や怒りに似たものであった。


 アナタであれば、もっと上手くやれたのではないか?被害を出さずに済んだのではないか?誰も傷付かず、穏便に済ますことが出来たのではないか?


 トルノーを見る彼女の目には、そのような色が混ざり込んでいた。

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