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本日2話目の更新です!
「ア、アサシンか……!? お前ら、どういう集団だよ……!」
なるほど、こんな黒ずくめ……何者かと聞かれれば、10人中9人はアサシンだと言うだろう。
しかし、アサシンではない。
それはまさに東方にいるという隠密要員、ニンジャだ。
秘密を暴くスパイであり罠を見抜き罠を仕掛け、自然に詳しいレンジャーであり、秘密裏に任務を遂行するエージェントであり、時として暗殺もするアサシンもであり……とにかくやることの多い裏の万能職、それがニンジャなのだと伝えられている。
この男が背負ったカタナと呼ばれる剣もまさにニンジャのシンボルとして有名だ。
しかし残念なことに、盗賊のリーダーにそこまでの見識はなかったようだ。
まあ、当然だ。元より裏のエリートがニンジャなのだ。こんなチンピラもどきでは裏の先端にすら触れられまい。
そして、そのニンジャは……どうやら、この少女に忠誠を誓っているように見えた。
「お嬢。こやつ等の根城、すでに目途はついてござる」
「え、そうなの⁉ ヤシチは凄いわね!」
「なんのこれしき。この辺りを狩場にしているとなれば、そこからの逆算など拙者には容易きことにござる」
言いながらヤシチは覆面をずらしてみせるが、これまた美形だ。
覆面をずらしたことで僅かに零れる黒髪と、アーモンド形の黒目は東方の者に特徴的な幼さをもっており、お嬢へと向ける笑顔がそれをとても魅力的に見せている。
そう、文字通り「魅力的に見せている」のだ。自分の美形っぷりを活かしたあからさまなアピール……だって、ここで覆面を外す理由がないではないか……に、しかし少女は無反応。あくまでヤシチの有能ぶりに感嘆を受けた様子で頷いていた。
「まあ、そういうことなら……そいつも気絶させちゃいなさい、スケルツォ」
「おう、お嬢」
ただ蹴り飛ばしただけにしか見えないその動きで、盗賊のリーダーは気絶して。
カクタスが手を振れば、盗賊団全員が光の拘束具で縛られていく。
これはカクタスがこの場に居なくともしばらくは継続する魔法だ……当然、ナイフなどで斬れない分普通の縄よりも拘束強度は高い。
「おつかれさま。これでまた一つ世の中が綺麗になりそうね!」
「いや、それはいいんだけどさあ……」
「何よ、スケルツォ。気になることでもあるの?」
「こんな大通りで盗賊が出るなんざあ……この辺の治安はどうなってんのかね」
そう、此処は街同士を繋ぐ大通りなのだ。
治安というものは街から離れるほど悪化するものだから大通りで出てもおかしくはないのだが……此処は街からそれなりに近い場所だ。
しかし、そもそも論でいえば大通りの治安の維持は領主の責任でもある。
こんなところに真昼間から堂々と盗賊団が出現するということ自体がかなり治安に対する不安を感じさせるのだが……今のところはどうしようもないというのが実際のところではあるのだ。
「まあ、確かにそうよね。この辺りの領主が兵士に給料出してないとか、そういうことでも起こらなけりゃ有り得ないもの」
お嬢がヤシチに視線を向ければ、素早く覆面を直したヤシチが紙を渡し「お任せを」という言葉だけを残して影に消えていく。
「……ちなみにですが、お嬢。領主が治安維持を放棄していたら、どうされるおつもりなので?」
「決まってるでしょ、カクタス。あたしは誰?」
「私たちチリメン商会の主、トリッシュ様です」
「ちなみにお嬢、旅商会の主は領主の家に殴り込みに行ったりはしねえぜ?」
「……そぉね」
「ま、丸ごと腐ってねえことを祈ろうや。世の中広いんだ、真昼間から盗賊の出る治安の良い街だってあるかもしれねえ」
「そうかしら……」
「そうそう。ま、気楽に行こうぜ? あんまし気合い入れてっと、お嬢の妹様みてえになるぜ」
「可愛い妹よ」
「へいへい」
歩きながら言い合う3人が向かう先は……ヤシチの紙に書かれていた地図の示す先だ……!




