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キル・レコード・マジック ~忘却の英雄は失踪した戦友の真実を追う~  作者: rinoe


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流通 4

 どうやら、事情を知っている奴が出て来てくれたようだ。


 拘束されたチンピラたちは彼があの英雄ファイム・トルノーと呼ばれたことに再びざわつき始める。が、トルノーとウォルツは彼らの反応を無視して話を続ける。


 「中級魔術か……どうやらそこら辺の雑魚とは違うようだな」


 「光栄だな、アンタのような人間にそう言われるのは。俺も頑張って中級魔術師の資格を取ったのは間違いじゃなかったようだ。まぁ、今はその話は置いとくとして……どうやらグラッテが世話になったようで」


 「誰だ、そいつ」


 「アンタが今日、ボコした相手だよ。それとも、雑魚の名前一人一人覚えきれないって話か?」


 あぁ、あの倉庫で銃を持っていた男か。なんか魔力で電磁力をうんたらかんたら言っていたあれね。あの場にいたチンピラ達を命令していたぐらいだ。きっと彼も下っ端の中ではまだ地位や力を持っていた部類の奴なのだろう。


 「思い出したよ、魔具に頼ってばっかの雑魚のあいつね」


 「どうやら、あいつも情けない姿を見せてしまったようだな。まぁ、そういう話は今は良い。エヌフィーの兄貴から聞いている。そしてアンタを連れてくるようにとも言われている」


 「話が速い。それじゃ──」


 トルノーはウォルツへと近づこうとするのだが。


 「いいや、少し待ってもらおうか」


 ウォルツは真っ赤なジャケットを脱ぎ捨て、腕の裾を捲り始める。


 「コイツらも言っていただろう?俺たちは舐められたら終わりだとな。このまま簡単にエヌフィーの兄貴に連れて行くのは、お前らも納得いかないだろう?」


 その言葉に呼応するように、チンピラ達が「うぉぉぉぉぉぉぉ!!!」と叫び始める。


 トルノーはやはり、裏社会に首突っ込むのは大変、面倒な事だなと再認識しながら、トルノーも構える。


 「俺をファイム・トルノーと知って、喧嘩売ってくるとはな。勝てると思ってんのか?」


 「そうだな、俺じゃアンタに勝てないのは分かっている。だから、ルールを設けても良いかい?」


 「……ルールを設けて勝てるのなら、良いぜ」


 「よっしゃ、ルールは簡単。魔術はなし、固有技能もなし。使うのは魔力と拳!俺はこれで成り上がったんだ。アンタが相手だろうと負ける気しないね。そしてルール有りでもアンタに勝ったという事実が残れば、より箔が付く。もっと上を目指せる!!」


 そう言って、ウォルツは魔力を放出、両手に纏わせてファイティングポーズを取る。


 ステゴロ、というやつか。


 戦場では主に銃か、魔術か、固有技能しか使ってこなかった。それで大抵の相手は死ぬからだ。とはいえ、訓練兵時代ではちゃんと魔力を用いた格闘術も学ばされている。とはいえ、本当に基礎の基礎しか身につけていないわけだが。


 とはいえ、だ。


 自分で英雄ファイム・トルノーだぞと啖呵切っておいて、自分の得意分野じゃないから戦いません!って言うのはかなりダサい。それにこのチンピラたちに自分の実力を見せておけば、今後、喧嘩を売ってこなくなるだろう。また、自分の保護下にあるシェルシュにも簡単に手出しする事は出来なくなる。


 これは良い機会だ。


 「男の浪漫ってやつだな。面白い、本気で相手してやるよ」


 トルノーもまた、魔力を拳に纏わせる。周囲のチンピラはさらに「おおおおおおおおッ!」とでかい声をあげる。あちこちからウォルツを応援する声が聞こえてくる。ここが敵地であるから仕方ないことだが、自分の応援がないのは寂しいモノだ。


 「それじゃ、いかせてもらうぞ!!」


 ウォルツは大きく一歩、前に出て魔力を纏った右拳を振り下ろす。が、それをトルノーは簡単に見切り、カウンターのアッパーを繰り出す。ウォルツもまたそのカウンターを見切り、ギリギリの所で避けて見せる。あと数ミリずれていたら、顎を砕かれていただろう。


 「良い反射神経と目を持ってんな!」


 トルノーは次にウォルツの腹部目掛けて蹴りを入れる。それもウォルツの身体能力を考えれば避ける事が出来ただろう。だが、彼はあえて正面からその蹴りを受け止める。それはトルノーの力を確かめるため、小手調べのつもりだったのだろう。


 しかし──


 「ッ!!」


 ある程度、蹴りが入る場所を予測し、そこに魔力をより一層、多くの魔力を纏わせていた。だというのに、蹴りの威力を完全に無力化する事が出来ず、体内に強い衝撃が駆け巡る。


 「へぇ、十メートルほど吹っ飛ばすつもりだったのに、よく踏ん張れたな」


 トルノーはそう言って、受け止められた足を下げると追撃することなく数歩、距離と取る。トルノーの言葉に嘘、偽りはなさそうだ。だが、口調はかなり余裕がある。


 (まだ本気を出し切ってない蹴りでこれかよ……さすがは……ファイム、トルノー……!!)


 追撃すれば俺を戦闘不能にするまで叩きのめせたはずだ。それをしないという事は、遊ばれている証拠だ。聞いていた通りの化け物。圧倒的格上。だからこそ、だ。そうだ、彼を超えることさえ出来れば──

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