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第8話 冒険者への資格

聞こえてくる鐘の音で小夜は目覚めた。


ベッドから起き上がるとボサボサの髪を掻きながら


「やば…遅刻」


習慣になっていたスマホのアラームをかけ忘れていたことに今気付く。しかしふと違和感を感じて周りを見渡す。


いつもの部屋にしては大きすぎるし、窓も格子状になっておりその窓1枚だけで外の様子がくっきりとわかるほどに景観が良かった。

 そして今寝ているベッドにも見覚えがなく彼女の身には余りあるほどの大きさ。

 着ている服もとても肌触りが良く二度寝にはもってこいの着心地の白の薄着である。

小夜は段々と昨日から異世界の住民になっていたことを思い出す。


「ふぁ、そうだ…日本じゃないんだ…じゃあまだ寝てても大丈夫だよね」


「…おやすみ」


そう納得すると小夜は後ろの重力に身を任せ沈んでいく。


「おはようございます。小夜様」


隣に青髪のメイドさんがジト目でこっちをみつめていた。


「うわあ!!びっくりしたあ」


それは昨日小夜が風呂に入っていた時に天井に現れたお世話係の人だった。

 昨日は湯気でよく見えなかったが高身長で淡々と喋るこの特徴からして間違いなかった。

 小夜は再びベッドから跳ねるように起きると、ベッドの上で何故か正座の体勢で彼女を見る。


「昨日はよく眠れましたか?昨日の夜グエン様からお伝えになったとは思いますが、本日から私が小夜様の指導を務めさせて頂きます」


小夜はとても嫌な顔をして昨日のことを思い返した。


前日 食後移動中


「いやぁ美味しかった」


けぷという小さな音を出した小夜は満足そうであった。      今日からここでしばらく寝泊まりすることになった小夜は云われるままに客室へとグエンに案内され夜の廊下を歩いていた。


窓から反射する月の光とグエンが持っているランタンの明かりが煌々と廊下を照らし、小夜とグエンの足音がこだましていた。


「すまないが小夜殿には明日からこの世界で生き抜くための最低限の知識と戦闘技術を積んでもらう」


「へ?冒険者になって原因を突き止めにいくんじゃないんですか?」


聞いていた話しと違う内容に小夜は頭にクエッションマークを浮かべてグエンに問う。

 それにグエンはランタンに照らされたキラキラの笑顔を彼女に向ける。


「勿論、それに偽りはないよ。ただこの世界の外に出るってことはそれ相応の準備がいるんだ」


「準備?」


「うん。国の中は防壁や警備兵が安全を保証してくれるるけど外ではそうはいかない。魔物はいるし、思わぬ事故だって起こる。だから自分の身は自分で守らなきゃいけないんだ」


グエンは外の危険性を小夜に伝えた。


「そんなに、危険なところならなんで私が行く必要があるんですかぁ」


彼女は青ざめていた。


「大丈夫!もちろん僕も同行するし、そうならないように明日から専属のメイドもつけるから」


答えになってない解答の上更に突拍子もないことをいうグエン。


「メ、メイド?」


「明日からの君のコーチさ。よく学んでおいで。それに冒険者になるには(ギルド実力承認試験)があるから避けては通れないよ」


小夜は次から次へと追加される課題に頭がパンクしそうになっていた。


「え、えっとつまり明日から勉強して、冒険者になる試験に受かってやっと街から出られて自分の身は自分で守ると」


おそるおそる彼女が尋ねると、グエンは


「理解が早くて助かるよ」と云った。


そして部屋の前に就くとグエンはズボンから鍵を取り出すと小夜に渡し、うなだれながらそれを受け取る。


「では、小夜殿改めて宜しく頼むよ。」


そうゆうと手を差し出した。彼女は恐る恐るといった感じで握手をすると


「よ、宜しくお願いします。ブライトさん」


あまり云われ慣れないのかグエンは目を丸くする。


「その名前で僕を呼ぶのはめずらしいね」


彼は握っていた手を離すと小夜が恥ずかしそうに口を開く


「…すみません…横文字で覚えづらくって元の世界で飼ってる犬の名前がブライトで…はは」


「僕はペットとおなじと」


相変わらず笑顔のままだがそれがまた恐ろしい。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「ブライトかぁ…覚え方やっぱりまずかったかな」


小夜が昨日のことを後悔しているとメイドは無表情のままきょとんとしていた。


「では改めまして、私はアルフォード帝国、戦闘メイドのシルヴィ・イオン・バレンツと申します」


聞き慣れないワードに小夜は困惑する。


「戦闘メイドの…イオンさん?」


「はい、それで問題ありません」


無表情のまま彼女は納得していた。


「では早速特訓に入りましょう」


その言葉を聞き小夜はげんなりしながら重い腰をあげていた。


「と、その前に朝ごはんにしましょう。支度は一階にて既に整ってーーー」


すると小夜は既に部屋から消えていた。


「……流石です。グエン様、効果てきめんですね…下着のまま、いってしまいましたが…」



それから、戦闘メイドシルヴィの特訓が始まった。



 基礎魔法の方はどうにかなったのだが、勉学の方に難があった。元いた世界の時から物覚えはよくなかったがここは異世界、全ての常識が通用しない。それにシルヴィはスパルタだった。

 分厚い本を重ね、それを読むまで食事は抜きになった。渡された通貨で値下げ交渉して紙に書かれた物が予算以内に抑えられなければ食事抜きになった。

 シルヴィと組手をして一発入れられないと食事抜きになった。


そして約三ヶ月が過ぎた。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


アルフォード城中庭



スキルー肉体強化ー 巡 (めぐり)


シルヴィの身体を一瞬白く光が包み込むと50メートル程先の小夜に走り出す。

小夜もシルヴィに習い<巡>を使用しシルヴィと衝突するように駆ける。


バチィッッッ!!


弾ける音ともに二人は後方に弾かれる。その瞬間大気が震え草木が揺れる。両者が地に足をつけた直後、再び距離をつめ射程距離に入る。

 小夜が先手で右手を鋭く突き刺すようにシルヴィの中心部を狙う。 

 シルヴィはそれをパリィするように左手で弾き小夜の体勢を無防備にする。すかさずシルヴィの強烈な右足の蹴りが入る。


スキルー肉体強化ー 硬 (こう)


心のなかでそう唱えると小夜は両腕を前に出しシルヴィの蹴りを受ける。


ガンッッッッ!!


鈍い金属音が鳴り響きその衝撃で小夜は7メートルほど後ろに吹き飛ぶ


「いったぁー」


小夜が少し赤くなった両手をぶんぶんと振っているとシルヴィが一気に詰め追撃を行う。


「やばッッッ…」


完全に遅れをとった小夜は応戦を諦め回避に徹した。


スキルー肉体強化ー 見心 (みしん)


小夜の眼光が白く光り、1秒間に10発は下らないシルヴィの猛襲をいなしながら回避する。

 そしてシルヴィが地面を強く蹴ると、地面が揺れ小夜がよろける。


「うわっッッッ!!」


「終わりです」


そしてシルヴィは構えると鋭い突きを小夜に繰り出す。

そして彼女は派手に吹き飛んだ。

 それは中庭の城壁にぶち当たり、壁が半壊するほどだった。そして砂ぼこりが舞い2人の姿は消えた。


決着はつき、それを遠くから観覧していた数人の近衛兵が口を開いた。


「あちゃあ、派手にやったなシルヴィ様」


「いくら転移者といえどあれ大丈夫なのか?」


あまりにもの豪快な一撃に心配を余儀なくされる。

 同じく国王陛下とグエンもその様子を目視していた。

だが2人は揃って口を手にやり驚いた表情で押し黙っていた。


砂煙が消えると立っていたのは小夜、半壊した壁で座り込んでいるのはシルヴィであった。


「エエエエエエ!!!」


近衛兵は何が起こったのか分からず動揺していた。

小夜は息切れしながらフラフラの足でシルヴィのほうを見つめていた。

あの瞬間小夜は突きを躱し瞬時にシルヴィの背後を取り、逆にシルヴィを城壁へ吹き飛ばしていた。

そして押し黙っていた国王陛下かが口を開いた。


「どうだグエン、お前なら今の一撃反応できたか?」


国王陛下がグエンを試すように聞いた。するとグエンはいつものようにキラキラした爽やかな笑顔で答えた。


「んーどうでしょう」


吹き飛ばされたシルヴィはしばらく目を閉じたままだったが、しばらくするとすっと立ち上がり


「合格です」とひと言


それを聞いた小夜はその場で脱力する。


「ふにゃああ、お腹すいたあ」


そしてギルド実力試験は目前に迫っていた。




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