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この星の魔法少女たちは、まだ戦えない! ~アコンプリス イン マジカルガール~   作者: 大恵
第2章

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第59話 魔女のことは魔女に

「大勝利〜〜!」


 フルアーマード十字斬り男を倒したあと、残敵である戦闘員を新魔法少女と共に駆逐したスコラリス・クレキストは、撮影する野次馬たちに向けて勝利宣言のポーズでアピールを忘れない。

 彼女は魔女として暴れたアングザイエティーズ・キス改めエティーズ・ルテティアと違い、観衆たちにサービスを忘れない精神を持っていた。


 一方、魔女を名乗るアンミ・マジュスは、ホウキで宙に浮いているため遠まきに眺める人が多い。

 おそらく魔女を名乗ったため、アングザイエティーズ・キスと同じ悪印象……そして背後から一突きする姿に恐れを抱いているためだろう。

 もっとも、ホウキにぶら下がって飛んでいるというのも、近寄れない理由だろう。


 親しみを持ってスコラリス・クレキストを取り囲む観衆たちは、無遠慮にもサインを求めている。

 サインは無理だと断るが、一緒に記念撮影などを応じていた。


 記念撮影もそこそこ、警察が来る前にとスコラリス・クレキストは、戦闘員に捕まっていたリリカの元に駆け寄ってきた。


「ねえ、大丈夫だった? リリカ?」


「はい……え?」


「……あ」


 リリカはスコラリス・クレキストに名前を呼ばれ、何かに気がついた表情を見せる。

 ワンテンポ遅れて、スコラリス・クレキストも失言に気がついた。

 追及しようとリリカが口を開けたその時。


 タイダルテールが狙っていた【モニュメント】と称される門柱が破壊される炸裂音が鳴り響いた!


「なに! なにが起きたの?」


 スコラリス・クレキストも、リリカも、撮影していた観衆たちも、その音に驚いて門柱を見ると、アンミ・マジュスが瓦礫の中から何かを拾いあげていた。


 それは大きなガラス玉のようで、ほんのりと光っている。

 ガラス玉を大切そうに抱え、注目するスコラリス・クレキストたちに宣言する。

 

「これがお爺様の夢に……」


 光るガラス玉を懐に収めてホウキにぶら下がり、ふわりと浮かぶアンミ・マジュス。

 スコラリス・クレキストは呼び止めるため、数歩歩み出して手を伸ばす。


「ちょ、ちょっと待って! ねえ、あなた! 新しい魔法少女なの?」

「魔女です」

「ま、魔女なの?」


「スコラリス・クレキスト。あなたと戦うつもりはない。でも、せめて邪魔はしないで」


 そう言って、ホウキに乗り直したアンミ・マジュスは、再び空へ向かって高く高く飛び上がった。


 横へ飛んでいくならば、スコラリス・クレキストも追いかける気になったが、高く高く豆粒に見えるほど高く舞い上がられてから、雲の影に隠れて逃げられては追いかける気にもならない。


「今のガラス玉みたいなの、なんだろう……」


 魔女を自称するアンミ・マジュスが持ち去ったガラス玉。タイダルテールもあれを狙っているのだろうか?

 魔女については、姫子に聞いてみようと思っているスコラリス・クレキストに、リリカが声をかける。


「あの。クレスちゃん。あなた、なぜ私の名前……」


「あーっと、あれがあれでこうだからこうしないとあーして急がないとーっ! みんなごめんねー!」


 スコラリス・クレキストはとぼけて誤魔化すように、そしてリリカから逃げるようにその場から走り去った。


◇  □   ◇ 魔 ◇   □  ◇


「リリカさんの名前を呼んでしまったのは、失敗でしたね。小夏さん」

「うう、ごめんね。姫子ちゃん」


 ミンチルが作り出したアジト(プレイルーム)で、姫子に咎められた小夏ことスコラリス・クレキストは小さくなった。


 小夏はスコラリス・クレキストの姿をしているが、姫子は魔法少女に変身していない。

 鬼のような一対のツノが額に生え、制服姿で涼しい顔をして持ち込んだ紅茶を飲んでいた。

 なお彼女の前には相当量の食べ終えた後のデザート皿が並んでいる。


 魔力がとても高く常時魔法を使っているような状態の姫子は、小夏が望んでいた以上にアジトへの魔力残滓を供給をしていた。

 スコラリス・クレキストが貯めた魔力をスイーツとして消費した姫子だったが、すぐに返済してしまい、今では自分用に大量供給、大量消費している。

 それでもじわじわ魔力残滓が溜まっていくので、スコラリス・クレキストは御相伴に預かることも多くなってきた。

 

 そんな手前、小夏は恩人でありながら、姫子へちょっと頭が上がらなくなり始めている。


「いえ、怒ってはいませんよ。私も気をつけないと、って思ってますし」


 姫子は深刻に考えていたため、少し厳しい表情になっていただけだった。

 しゅんとするスコラリス・クレキストに、緊張を解き柔らかく微笑みかける。


「うわー、やさしー、姫子ちゃん好き〜」

「……っ!」


 スコラリス・クレキストはありがとうとばかりに、姫子に抱きついた。

 何気ないスキンシップだが、今の姫子にとっては拷問に等しい。

 小夏に好意を持つ姫子だが、その好意を発露する行為を行えばアジトのルールに反するのでお仕置きを受けてしまう。

 痛いことが苦手な姫子は、お仕置き回避のため小夏の柔らかいが細く小さい体を受け止めて、微動だにせず鼻息を荒くするほかなかった。


 なお小夏は姫子に対して特別な感情は、もう持ち合わせていない。

 姫子の裏の顔を知ってしまった上に、その中学生らしからぬ言動に憧れが砕かれてしまったからだ。

 今では親しい友達であり、魔法少女の仲間であるという感情が強くなっているようだ。


 姫子の内心を知ってか知らずか、小夏は親しい友達として気軽にこうして抱きつく。


「ふー……、ふー……」 


 姫子にとって、魔力は三大欲求の二つを満たしてくれる重要な欲望対象である。

 薄着のスコラリス・クレキストが、無邪気に抱きついてくるこの状況。

 有名パティシエの作った見目麗しいケーキの数々が、「食べ放題ですよ」と性的アピールをしてくるのも同然だった。


 ……性的アピールしてくるケーキとは、どういうケーキなのだろうか?


 それはともかく。


 クールな顔をしている姫子の鼻息が荒くなり、怪しく震える手をスコラリス・クレキストの臀部に伸ばす……が、届く前に邪魔が入った。


「ボクとしては小言を言いたいところだけどね」


 テーブルの上で毛繕いしていたミンチルが、姫子の状況も知らずに意見を述べた。

 姫子は慌てて伸ばしていた手を引っ込める。


「二人とも。これからも気をつけてね。変身中、お互いを名前で呼んだら大惨事だ。認識阻害が効いているとはいえ、漏れた情報が増えるごとにその効果が薄れていくから」


 ミンチルの言い分に、素直に頭を下げる小夏。

 だが、すぐに話題を変えて矛先を逸らす。


「ところで姫子ちゃん。アンミ・マジュスって子。魔女って言ってたけど、なにか知ってる?」


「……いえ、知りません。魔女であるのは確かでしょうが、彼女については知らないですね」


「そうだよね〜。外国人ぽかったし。日本語は上手だったなぁ〜」


 人種はわからないが、アンミ・マジュスは確実に魔女である。


「魔法少女ってことは……ないよね」


「ないね。ボクの認証なしに魔法少女になることはできない」


 スコラリス・クレキストの疑問をミンチルは否定する。

 

「魔女は自力でシステムロックを外した存在だけど、魔法少女はボクたちの世界の理でロックを解除して、ボクたちの世界の技術で魔法を使う。ボクと同質の鍵で変身しない限り、魔法少女じゃないよ」


 電子機器で例えるならば、魔女は|オペレーションシステム《OS》しか入っていないパソコンで、あれこれ開発環境を整えソフトやアプリを自分で作り上げた状態。

 魔法少女は前もって多数の便利なアプリがプリインストールされた高性能スマートフォンを、ポンと渡された状態だとミンチルは説明した。


 ……なおミンチルは「ボクたちの世界の理でロックを解除」と説明しているが、それは間違いである。

 実際は裏からディスキプリーナが解除しているだけで、ミンチルは端末に過ぎない。

 プリインストールされている魔法も、ディスキプリーナが購入したり作ったりしたものだ。

 悲しいことに精密な造物であるミンチルは、それを知らず気が付くこともできないだろう。


「ほえ〜。姫子ちゃんすごいな〜」


 スコラリス・クレキストは、姫子が自分で魔法を作り上げていると聞いて素直に感心した。


「まあ、私は前もって先達と資料がありましたから」


 姫子を妬み、呪いをかけた少女。

 真庭麻美。

 彼女の知識と集めた資料があったため、姫子はシステムロックを外す第一段階と、魔法を組み上げ行使するという第二段階を踏むことができた。

 真庭麻美は、いまでこそ姫子の取り巻きではあるが、もとは敵であり、そして師でもあると言える。

 

「そういえば姫子ちゃん。真庭ちゃんって、魔女なの?」

「魔女未満ですね。確かに呪いらしき魔法は発動してましたが」


 システムロックは外れていないが、触媒や呪具を使ってかろうじて魔法を使っている状態だという。

 

「呪具?」

「昔の魔法使いや魔女たちが、作っておいた魔法の道具みたいなものですね。使い方と本人の魔力次第で使えます」

「へ〜。そういうのがあったら、私たちもパワーアップってならないかな?」


 スコラリス・クレキストの素朴な疑問に、姫子は肩を落として答える。


「どうでしょう? 物によりますし、なにより珍しくて手に入りにくいから難しいかと。私も探したことがありますが、見つかってません……」


 ──ふと、姫子は考え込む。


「アンミ・マジュス……。私と同じように、魔法を手に入れたのか……それとも」


「何か気がついたの? 姫子ちゃん」


「一つ、思い当たる可能性がありますので、調べてみましょう……と、その前におかわりを」


 シリアスはどこへやら。

 姫子はマジックキッチンのマジックオーブンから、ベイクドチーズケーキを取り出して頬張り始めた。

 

 

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― 新着の感想 ―
あぁっ・・・ 良いですね。 姫子ちゃんさんのユリユリ狂い咲きな一方通行。 それはさておき、謎の魔女はやはりあの子でしたね。 今回は何気に裏設定が滲み出て来て、これからも楽しみです。
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