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アリフレタ帝国物語~最強皇女様の世直し旅~  作者: 天野ハザマ


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本日2回目の更新です!

 トリッシュたちのいる場所から離れた、とある商会の店舗。

 イチルでは知らない者のいない大きなこの建物の中は今、滅茶苦茶に荒れていた。

 周囲には調度品やら商品やらが壊れて散らばり、転がってきたナイフを1人の女の足が踏む。

 完全な実用品……それも使い込まれたナイフだ。どう使われてきたかは想像するしかないが。

 しかし、ナイフなどはこの場においては大した問題でもないだろう。これほど美しい女もそうはいない。

 アップテールにまとめた金色の髪は月よりも美しく輝き、強気な印象を与える青い瞳はしかし、何処か激しく燃える炎をも思わせる。

 トリッシュに似ているようにも、全くそうではないようにも思える。

 まあ、一番違うのはプロポーションだろうか。トリッシュが美少女であるとしたら、こちらは美女だ。

 女神像の如く完成したプロポーションはそれだけで完璧さをもっており、そのまま銅像にするだけで芸術と称されることだってあるだろう。

 体を覆うミスリルを錬金術により糸にして織りあげたローブは美しく、大富豪と呼ばれる程度ではこの布の欠片すら手に入らないような……そんなものを纏うことで産まれの高貴さを示すかのようだ。

 その近くには、その美女にすら勝る程に美しい、浅黒い肌の男も立っている。

 南方の砂漠の国によく見られる特徴を持つその男の髪は美しく滑らかな黒。

 短く切ったその髪は切れ長の金色の瞳とよく合っており……真っ白な上着のはだけた胸元から見える筋肉もまた美しく保たれ肌は真珠か何かのようなきめ細やかさがある。

 すらりと長い足を強調するズボンの腰元にはシミターと呼ばれる曲剣が提げられているが、それを抜いた様子もない。

 だが、そのシミターすらも男の色気に一役買っているのは……もはや傾国と呼ばれるレベルだろう。

 艶っぽく微笑むその男とは逆に、美女はその顔に浮かぶ怒りを隠しもしない。

 

「くだらない真似をしたものね」


 そんな美女は、転がる男へと杖をつきつける。ロッドと呼ばれる腕程の長さの杖は先端に大きく真っ赤な宝石がついており、相当な高級品であることが伺える。この辺に転がるゴミのような商品を全部合わせたとて買えはしないだろう。

 近くには護衛だというチンピラたちも転がっていたが……。


「い、いきなり何なんですか……こ、こんな暴挙。警備隊が怖くないのですか……!」

「警備隊?」


 男の言葉に女は馬鹿にしたような笑みを浮かべる。

 警備隊。このイチルの街の警備隊は街長の私兵のようなものではあるが、そうした幾つもの街を統括する領主が追認する公的な戦力でもある。

 しかしそうであれば当然、法の下に動かなければならないし、間違っても悪党の味方になってはならない。

 ならば男は自分が法に守られる側だと主張しているのだろうか?

 いや、そうではない。そうではないと知っている。


「破滅教の信徒如きがほざくじゃない。人間の敵の分際で人間に守られようっての?」

「は⁉ な、何を……破滅教⁉ 何を言っているのか全く……!」

「分からない? モンスターを神の使徒と定義付け、モンスターの神たる悪神の降臨を企む邪教……その特徴を知らないと思った?」

「ぐえっ⁉」


 蹴られた男が転がって。その蹴られた場所から赤いオーラのようなものが一瞬漏れ出る。


「破滅教の信徒が最初に覚える魔法、護身魔気……しぶとく生き残ってコソコソ逃げ出すための瞬間強化回復術。そうと分かっていれば簡単に判別できるのよ」


 そう、破滅教の信徒であることは死に値する人類への裏切りだ。

 何故ならその教義はモンスターの支配する世界であり、自分たちはその管理者たらんとしているからだ。

 だからこそ、破滅教の信徒は必ず最初に自分を生き残らせる魔法を会得する。

 自分たちだけは生き残るという、そんな浅ましい考えが使う魔法にまで現れているのだ。

 それが分かっているからこそ破滅教は決して表には出てこない。裏で動くのが常であり……その中には罪のない一般人に偽装している者も多くいる。

 だから、この男もゆらりと立ち上がって。


「恐ろしい。恐ろしいですね……貴方がここ数日、色々探っているのは知っていましたが。まさかこんなにも早く攻め込んでくるとは。一体何がそうさせたのですか?」

「あるのでしょう、此処に」

「……何がですか?」

「汚らしい悪神の神像よ。世界中の毒虫を集めて固めてもそうはならないだろうという程に汚臭を放つゴミの気配をいつまでも隠しきれると思うの?」


 あからさまなその侮辱に、男の……破滅教徒の笑顔が固まる。

 自分の信じる神の、その象徴たる神像をここまで口汚く馬鹿にされた。

 その事実が男を激怒などという言葉では収まらない程の怒りで埋め尽くしたからだ。

 当然、わざとである。


「その傲慢……手足を全て落としても言えるか試してやる……!」


 先程と同じ赤黒いオーラが破滅教徒を覆い、怪物じみた速度で女へ迫る。

 瞬間的に伸びた爪が……しかし、届かない。

 側に控えていた美し過ぎる男のシミターが、爪も腕も切り飛ばしたからだ。


「いつ、のまに」

「申し訳ないけどね。俺の姫様に触れないでくれるかな?」

「貴方のじゃないわよ」

「そうだね。今はね」


 言っている間に破滅教徒が蹴り倒され、それでも破滅教徒は跳ね起き女に噛みつこうとする。

 だが出来るはずもない。届く前にその長い脚で蹴り飛ばされ宙を舞って。

 落ちて転がった破滅教徒はピクピクと痙攣する。


「調べたんだろう? この方が何者か」

「帝国の皇女……」

「その通り。アリフレタ帝国第二皇女、イライザ・イル・アリフレタ様だ。だからお前らは破滅する。ああ、とても簡単な話だろう?」


 その夜、この商会の建物内に居た者全ては死亡した。

 事情を知る者がいれば当然だと頷くだろうが……目撃者は、一人もいない。

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