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キル・レコード・マジック ~忘却の英雄は失踪した戦友の真実を追う~  作者: rinoe


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流通 2

 ダルシェント王直属騎士団。


 彼らは軍部内においても、特別な位置にある。


 ダルシェント軍は基本、さまざまな指揮系統で分かれている。班から部隊、そして旅団へと続き、陸軍、海軍となる。そしてそれらをまとめ上げているのが統括司令部である。


 そして、軍でありながら、その指揮系統の枠組みから外れているのが騎士団。


 彼らは統括司令部ではなく、ダルシェントの現国王であるシュラヴェイト・ダルシェント王を元帥として活動する組織。そのため、軍の上層部であっても、騎士団を動かす事は不可能。しかし、王命によって彼ら騎士団は軍内部へと介入し、時と場合によっては騎士一人一人に軍の指揮権も与えられると言う。


 とはいえ、騎士団と王が暴走しないようにある程度、ルールや条件などが定められている。


 それでも騎士団が特別な位置にあるというのには変わりなく、また騎士は兵士と比べものにならなほどの実力を持っており、魔術、剣術、槍術、あらゆる戦闘技術を叩き込められているという。




 「……嘘、でしょ?」


 シェルシュは困惑する。


 彼らは王直属とはいえ、王が道を踏み外せば、彼らは王に忌憚のない意見を告げ、国が間違えそうになれば軍に介入し、過ちを正す。民が暴走すれば、王の威光を知らしめる剣となる。


 騎士とはそういう存在だ。


 そんな騎士が……信じられない。


 「嘘なわけあるか。一応、俺も何人か、騎士の知り合いがいる。が、あいつらは高潔な存在じゃない。いや、ある意味高潔だな。血統しか見ていないクソ野郎共だからな」


 トルノーは活躍した英雄だった。そんな彼を一部の奴らは認めていなかった。


 『あいつは庶民の出だ』


 『どう足掻いたって、特別にはなれないのにな』


 『あれで俺たちの仲間入り出来ると思っているのかね?』


 この国は百年ほど前に王政から議会制へと変化した。未だに王族や一部の貴族は権力を持っているが、身分関係なく、一般市民でも政治や軍部に介入出来るようになった。


 実際、トルノーのように活躍した兵士が元帥として軍統括司令部の一員になったり、政治家として王に意見する者もいる。が、それは本当に一部だけだ。


 結局、軍は、貴族は、政治は、人は、人間は血筋を見て相手を判断している。


 そして騎士はまさに血統しか見ていない典型的な人間しかいない。彼らのほとんどは貴族出身であったり、昔から騎士を輩出する優秀な家系であったり……。


 「そんな騎士が絡んでいるとなったら、軍に通報するだけで終わる話じゃない。それに、スルサート本家って言ってたんだよな?あのスルサートも関わってんのかよ……」


 「あの……騎士団は分かるんですが、スルサート家ってなんです?」


 シェルシュはそのように尋ねる。


 「あぁ、スルサート家っていうのはいわゆるマフィアだ。最近、勢力が大きく広がっていてな。麻薬から武器、人身売買とあらゆる手段で金と力を集めている。あまり関わりたくはないが……騎士団よりはマシかな。それにエヌフィー……だっけか?そいつの事は多少、知っている」


 エヌフィーはトルノーと同じく元軍所属の兵士だった。トルノーほどではないが、かなり強く、部隊長として多くの部下を引き連れて戦果をあげていった。


 そして戦後は共に戦った部下と一緒にスルサート家に傭兵として雇われたり、敵対組織や警察とも殺し合ったという。まさに技術、経験ともにそこら辺のチンピラとは格が違う。


 そして現在、エヌフィーはスルサート家幹部として富、名声を築き上げた。いずれはスルサート本家の者と結婚し、本家入りを果たすのではないかと囁かれている。


 「……もしかしたら、エヌフィーと騎士団と繋がっているのかもしれませんよ?」


 そのようにエニーは言う。


 ありえなくはない。


 エヌフィーは確か、元々は商人の息子で、かなり莫大な資産を築いていたという。貴族ともコネあったとか。だが戦争前の経済不況で落ちぶれてしまい、今では平民と変わらない生活をしてると言っていた。


 だが、血筋やかつての地位を考えれば騎士との繋がりがあってもおかしくはない。


 「……どんどん面倒な事になってきたな。まずはスルサート家の方をどうにかするか。騎士団はどうにも出来ないだろうからな」


 トルノーは頭を抱えながら、立ち上がる。


 「エニー、この辺りにあるスルサート家の事務所ってどこが一丸近い?」


 「まさか、もう行くんですか?」


 「こういうのはさっさと行かないと腰が重くなるからな。それにスルサート家ぐらいだったら、俺一人でなんとかなるだろう。エニーなら分かるだろう?」


 エニーの表情には一切、心配の色はなかった。トルノーの力を信じているのだろう。死ぬ事はない、と。とはいえ、かなりの面倒ごとを背負い込むことには変わりはなく、かなりめんどくさそうではあった。


 「……はぁ、私の仕事が増えますね。それなら西区のテノー通りの方に──」


 「ああ、あそこか。んじゃあ、行ってくる。


 そう言って、トルノーが事務所を出ようとした時だった。


 「すみません、私ならきっと騎士団の方をなんとか出来るかもしれません」


 そう言うのはシェルシュであった。


 一体、どうしてそう思ったのか。しかし、トルノーもまた気づく。


 そうか、現在の騎士団の団長は──

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