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本日2回目の更新です。
「いやいやいや、本当にありがとうございます。まさか盗賊から回収した財宝を全て寄付されるなど……その気高き志! なんとお礼を申し上げてよいものか……!」
「別にいいわよ、そんなの。子どもたちが幸せであればそれでいいの」
「ええ、ええ、勿論です。全て子どもたちの明るい未来のために使うとお約束いたします!」
そんな院長の言葉にトリッシュは頷いて。院長をじっと見つめる。
随分と調子がいいが、それも仕方ないと思えるような……そんな雰囲気があったからだ。
白髪混じりの髪には元気がなく、身体も服で誤魔化しているが大分痩せている。
服も……精一杯綺麗にしているようだが、大分くだびれているのが分かる。
先程から覗いては去っていく子供たちは院長に比べれば大分マシに見えるが……なるほど、今言ったのは本気であるようにもうかがえる。
少なくともこの院長は私腹を肥やすようなタイプには……見えない。
「多少は自分の為にも使いなさいよ。保護者が倒れたらどうしようもないんだから」
「ははは……返す言葉もありません」
「なあ、院長さんよ。この街、見たところ平和に見えるけどよ……その割にゃ、ならず者どもの姿も多いような気がしてならねえ。どういうことなんだ?」
スケルツォに言われ、院長は「ああ……」と疲れたような息を吐く。
「彼等は、その、傭兵でして」
「傭兵だあ?」
「ええ。最近は物騒だということで、商業ギルドが雇ったんです。商人たちの護衛と、あとは……街の巡回も自主的に手伝ってるとかで」
「ふーん?」
「随分とまあ古典的だなあ。さては衛兵もそれを追認してるんだろ」
「よくお分かりで」
予想通りの院長の返事にスケルツォは溜息をつきながら肩をすくめる。
もしかするとだが、あの盗賊団とも連携しているだろう。
下手をすれば連携どころか根が同じということすらあるだろう。
問題は何処まで繋がっているのかと、まあ、そんなところだろうか?
(ヤシチの奴の調査待ちかねえ……まあ、それはそれとしてだ)
「お嬢、もし院長さんが迷惑じゃなけりゃですがね。今日は此処にお宿をお借りして、子供たちと遊んであげるのもよろしいんじゃないですかね」
「ふーん……カクタス。貴方の意見はどう?」
「そういうものも必要ではないかと思います」
2人の意見に頷くと、トリッシュは院長にパッと笑顔を浮かべる。
美少女なせいか、その笑顔には相当な破壊力があり院長は「うっ」と声をあげて眩しいものを見たかのような表情になってしまうのだけれども……続けて出てきたのは「分かりました」という言葉だったのだ。
「ありがとう、院長! というわけで……遊ぶわよ!」
扉から覗く子供たちへとトリッシュが叫び近づけば、子どもたちからトリッシュへと近づいてくる。
元々トリッシュに興味があったのだろう、おずおずとした足取りながらも目がキラキラと興味で輝いている。
「すごいきれーい!」
「お姫様⁉ ねえ、お姫様⁉」
「違うよー、お姫様はドレス着てるんだよ!」
「ふふん、あたしに憧れてもいいのよ!?」
「やっぱお姫様じゃない……」
「なんで⁉」
「慎みがないから……」
「そういうの古くない?」
ワイワイとやり始めているトリッシュが子どもたちと何処かへ行ったのを見送ると、カクタスが「さて」と声をあげる。
「院長殿。すでに危惧されている部分もあると思うが……私たちが今晩此処にいるのは、単純に護衛だ」
「は、はあ……いや、まあ、それは……」
「此処にくる間、尾行は全てまいたが……それでも頭の回る奴もいるはずだ。もっとアホもいるかもしれない。故に、安全を確保しておきたいと思うのだ」
衛兵が腐っているだけならまだよかった。
しかし、治安維持にチンピラ傭兵どもが関わっているなら話は別だ。
途中で感じた欲望の視線のことを考えても、ロクなことは起こしそうにない。
そして当然、それを放っておいてこの街を離れる気もない。
「恐れる必要はない。私たちのお嬢は、悪にはすこぶる容赦のないお方だ」
一般人とは思えないそのカクタスの言動に、院長は僅かながらの疑問を含んだ……しかし当然の問いを投げかけていた。
「その……今更とは思いますが貴方方は、いったい……?」
「たんなる旅商会だ。チリメン商会……少人数の、どうということはない商人とその護衛さ」
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