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アリフレタ帝国物語~最強皇女様の世直し旅~  作者: 天野ハザマ


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「ふーん……?」

「ご、ごめんなさい。こんな話、役に立たないですよね」

「いいえ? 中々に興味深い話だったわ。ちなみに握手っていうのは全員と?」

「あ、僕だけです」

「なるほどね……それじゃあ疑っても仕方ないわね」


 それだけでそのケインが黒と判定できるわけではない。

 ないが、トリッシュにはヤシチという謎暴き系ニンジャがいる。

 確かヤシチの見せたリストでは……ケインは黒だ。

 それでもニンジャが全部調べました、なんてことを言うと面倒なことになるのでこうした手段をとっているわけだけれども。


(でも、これで調べる切っ掛けは出来たわね。あとは介入理由だけど……うーん)


 考えながらトリッシュは、腰のポーチから小さな指輪を取り出す。

 銀色のその指輪は特別な祝福がかけられた魔除けの品だ。


「ねえ、シルバさん? うちの商会から魔除けを買うつもりはない? お安くしとくわよ?」

「あ? 魔除けって……どういうつもりなんだ? まさかまた呪われるってことか?」

「というよりも、念のためかしら。ちょっとアフターサービスをしてあげようと思って」


 まさかシルバもロンドも、思ってもいなかっただろう。

 相場よりも遥かに安い、有り得ない程の値段で指輪を売っていったトリッシュたちが、その足で口入れ屋に踏み込んでいくなどとは。


「こんにちは、貴方が口入れ屋?」

「……こんなところに来る奴には見えねえがな」


 警戒した口入れ屋の様子は、まあ当然とはいえるだろう。

 あからさまにこんなところには似つかわしくない3人がやってきたのだ。警戒しない方がおかしいとすら言える、のだけれども。

 そんな口入れ屋の前のカウンターにトリッシュは手を突き満面の笑顔を浮かべる。それは本当に魅力的な笑顔で。


「仕事の仲介ついでに呪いも仲介してるんでしょ? 誰が黒幕か教えてよ」

「あ、お嬢⁉」

「な、何言ってやがる⁉ いきなりそんな」


 目にも留まらぬ速度で口入れ屋の胸元からトリッシュが奪ったのは、ドクロの柄飾りのついた禍々しいナイフ。


「今時こんな、あからさまな呪術ナイフとかあるの? うわ、ばっちい!」


 小枝を折るように指でナイフの刀身をへし折ったトリッシュに口入れ屋が「わーっ!」と声をあげるが……折れた刀身から漏れた瘴気を……いや、それを見てトリッシュが浮かべた笑顔にビクッとした表情になる。


「こんなもの持って一般人とか言わないわよね?」

「し、知らん! それは旅商人から買ったもので……!」

「その言い訳は通じないわよ。だって、地下にも汚い像を隠してるじゃない」

「……!」


 椅子から立ち上がった口入れ屋はじりじりと下がっていく。その先にあるものを守ろうとしているのか、逃げようとしているのか。


「お前……! まさか神官か!」

「そう見える?」


 見えるかと聞かれれば、口入れ屋としても悩むところだ。

 格好は明らかに違うのだが……トリッシュの姿は、神聖さすら感じるほどに美しいからだ。

 だが、そうだとして。此処を嗅ぎつけられたというのは非常に拙い。


「まあ、どう見えていてもいいのよ。問題はね、こういう場所に破滅教徒がはびこってることなの。ねえ、何処までが仲間? 取りまとめ役? それとも利用者も取り込んでるの?」


 少なくともケインは仲間だ。仲間になることで「より良い生活」を出来る仕組みのようなものがあっても不思議ではない。もっと最悪の可能性としては洗脳だが……そうであればまあ、救いはある。

 救いがないのは、この男だ。


「ま、待てよ。俺はそういうのじゃあないんだ」

「嘘つくんじゃないわよ」

「ほ、ほんとだ! なんなら証拠もある!」

「ふーん?」

「この文書だ! いつか告発しようと思ってとっておいたんだ! 見てくれ!」


 口入れ屋がポケットから出してきた、くたびれた紙を広げて……そこに書かれていたのは魔法陣。

 そう、瞬間的に魔法を発動するスクロール……!

 放たれた火炎弾がトリッシュに直撃して爆発を巻き起こせば口入れ屋は高笑いする。


「ハ、ハハハ! 騙されやがって!」


 万が一死んでいなくても護衛は救助に必死で追ってこれないだろう。

 身を翻して逃げようとした口入れ屋は、目の前にいるトリッシュに「ひい!」と声をあげる。


「え、え!? あれ⁉」


 元居たはずの場所に居ない。そして怪我一つなく自分の前にいるトリッシュ。

 何が何だか分からない。分からない、ままに。トリッシュの蹴りが口入れ屋の足と足の間を打ち抜き、断末魔の如き悲鳴をあげた口入れ屋をそのまま天井に突き刺してしまう。


「殺しはしないわ。でも相応の罰は受けてもらったわよ」

「男としては死んだんじゃねえかなあ……」


 そんなスケルツォの言葉にもしかし、一切の同情の色がないのは……まあ、当然といったところではあるだろう。


 

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