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本日3話目の更新です!
「おうおうおう、なんだテメエら!」
「まさか傭兵共か⁉」
すなわち先程襲って来た盗賊たちの仲間の居場所……つまり、アジトである!
街道からそう離れていない山の中腹の洞窟を利用したらしいアジトは、ゴブリンの巣穴をも連想させたが……入り口に余計なものが入ってこないように門を作っているのと、見張り小屋があるのがゴブリンとは違うところだろうか?
そんな盗賊たちの前にトリッシュたちは堂々と立ち塞がる。
不意打ちなどという真似はしない。
盗賊と卑怯比べをしたいのなら話は別だし、そんなことをしないと勝てないというのであれば好きなだけ不意打ちをすればいい。
しかしトリッシュはそうしない。そうする意義を全く感じないからだ。
だからこの場に響くのは、朗々としたトリッシュの声だ。
「この辺を荒してる盗賊はアンタたちね!」
「だったらなんだってんだオラ!」
「万が一人違いだったら大変でしょ!?」
「お、おう⁉」
一瞬納得しかけて、盗賊はハッとしたような表情で叫ぶ。
「人違いだって言ったら帰んのかよオイ!」
「きちんと調べは済んでるから帰らないし、その反応で答え合わせも済んでるわ!」
「じゃあ今の問答は何なんだよ!?」
「ただの答え合わせよ!」
「くっだらねえことに時間使わせやがって……! テメエ、どうなるか分かってんだろうな!?」
盗賊のあからさまな脅しをトリッシュは余裕の表情で鼻で笑う。
その程度の脅しなど何度も聞いてきたし、なんならもっと下品な言葉だって聞いてきた。
それに比べたら、脅し初心者としか言いようがない。
だが、当然トリッシュの反応は盗賊にとって満足いくものではなかったようで……手元の斧を持つ手に力がこもる。
「……マトモな生活に戻れると思うんじゃねえぞ」
それにトリッシュが言い返すよりも前に。洞窟の奥から、一際悪そうな風体の男がヌッと姿を現す。
「おいおい、待て待て。そんな小物みてえな言動するんじゃねえよ」
「カ、カッスの兄貴!」
「くだらねえ正義感で突っ込んでくる連中なんざ珍しくもなかっただろうがよ。そういう奴等が今までどうなってきた?」
「勿論皆殺しでさあ!」
「へへへ、お前ら! カッスの兄貴に勝てると思ったら大間違いだぞ! カッスの兄貴はなあ、オークに力勝負で勝てるほどなんだぜ!」
「オーク殺しのカッスといえば、同業だってビビって道を開けるんだ……聞いたことあるだろ⁉」
「ないわよ」
とはいえ、だ。なるほど、それが事実であればたいしたものだ。
オークは人間の倍ほどには大きなモンスターであり、大人の男でも一撃で叩き潰す。
そんなものを本当に力勝負で制したなら大したものだが……。
巨大な鉄の棍棒を背負っている巨漢の男……カッスはトリッシュを下衆な視線で嘗め回すように見つめる。
その視線も倫理的にはどうかしているが盗賊目線でいえば、ある程度仕方がないとはいえる。
確かにトリッシュはとんでもない美少女だ。盗賊からしてみれば「お宝」に見えているのであろうことは間違いない。
ぶおん、と。重たげな棍棒を軽い木の枝か何かのようにカッスは振るって。
「サンダーレイン」
「あぎゃああああああああああああああああああああああああああああ⁉」
カクタスが無表情で放った雷の雨の一撃でカッスとその一味は焦げながら全員気絶する。
殺していないのは放置してきた連中とまとめて官憲に引き渡すためだが、それがトリッシュの方針だからそうしているというだけではある。カクタスはクズが更生するなどとは微塵も信じてはいない。
信じてはいないが……トリッシュが言うなら仕方がない。
「うん、全員生きてるわね! じゃあ連中のアジトを漁ってから街まで運びましょうか!」
「はい、お嬢」
カクタスが指を振れば、盗賊たちは先程と同じように光の拘束具で縛られて。
「……ん?」
感じた違和感に、カクタスはほぼ直感的にトリッシュを庇う態勢に入る。
それはスケルツォもほぼ同時。彼もまた空気が変わったことを感じていたのだ。
「ふうん? 人間じゃなかったわけね」
2人に守られるトリッシュの視線が向く先は、カッス。焦げて倒れ、カクタスの光の拘束具で縛られていたはずのカッスの拘束具が点滅し、砕け散っていく。
「あーあ。おいカクタス。ちゃんとやれよ」
「やっている。人間を封じ殺さない程度の強度ではあったはずだが」
余裕の態度を崩さない3人の前でカッスの身体は膨らみ、筋肉量が人間を遥かに超えたものへと変わっていく。
メキメキと音をたてながら人間らしい姿を脱ぎ捨てたカッスの頭部には1本の角が生え、口元が大きく裂けていく。
「……レッサー・デーモンか。モンスターが盗賊やってるなんて、世も末ね」




