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キル・レコード・マジック ~忘却の英雄は失踪した戦友の真実を追う~  作者: rinoe


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流通 13

 数分後──


 魔力切れから少し回復し、動けるようになったエヌフィーと一緒に階段で一階を目指し、降りていた。エレベーターを使いたかったが、トルノーが大きく爆発させた影響で電気が止まってしまったらしい。エレベーターはうんともすんとも言わず、動く気配がなかった。


 ので、二人は戦闘で疲れた体に鞭を打ちながら、ゆっくりと階段で降りていたのだ。


 「しかし、これからどうするつもりだ?今回の件は既に上層部も知ってしまっている。俺たちスルサート家が騎士団と関わりがあるのはバレちまったんだろう?警察も、軍も簡単には動かせないし、今後もスルサート家の奴らが追っかけてくるぞ」


 エヌフィーはそのような心配の声をかける。


 「お前の力じゃどうしようもないのか?」


 「馬鹿言え。俺の力は大したことない。その上、お前にボコされたおかげで俺の評判も落ちるだろうしな。お先真っ暗だよ」


 「そうか……。まぁ、でもこの状況になる事もある程度、予想していたよ。だから既に手は打ってある」


 そう言いながら、一階に着くとそこに居たのは二つの影。一つはシェルシュであった。


 「無事でしたか!?」


 トルノーの無事を確認しながら心配そうに近寄ってくる。


 「あぁ、問題はない。それよりも──」


 トルノーの目線の先は、もう一つの影の方へと向けられる。それは、エヌフィーもよく知っている顔であり、戦争に勝利をもたらした英雄の一人。


 「お前は……騎士団、団長のストールトン・ウォルモース!!」


 エヌフィーは驚きの声をあげる。


 エヌフィーは追いかけていた少女……シェルシュがウォルモース家であるとトルノーは言っていた。


 ウォルモース家のほとんどが軍か騎士団に所属している有力な貴族家系。シェルシュを守るために多方面に顔が効く、力を持った誰かが来るかもな。としか思っていなかったが、まさか次期当主とされている騎士団、団長であるストールトンが顔を出してくるとは……予想外すぎる。


 「久しぶりだね、二人とも。あの戦争以来か」


 「シェルシュにストールトン様を呼ぶように言ったのは俺だが、まさかこんな早く駆けつけてくれるとはな。あなたの背中にはドラゴンの翼でも生えているのですか?」


 トルノーは丁寧な口調で話しかける。


 彼はこの国において最も高潔と呼ばれる騎士団の団長。気軽に話して良い相手ではない。さらにトルノーはかつての戦場では騎士団や貴族出身の軍人にたくさんいじめられた。ストールトンは身分や出身で他人を判断するような人間ではないことは知っている。


 とはいえ、トルノーの心にはこびりついてしまっているのだ。貴族や権力者相手に対し、軽い気持ちで話しかけようものなら、自分の首が吹き飛ぶことを。


 それに、人は変わるものだ。


 戦争中、ストールトンはまだ団長ではなかった。今よりも身軽な身分で、周囲にいた人間も違ったはずだ。しかし、団長ともなれば関わる相手も、他者に対する考え方も変わってくる。


 そのように考えたトルノーだったが……しかし、彼の考えは大きく間違っていたようだ。ストールトンはそんなトルノーの態度、口調を見て爆笑しだす。


 「はははっ!何だ、久しぶりに会ったと思えばそんな……そんな………!ったく、一緒に戦った仲だろう?かしこまった話し方をするな、気色悪い」


 「あぁん、喧嘩売ってんのか?」


 その言葉は咄嗟にでたものであった。「はっ!」として荒げた言葉が出た口を押さえるが、ストールトンの反応は相変わらず笑っている。どうやら昔と何も変わっていなかったようだ。


 それを見て安心したトルノーもまた、大きく笑い出すのであった。

 

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