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第8.5話 命の天秤 グエンと小夜 上

グエンはある時、シルヴィに部屋から引っ張り出されてつれていかれる小夜を見かけた。


「あっ…ブライトさん!!助けてぐださいッッッ!!!イオンさんったら今から城下町10周とかわけのわからないことゆうんですよ!?」


必死に抵抗する小夜にシルヴィは淡々とした口調で


「小夜様は基礎体力が貧弱過ぎます。それでは魔法強化を使った徒手格闘ではすぐにバテてしまいます。私も同行致しますので一緒に走りましょう」


「無理だっでぇぇぇぇぇぇ!!死ぬう!!死んじゃうよぉぉぉぉ!!」


泣きながら壁にしがみつく小夜にグエンはキラキラした笑顔で彼女の掴んだ手を1本、また1本と剥がしていく。


「!?なんでっ!?どうして!?」


驚いた小夜がグエンを泣きながら見つめる。


「小夜殿、これも世界を救うためなんだ。シルヴィや僕だって泣きながら壁にしがみついてまで嫌がる女の子に無理強いはしたくないさ」


そして片手が離れる。


「や、やぁぁぁ!!鬼ぃ!!2人とも鬼ぃッッッ!!」


どこにそんな力があるのか何とか最後の片腕で必死に抵抗する小夜に対してグエンがトドメを刺した。


「あっ…もちろんこれやらないとご飯抜きだからね!!僕、城でも偉いほうだから料理長に、今日の晩ご飯は小夜殿抜きの材料配分でってゆっとこー!!」


すると小夜の瞳から更に涙が大粒のように流れる。


「ひ、ひどいよぉぉ、ブライトさん…そんなセリフ!ご飯抜きなんて…お父さんにも云われたことないのに!!」


そして小夜の手がぱっと離れ、足が地につく。


「…ブライトさん、料理長にゆっといて…今日の私の材料配分は、いつもの3倍にしといて…ってね」


小夜はグエンをきっと睨むと通常の三倍程のスピードで駆けていった。


そして振り返ったシルヴィがジト目でこちらに親指を立てると小夜に追いつくため駆け出した。


グエンは笑顔のまま二人の背を見送った。


(いつもの3倍かぁ…臨時で誰か雇おうか…)


その夜グエンは自室で小夜のことを改めて考えていた。


(小夜殿が王城に来てから暫く経ったが、果たしてこのまま上手くいくのだろうか?特訓のことはシルヴィに任せっきりになっているが正直不安で仕方がない)


 (シルヴィは確かに優秀な指導者だ。それは間違いないが彼女は元々手違いでこの地に召喚された者だ)


 (正直王城で、一度見ただけで魔法が使えていたことには驚いたがそれだけで判断するのはいささか不安が残る。

 少し彼女について探ろう。そしてやはり相応しくないと感じたら父さんに云って一刻も早く彼女を元の世界へ返して本当の転移者を召喚しよう)


グエンは転移者とはいえまだ半ば彼女を信じられずにいた。そして自分の目で確かめようと小夜とちゃんと話し合いの場を設けることにした…


翌朝 小夜の部屋


グエンは小夜の部屋をノックする。

 

「どうぞー」


「失礼するよ。昨日はよく眠れたかい?」


いきなりキラキラしたのが入ってきた。


「あっ…私からご飯を取り上げた人だ」


「結局、城下町10周走りきったそうじゃないか。取り上げてはいないよ」


あからさまに機嫌が悪い小夜をまずは何とか静めようとするグエン。


「まあでもさすがにいつもの3倍はやり過ぎだよ。それってウチの兵士50人分くらいと一緒だからね。約束だから一応作るように云っといたけど、食材が無駄になるから今後こういうことはしないようにね」


「へ?食べましたけど?」


          え?


「こっちは、城下町10周走りきったんですよ!!そりゃあもちろんその分カロリーも消費したわけですから!!」


(カロリーの消費と補給の差が見合っていない)


あまりの情報量に唖然とするグエンだったが本題に持っていく。


「今日は予定は空いてるかい?」


「…はい、今日は休みで特に用事はないですけど何かあるんですか?」


それを聞いて彼はまた微笑みながら答える。


「もしよければ僕の買い物に付き合ってくれないかな?」


「?いいですけど…なんで私?」


「決まり!!じゃあ支度できたら入口に集合!」


そうゆうとグエンは部屋を出ていってしまった。


「変なの」


城下町 〜中央区〜



グエンはいつもの仰々しい鎧ではなく、Yシャツに黒い長ズボンとシンプルながらに気品を感じさせる服装でその完璧な着こなしにより先程から黄色い声が注がれている。

 一方小夜も白いシャツに青いタイを施し腰から膝にかけての黒いスカートを身に纏い普段の大食いからは想像できないような上流階級の雰囲気が漂っており、男達の目を引いている。

 まだ昼前だというのに既に中央広場にはかなりの人数が集まってきております気おつけないとはぐれる程だった。


「ところで買い物ってなんなんですか?」


グエンより背が小さい彼女は彼を覗き込むように尋ねる。


「いつも愛用している革の手袋があるんだけど大分傷んできたから新調しようと思ってね」


「…なんというか…意外と普通ですね…」


「君は僕をいつもどういう目で見てるんだい…僕だってまだ21だもの。それ相応の趣味もあるさ」


小夜はコクコクと頷く。


「まあ装飾品で身につけているというのもあるけどやっぱりこういう非番の時などは無防備だからね。いつ襲われてもいいように準備はしとかないと」



「ああ、革の手袋があったら獲物も握りやすいし皮も剥けないし、それに手は結構返り血が付くからね。そういう機能性もあるんだ」


そうして作られる笑顔は今は台無しである。


(なにも普通じゃなかった…改めて思うけどやっぱりこの人変わってるなあ…)


確かにグエンは、スペックも家柄も人望も人柄もパラメータは最高水準なのだが、こういうナチュラルなところが結構終わっているのでグエンを知っている人は皆こう呼んでいる。  残念イケメンと


そんな噂が立っていることなど露知れず、グエンは、また目の前の人間を若干引かせていた。


 そして暫く歩いた後二人はグエンの行きつけだという店に到着した。

 店は露店ではなくちゃんとした建物として経営してあり、看板にはこの世界の文字で店名が記されていた。


 「よ じ げ ん ぽ け っ と?」


まだつたないが読み書きを覚えた小夜はカタコトで読み上げた。


「おっ!正解」


なんだか聞き覚えのあるフレーズだったがグエンが先に扉を開け、それに続いて小夜も入店する。


 中に入ると少し薄暗く、全体が木造りの構造になっており、大きな樽がいくつも積み重なっており数台の長方形のテーブルに無数の装飾品が並べられていた。

 壁にも展示用の防具や、槍、剣、弓矢、モーニングスターまで飾ってある。

 その奥で店主とおぼしき人が店番をしていた。


「どうも、お久しぶりです」


グエンが声をかけると店主がニコッと微笑む。


「いらっしゃい。あれ?今日はお友達も一緒?めずらしいね」


その人は、収納ポケットが多い緑の作業着を履いており、上は白のシャツ1枚でぼさついた白い髪を肩まで伸ばしている。

 顔には大きな古傷が頬についてあり、服や身体も所々汚れていた。


「あ、どうもこんにちは……女の…人」


小夜の頭では店の佇まいから完全に男の人のイメージがついておりかなりのギャップを感じている。


「はい、こんにちは。ねえグエン君〜彼女さん?」


背を低くしテーブルに両腕を落としながら店主はいたずらげな表情で語りかけてくる。元々シャツ1枚というのもあるがテーブルと密着し胸が強調される。

 女の子である小夜でさえその光景は妖艶に映り顔を赤らめるがグエンは普段の営業スマイルで店主のからかいをなんなく退ける。


「残念ですが…」


そしてグエンは笑顔で否定すると小夜を改めて紹介した。


「こちらは冷煎小夜殿、理由あって王城で預かることになって暫くここで滞在しているんだ」


慌てて小夜もお辞儀する。


「よ、よろしくお願いします」


すると店主は姿勢を戻し腰に手を当てて口を開く。


「よろしくね、小夜ちゃん。私は、ミュゼ・ハルト・ブルーネってゆうんだ。よろしくね。うちは見ての通り、冒険に役立つもん色々置いてるからさ。いっぱい見てってよ」


軽い自己紹介を済まし、グエンは早速奥に置いてある手袋の選別を始める。

 小夜はというと別段目的もなく無数にある品物を眺めていた。

 するとミュゼがちょいちょいとこちらに手招きしてきたので小夜は向かった。

 するとミュゼはグエンに聞こえない程度のボリュームで小夜に語りかける。


「ね?ぶっちゃけグエン君とはどういう関係?」


「どういう…うーん」


(友達でもないし、職場の上司?とも違うしなぁ)


小夜が返答に困りうんうんと唸っていると


「あれ?結構複雑な関係だったりする?愛人とか!?」


「あ、愛!?…違いますよ!!」


ミュゼの唐突な発言に小夜は少し赤面し全力で否定する。


「ふ~ん」


ニヤニヤとした表情で小夜を見つめる。


「まあ、グエン君は変わってるし、そうゆうとこ鈍感そうだけど将来有望だからアリじゃない!」


ミュゼがビシッと指を立てた。


「私、年収で男選びませんから!!」


そうしてしばらくミュゼにからかわれた後、グエンの買い物も終わり、外に出る。

 すると上から1枚の白い羽根が落ちてきた。


 「ん?」

 

 小夜は空を見ると青空一面に大きな白い翼の鳥類が羽ばたいているのがわかった。

 街の住民もしきりに空を見上げその神秘さに感動している。それは元の世界では決して見ることのできない光景だった。


「わぁ…すご」


小夜は大きく口を開けたまましばらくその場で景色をみていた。


グエンは優しい笑顔のまま空を見上げる彼女を見つめる。


(本当に、裏表のない、いい子だな…本当になんでこんな子が選ばれてしまったのだろう)




時間はちょうど昼頃そろそろ小夜のお腹が空腹の合図を飛ばしてくる時間だと感じたグエンは城下で行きつけの店を案内するため、再び歩き出す。

 彼女の目は当然今日一番キラキラし、両の手を口元に引き寄せると、一体どんな料理なのかと今から妄想が止まらない様子。


「…ねぇブライトさん…さっきいってた、ブァッファローマンモスのヒレ肉って一体どんな味なんですか!?そもそも牛なんですか!?象なんですか!?というより象自体私食べたことないし、マンモスとなるともう元の世界でも絶対食べれない訳でッッ!!それだけで未知の味っていうか…グルメの私にとっては興奮が収まり切らない訳で!!いや…でも…やっぱり云わないで下さい!!答えは自分の舌で得るものですからッッッ!!」


フンフンと象のように鼻を鳴らす小夜にグエンは笑顔でただじっと聞いていた。


(お金足りるかな?)



 すると二人の前を小型の地竜が2体手綱を引かれ大きな檻を運んでいた。

 檻の中には手枷をされ黒いフードを深く被った人が輸送されていた。周りの兵士たち数人が通行規制をかけながら道を開いている。


「ブライトさん、あれって…」


小夜はその異様な光景をグエンに尋ねる。

 グエンは真顔で答える。


「あの身なりと数から察するにおそらく敵国のスパイだよ」


「敵国!?この国ってどこかと戦争でもしてるんですか?」


その問いにグエンは首を横に振る。


「いや、していないよ。表上はね、でも、僕達の国を全員が全員いいような目で見てくれるとは限らない。光があるように必ず影はあるんだ」


その言葉に小夜の胸はチクッと痛む。確かにそれは元の世界においても例外ではないからだ。


「あの人達、何をしたんですか?」


「罪状は分からないけど、不法入国は今は重罪だ。良くて禁固15年、最悪死罪もありえる」


「…そんな、不法入国だけでそんなに…」


数分前の小夜とは一転し悲しげな表情に変わる。


「いや…そうもいってられない。もしもこれでこの国の偉い人…つまり国王陛下が人質に取られれば僕達はもう逆らえられない…その国の云う通りに従うしかないんだ…そうなったらもう何も護れない」


国の存亡はたった一人の生殺与奪で全てが決まる。それをグエンは小夜に教えた。この世界の現実を


そして2人は道を開けると通り過ぎていく竜車をただ見ているだけしかできなかった。街の民衆も無言でそれをじっと見つめている。


2人はここで自分達がすることは何もないと悟り、背を向けた。 次の瞬間だったー


ヒュン


グォォォォォ


2人は急いで振り返ると、1体の地竜が多量の血を流しその場に伏せていた。もう1体の地竜も興奮し、暴れだす。

 そしてその衝撃で操縦していた騎手は投げ飛ばされ完全に制御を失った。

 檻は左右に揺れ動き地竜は留まることなく暴れる。

 

周りの人々をなぎ倒しながらー


グシャ!! 


ベチャ!!


バキ!!


周りは一瞬で血の海へと化した。


「あ……あ」


小夜は目を見開き目の前の状況に理解できずにいた。


「まずい!!」


グエンは小夜の手を強く握るとすぐに近くから離れる。


途端に


「う、うわぁぁぁぁぁ!!!」 


ところ狭しと溢れかえった民衆達が一気に駆け出す。

 

勿論、無事ではすまない。


 人を押し倒し、踏みつぶし二次災害が広がる。


「痛ッッッ!!」


「やめ…て!!!」


「…ごふっ」


それを食い止めるように空から次の一矢が放たれる。


「武技…集焦爆散」


ー集焦爆散ー


放たれた矢は逃げ惑う民衆の巣の中に消える。


そして数秒後ー


ズオォォン!!!


爆散した。


大地を震わす衝撃と風圧、砂煙それに混じり色々なものも離れ千切れていった。 目、左足、右腕、内臓、腸



グエンの咄嗟の判断で2人は近くの路地裏に逃げ込んでいた。


「…あ…あの…さっきの爆発は」


小夜はガチガチと震え、瞼の奥は濡れていた。


「いいかい?君はここにいるんだ…僕がいいと云うまで出てきちゃ駄目だ!いいね」


そうゆうと彼は有無を云わさずその場から駆け出す。


「ブ、ブライトさん!?」


(怖い…嫌だ…なんでこんなことに…死にたくない…)


小夜は自分の両肩を寄せ合うとその場に崩れる。


 中央広場では既に深刻な被害と惨状になっており、次の一矢が放たれる。


初級魔法 ウインドアロー


風を纏った矢先は檻を切り裂いた。

 そして手枷を付けた黒いフードの男達が口元の口角を上げわらわらと出てくる。

 それを食い止めようと兵士達が己の剣を抜き応戦するが、それを待っていたかのように、一人の手枷男が前に飛び出す。


「へあっ!!」


そして兵士の一閃をなんなく見切るとかわりに手枷だけを突き出し、切り落とした。


「はああ…楽になったわ」


そうゆうと男は兵士を蹴り飛ばし剣を奪って容赦なく串刺しにする。


「ぐはっ!!」


即死だった。


兵士の流れる血流を眺めながら男は舌なめずりをした後、首だけを動かし固まって動けない民衆を見る。


「あ、ああ、うわぁぁぁぁぁ!!!?」


それを皮切りにまた民衆達が一斉に駆け出す。


「逃さねぇよ」


それを見ていた黒いフードの男が再び矢を放つ


ー集焦爆散ー


それは一直線に民衆に飛び込む…はずだった…


 パシッ


「は?」


矢を放った男が呆気にとられる。


 矢が空中で止まっている。いや掴まれていた。


その金色髪の碧眼は鋭い形相で男を睨むと口を開く。


「返すぞ」


そして掴んだ片手を軽く振るとこっちに向かって飛んでくる。


「ちょ…まっーー」


ズオォォン!!!


グエンは地上に着地すると、上にまだ何人かの気配を察知した。


「…また上からやられると厄介だな」



「グエン隊長!!」


周りの兵士達が声をかける。


「僕は上を叩くッッッ!!君達は牢の罪人を!!」


そしてグエンはその場から消える。


そして兵士達はグエンの指示通り行動を開始する。


「罪人は切り捨てて構わんッッッ!!民衆にこれ以上被害を出させるなッッッ!!!」


そして兵士達は投げ出された牢に向け走り出す。

 しかし先程自由の身になった黒いフードの男が持っていた剣で他の仲間を既に解放していた。


ガシャン!!


「これで最後の一人かぁ…さて」


そして男は口笛を刻みながら向かってくる数人の兵士に片手を伸ばし放つ。


中級魔法 ヘルファイアブロー



放たれた数千度の直線の熱は瞬時に数人の兵士を鎧ごと燃焼した。

 一人だけ、即死を免れた兵士が火だるまになりながら悶えていた。


「熱ィ!!嫌だ!!助けてッッッ!!私には妻と娘がぁ!!」


ゴロゴロと転がる兵士を火を放った男が近づくと、持っていた剣で一突きする。


「はい、おつかれ。娘さんと嫁さんも後でそっちいくから先にいってて」


そして燃えながら動かなくなった兵士を周りの男達が腹を抱えて笑った。


「ギャハハハハハ!!!」


民衆はほとんどその場から立ち去っておりそれをずっと小夜は物陰から見ているしかできなかった。


「…ひ…ひどい…ぐすっ…どうして…あんなことが…平気で…できるの…」


元の世界では考えられない光景、惨状に、身体が震え目の前で消え去る命を救えなかった自分に憎悪と怒りを覚える。


「なにも…できなかった…見ていることしか…」


小夜は再び路地に身を隠すとハイライトが消えた瞳でとめどなく流れる水滴を拭うこともせず座り込んでいた。


「パパァッッッ!!!」


突然外から少女の泣き叫ぶ声が聞こえ小夜が慌てて路地から顔を出す。

 そこには推定5.6歳ほどの少女が先程の騒動から逃げ遅れ足を挫いて倒れていた。

 するとその声を聞きつけた先程の黒いフードの男達がふらふらと歩み寄ってくる。


「おやぁ…お嬢ちゃん、お父さんやお母さんは?もしかして先に逃げちゃった?酷いなぁ」


「…ひっ」


少女は剣を持ってふらふらと歩いてくる男に恐怖している。

 

「ユナァァ!!!」


突然中年の男が走り寄りその子に覆い被さる。


「…パパ」


路地裏から覗いていた小夜が声をあげる。


「…嘘」


パパと呼ばれたその男は小夜が始めてこの世界に来た時に遭ったパンを彼女に与えてくれたおっちゃんだった。


「あら、お父様ですかぁ?よかったねユナちゃん、パパ戻ってきたよ」


フードの男は歩みを止めない。


「頼む、殺すなら俺をやれッッッ!!けどユナはユナだけは助けてぐれぇ!!」


そうゆうとフードの男はため息をつく。


「はあ?駄目に決まってんじゃん。仲良く逝かしてやるのが俺の優しさだろ?人の好意は素直にうけとらねぇと…」


その言葉におっちゃんは絶望した。


「嫌だッッッ!!嫌だぁぁぁぁ!!!」


おっちゃんは娘を更に強く引き寄せた。


そして男が片手を広げ地べたの2人に向ける。


そして手の内から火が灯る。


「じゃあ…バイバイ…お二人さん」


ボウッ!!


フードの男のスレスレを火の玉が通過した。


「あ?」


男は火の玉の方向に首を向けると、一人の少女が泣きながら飛び出し、おっちゃんとユナを背に立つ。


「次は…当てる」


「あんたは、あん時の嬢ちゃん?」


おっちゃんは首をこちらに向けると自分を護る背中を確認した。


「はぁ?お前、何?」


男は水を刺されたことに苛立ち交じりの口調で話す。


「まさか…お前俺に勝つつもりでいんのか…そんな震えた身体で」


小夜は顔を涙でぐしゃぐしゃにしながらも構えを解かず男に手をかざす。


男は髪をガリガリと描きながら吐き捨てる。


「はぁ…もういいやお前らまとめて死ねや」


すると男は再び片手を広げ手の内に火を灯す。


中級魔法 ヘルファイアブロー


(…やるしかない…今ここで私が逃げたらこの人達は助からない…罪もない人達が一方的に殺されるなんてそんなの駄目だ)


そして覚悟を決めた小夜も唱える。今唯一使える技を


火 初級魔法 ブレイズショット


それをみた男が笑い出す。


「お前、ばっかじゃねぇの!!?何格好つけて出てきて死にに来てんだよ!!そういうヤツ一番イライラするんだよなぁ…さっさっと消えろやァ!!」


小夜のマナが更に集まる。王城で放った時の数倍大きな力がー


(全力で打つ)


火 初級魔法 ブレイズショットベルゼ(暴食)


「は?んだよ…それ初級魔法だろッッッ!!ふっざけんなぁぁぁ!!」


そして2人の魔法が衝突し…大気が震え、強い衝撃が空間を揺らす…その瞬間小夜の髪留めが外れ小夜が最後の力を込める…



ゴォォォォォッ…… バクッッッ



…が数倍巨大で歪な炎の小夜がフード男の炎を喰らい尽くす。


「ぁ?ぁぁ、熱ッッッ!?、痛い!?やめ、痛い痛い痛い痛い痛い痛いぃぃぃ!!」


小夜の炎は男を喰らい尽くすかのように燃え盛りそして灰となり消えた。



「…なんだよ…あれ…」


「バケモンだ…逃げろ!!」


残りのフード男達は一斉に逃げ出す。


ザシュ


男達は走りながら首を跳ね落とされ、走りながら血飛沫をあげそして倒れた。


 その先にはグエンがいた。


鋭い碧眼の目は小夜を見つけると急いで駆け出し歩みよる。

 

 

「小夜殿!?いったい何が?」


小夜はボロボロで立ちすくみ後ろには気絶した親子、そして目の前には黒く焦げた地面のみを残していた。


そして小夜は朦朧としながらグエンに首を向け一言


「わたし…人を…殺しちゃった…」


大粒の涙を流しながら苦笑いをグエンに向けるとその場に崩れ、小夜の意識はここで途切れた。

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