流通 11
トルノーに攻撃を当てるための算段がついたエヌフィーは再び攻撃を開始する。
「っらぁッ!」
エヌフィーが用いた攻撃は、先ほどトルノーには無効だった魔力弾の発射であった。
「同じ攻撃をしてくるとは、芸がないな!」
やはり、魔力弾はトルノーに当たる前に軌道が逸れていく。そして、拳を構えながら、先ほど同様、どんどん距離を詰めていく。
「いいや、魔力弾だけじゃねぇぞォ!」
エヌフィーがそう叫ぶと、刃に魔力を纏わせたかと思えば、思いっきり強く振り下ろしていく。その剣先からは鋭く、強力な衝撃波が飛び出し、トルノーへと向かっていく。
「飛ぶ斬撃とは、器用なことで!」
だが、その斬撃すらも、トルノーには当たることはなかった。
「言っただろ、お前の攻撃は絶対に当たらないってなァ!」
そうして、状況は先ほどと同じになってしまう。エヌフィーの前へと接近しきったトルノーは拳を放とうと助走をつけている。
そう、同じ状況。
一度、通用しなかった攻撃は続けても意味はない。逆言えば、同じ状況なら、同じ攻撃方法を用いれば確実に相手にダメージを与えることが出来る。
だから、トルノーは絶対に距離と詰めてくる。
この状況を作り出す事こそ、エヌフィーの狙い。
(同じ攻撃しかしてこないからこそ、油断しただろう!!)
そうしてエヌフィーは接近してくるトルノーに対し、本命の攻撃を行う。
「絶大魔術!!」
そう叫んだ瞬間、彼の前に巨大な三重の魔法陣が展開される。そして莫大な魔力量を練り上げ、魔法陣へと注いでいく。
(この魔法陣、魔術式は…まずい……!)
トルノーは慌てて拳を引っ込め、距離を取ろうとする。が、もう間に合わない。完全に油断してしまった!こちらも防御魔術で攻撃を防ぐしか──
「〈イグニス・セルピト〉!」
詠唱を終わらせた瞬間、魔法陣からまるで蛇が這うように地面を伝って炎が広がっていく。その熱量はガラスを一瞬で溶かし、コンクリートもドロドロになっていく。
防御魔術の展開とりもエヌフィーの攻撃の方が速く、トルノーは正面からその炎を受けてしまう。
「ッァ!」
(近づきすぎた……もっと距離があれば、逃げる余裕も、炎に直撃する前に防御魔術を展開する時間もあったというのに………これが狙いだったのか!!)
固有技能で熱を逸らしていくが……やはり完全に防ぐのは不可能だ。皮膚が焦げ、髪の毛は一部燃えていく。目の水分はあっという間に奪われ、脳が身体中に危険信号を送り始める。
魔力で身を纏わせているが、さすがに絶大級の魔術をただの魔力の膜で防ぐのは無理がある。
「やはり、完全に守り切れないみたいだな……!」
エヌフィーはどんどん魔法陣へと魔力を送りこみ、絶大魔術〈イグニス・セルピト〉を持続発動させていく。のだが、やはり絶大級の魔力消費はとてつもないものだ。
剣の力を借りてもなお、魔力の生成が追いつかない。
(さっさと、倒れてくれ……!)
エヌフィーは心の中でそう叫ぶ。今すぐにでも魔力切れで倒れてしまいそうだ。
そして、トルノーもまた、絶大級の魔術の展開がそう長くも続かないことを予測していた。
(耐えろ……耐え抜け………!)
お互い、一歩も引かぬ状況。
そして、数秒後、とうとうエヌフィーは魔力切れを起こし、その場に倒れ込む。炎は霧散し、魔法陣も消えていく。残ったのは焦げたコンクリートとモクモクと視界を遮る煙であった。疲労で意識が飛びそうになる中、トルノーが居た場所を見続ける。
(奴は倒れたのか!?それとも──!!)




