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本日4回目の更新です!
レッサー・デーモン。その一本角が特徴の強大なモンスターであり、高い知恵を持っていることでも知られている。デーモンと呼ばれるモンスターたちの中では最弱とされる「レッサー」でも、その凄まじい力と魔法で商隊を護衛ごと消し飛ばすというが……。
「馬鹿め。大人しく売られていれば、まだ人間としての生を全うできたものを」
「馬鹿はそっちよ。人間だから加減してたのに、正体がモンスターだなんて……殺すしかなくなっちゃったじゃない」
「虚勢もそこまでいくと可愛らしく思えるな?」
レッサー・デーモンが指を鳴らせばレッサー・デーモンを中心に炎の壁が広がり、周囲全てを焼き尽くそうとしていく。そう、自分の部下であったはずの盗賊たちをも含めてだ。
フレイムウォール。そう呼ばれる魔法に似ているが、ここまでくれば壁ではなく砦……フレイムフォートの域にまで達しているだろう。
一瞬でここまでのものを展開するとなると、ベテランの魔法使いがいたとしても抵抗は難しいだろう。
当然トリッシュたちも死んだだろうと、そうレッサー・デーモンは確信する。
自分の炎にちょっと出来る程度の人間如きが絶えられるはずがない。
そう、これで目撃者の始末は完了したのだ。
「さて、また部下集めから始めねばならんが……」
「そんな機会はないわよ」
「何⁉」
レッサー・デーモンが振り向いた先。そこには光の壁に守られたトリッシュたちがいた。
カクタスの展開したシールド魔法だ……レッサー・デーモンの放った魔法はカクタスのシールド魔法を破るどころか、触れるだけでかき消されていたのだが、そんなことにはレッサー・デーモンは気付いても居ない。
運のいい奴等だ、と。レッサー・デーモンは思わず歯ぎしりしそうになる。
自分より劣る人間などに自分の魔法を防がれたことはレッサー・デーモンにとっては明確に屈辱であったからだ。
だがレッサー・デーモンも効いていないと気付くと同時に棍棒を拾い凄まじい膂力で放り投げて。
しかし、それもトリッシュに届くことはない。
魔法のシールドから飛び出したスケルツォの剣が閃き、棍棒を微塵切りにしてしまったからだ。
なんと鮮やかな剣撃だろうか。レッサー・デーモンの並の人類などとではくらべものにならない程の目でも、スケルツォの剣撃を完全に見切ることはかなわない。
絶技。そう呼ぶに相応しい剣撃はしかし、スケルツォにとってはなんということもない。
そして、今の絶技に不満がある者はカクタスくらいのものだ。
「おい、そんなに私のシールドが信用ならないか?」
「なあに、気にすんなよ。単純に役割分担ってやつさ」
笑うスケルツォがレッサー・デーモンへとそのまま剣を突き付ける。
スケルツォにとっても、当然カクタスにとっても……レッサー・デーモンなど大した問題ではない。
先程の盗賊と比べてどの程度かと聞けば「誤差」と断言する程度の強さを持っているからだ。
スケルツォか、カクタスか。先に動いた方がレッサー・デーモンを処理するだろう。
その圧倒的な力の差にようやく気付いてかレッサー・デーモンが一歩下がる。
人間相手にそんなことをするのは屈辱ではあるが、命には代えられない。
どうすれば生き残れるか。レッサー・デーモンの視線はトリッシュへと向けられて。
当然のようにその視線に気付いた2人が殺気を強めた……その、瞬間。
「スケルツォ、カクタス。もういいでしょう?」
響くトリッシュの言葉にスケルツォとカクタスは苦笑する。
ああ、そうだ。このレッサー・デーモンのやったことをトリッシュは絶対に許さない。
「……ご随意に、お嬢」
「思うようになさってください」
その場に慣れた様子で控えるスケルツォとカクタスにレッサー・デーモンは疑問符を浮かべる。
何故。何故、この二人は突然戦意を消したのか?
あの状況で敗北を認めたというわけでもないだろうに、何故?
その答えは、一歩進み出た少女に……トリッシュにある。
「1つ。真昼間から大通りでの盗賊行為」
許されることではない。大通りの治安低下は物流の滞り、そして無辜の人々の生活に極めて重大な影響が出る。
「2つ。それを止めようとした人々の皆殺しを喜ぶ最低の倫理観を育てたこと」
盗賊だから、で済む話ではない。もはや凶賊。元々善良ではなかったかもしれないが、最悪の道に引き込んだこと。
「放置できない悪だと断定するわ。覚悟しなさい」
「そうか。長い遺言だったな」
一瞬。目にも留まらぬ速度でトリッシュの眼前へと迫るレッサー・デーモンは拳を振りかぶっていて。
「……バガナブアッ」
全身をくまなく殴り尽くす打撃の連打に耐えきれず後ろへ倒れ……られない。
そのまま一瞬で消し飛び消えたからだ。
「信じられるか? あれ、一秒で100発繰り出してんだぜ?」
「君の教えた技か?」
「俺はあそこまで出来ねえよ」
確かに高速での連打は教えたが、そこまでの絶技ではない。
しかも教えたといっても、1度目の前でやってみせただけなのだ。
それを更に凄い技に昇華させるなど……トリッシュだからこそ出来ることだが、それをカクタスもよく理解している。
お嬢は……トリッシュは、文字通りの世界最強であるのだと。




