2話、サボり癖
ゴーゴーと唸るクーラーを横目に、流れる時間に身を任せる。
ひんやり冷たい缶コーヒーを飲み終えて時計を見ると、針は2時ごろを指していた。
もう自習の時間も終わっただろうか。
黙って教室を抜け出してきた割には結局、先生は探しに来なかった。
アクシデントとはいえ授業中だ。手が空いている教師が少なく、自習監督が付かなかったのか。
それとも今現在、抜け出した俺たちを探しているのか。
ともかく、京吾の気分もある程度落ち着いてきた。これで教室には戻れる。
「……もうちょっと、ゆっくりするかぁ」
そう言うが、返事の代わりに京吾の穏やかな寝息が聞こえて来て、ふっ、と笑った。
そしてベンチの背もたれに体重を預け、ため息をついた。
電気のついていない食堂の窓からは、初夏の陽射しが流れこんでいる。
明るくても、ギラギラとは輝いていない、心地の良い陽射しだ。
そんな中、楽な姿勢をしていると、みぞおちの辺りが、ずぅん、と重くなってくる。
それが心地よく、食後の眠気も相まってまどろんでいた。
ゆっくりと時間が流れていく。
「京吾、康介くん。何寝てるんですか、起きてください」
聞き覚えのある声に呼びかけられて目を開ける。
腰まで伸びた髪と一切着崩しのない模範的な制服姿。
「おはよう、水田」
そう言うと、水田はあきれた様子で肩を落とした。
「おはようじゃないですよ、授業抜けだしといてのんきなもんですね!」
我らがクラス委員長は相当お怒りの様だ。
水田は京吾の方を見ると、ためらいなく足を踏みつけた。
「ッ……痛いって」
「いつまでも寝てるからですよ、早く起きなさいこのタコ」
水田がそう言うと、京吾はゆっくりと体を起こした。
そして辺りを見渡し、壁にかかっている時計を確認すると、なぜか納得したように水田を見た。
「ほら、早くもどりますよ!」
水田が京吾の首根っこを捕まえる。
「嫌だあ、助けてくれえ」
手をこちらに伸ばして助けを求めてくる。
引っ張られていく彼を満面の笑みで見送った。
去り際に、水田から「康介くんも早めに帰ってきてくださいね!」と何度も釘を刺された。
俺は立ち上がり、自動販売機から炭酸を買う。
手に取ったペットボトルは、ひんやりしていて心地が良い。
キャップを開けると、カシューッ、と気持ち良い音がした。
ひと口含み、再びベンチに座る。
「……あと1時間、サボろうかな……」




