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第9話 ギルド実力承認試験前夜

ギルド実力試験前日 王城食堂にて


 もぐもぐもぐもぐもぐもぐ

  

数千人は収容できるかと思われる規模の食堂、壁には国のシンボルや、近衛兵達の壁画が描かれ、ずらっと並べられたロウソクの明かりが辺りを照らしている。

 片側50メートルを超える長机に近衛兵が間隔を開けて食事を取っているが全体を見ても200人もいない状態だった。確かに時間をずらし食事を取る者もいるであろうが今はちょうど食事時、割に合わない。

 そんな違和感を覚えながら広い机を存分に利用し小夜が食事をとっていると、シルヴィがやってきた。


「小夜様、お食事中失礼致します。少々お時間よろしいでしょうか?」


ちょうど最後の食材を口に頬張っていた小夜はそれを噛み砕き胃に放り込むと口を開いた。


「あっお疲れ様です。イオンさん!めずらしいですね。こんなところで。どうしたんですか?」


少し歳は上だが、同性ということもあり、小夜の師匠であり常識人で何でもそつなくこなすシルヴィは元々友達作りは得意な小夜にとって3ヶ月あれば友好関係を気づくのは造作もなかった。


だがシルヴィは遭った時から何も変わらずジト目で淡々と話す。


「はい、明日はいよいよギルド承認実力試験です。試験場までは私が引率しますが、実力試験は小夜様お一人の力で合格しなければなりません。ですので万全の準備で明日は臨まれてください」


そうシルヴィから聞かされると現実味を帯びてきた小夜は青くなる。


「…はは…私、大丈夫かなぁ。試験とかそういうの向こうの世界でもいい思い出なくて」


「今年はマナ災害の影響もあってか例年より試験の難易度も上がっていると耳にしています」


「ねぇ!なんでそんな不安になることゆうのかなぁ!?」


小夜が涙目になりながら怒り出すがシルヴィは表情を変えることなく答える。


「大丈夫です。万が一も小夜様が不合格になることはありません」


「…その自身はどこから」


小夜が苦笑いでシルヴィをなだめていると、ふとまわりが気になり辺りを見回す。

辺りは疲れ果てた近衛兵がまばらで食事を取っている。本来ならもっと食事は楽しくあるべきと思う彼女にとって、その光景は異常だった。


「あの、いつもはもっと活気があるもんなんですか?」


すると少し周りを見回した彼女は


「ええ。本来ならうるさすぎて私はここに来たくありません」



 このハイカカオット城はその規模からも分かる通り城下町兵、3万人、近衛兵2500人とかなりの規模である。もちろんその人数全てが国に留まる訳ではなく、周辺の村の警備、支部、他国の応援などで現在アルフォード王国ではその4分の1ほどしか在籍していない。

 更に国の長を護る直属の近衛兵と認められた兵はその10分の1程度である。

 本来は近衛騎士団10部隊はハイカカオットを基盤とし活動しているが現在は半数以上が先のマナ災害のため各地で指揮を取っている状態でグエン隊長を除いて他の隊長は出払っている。

 そのため本来数千人規模の食堂内は現在は空きが目立ちその広さを持て余していた。


「みんな辛そうですね」


「マナ災害による、甚大な人手不足のためです。家族を持つ方もたくさんいますが、みんなほとんど帰っておりません。このような精神状態になる方が増えても不思議ではないかと」


いつもと変わらない淡々な説明をするシルヴィだったがその瞳の奥はどこか悲しそうだった。

 小夜は本当に自分なんかがこの役割をになっていいのか?最近になってそう思うことが多くなったが明日の試験にのため余計なことは考えないようにした。


「それにしても、ブライトさんってすごいですよね。他の隊長がみんないないのに、一人でこの城を指揮してるなんて」


話題を変えるため適当な話しを振った。


「ブライト?ああ…グエン様のことですか…あの方なら大丈夫でしょう………この国最強の男ですから」


以外な返答が帰ってきた。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



アルフォード地方 禁足地帯火山噴火口前



辺りは黒煙に包まれ、地面は赤く光り、空は黒く濁りきっており昼か夜かも分からない。

 異常な熱を帯びた空気は、人類の侵入を拒絶していた。


中級魔法 ウォーターサークル(複数)


その灼熱の地を時速80キロは下らぬ地竜に乗った近衛騎士の姿があった。ざっと数は30人弱といったところ。

 彼らの数人が周りを水の結界で囲み、この地の侵入を可能にしていた。

その戦闘を統率していたのが、 


三番隊隊長ミラージュ・コロ・ライアスだった。


彼らはマナ災害の調査に赴いていた。そしてこの禁足地で異常な温度変化を確認し現場に急行しているところだった。


「ミラージュ隊長!!グレン隊長の到着をまった方が」


近衛兵のひとりがそういった。


「馬鹿野郎!!あいつがきたらまた、おいしいところだけ持っていっちまうだろうが!!」


ミラージュはひどく苛ついていた。


「おいしいところですか?」


「ああ、今回のマナ災害は単にマナの濃度だけによる被害だけじゃねぇ。この温度がその証拠だ」


元々ここは禁足地だったが、噴火口が近くにあるという理由だけで閉ざされた地だった。

 しかしマナ災害の後、近づいただけで生物を焼き尽くすほどの地になっていた。


「間違いねぇ、これは生物が起こしたもんだ」


ミラージュのその言葉に近衛兵は驚く。


「…まさか!?…そんな…その仮説が正しければ環境を変えてしまうほどの生物がいることに…」


近衛兵が唾を飲み込む。


「まあ、いってみりゃわかるさ」


ミラージュはニヤリと笑うと目的地の噴火口の頭が灰の陰からうっすらと見えたことに気づき、速度を落とす。


すると突然、けたたましい怒声がこの地を襲った。


オオオオオオオオオオオオ


大気が震え、地が割れる。


「うわあああああああああああ!!??」


近衛兵数人と地竜が割れたマグマの中に溶けていった。


「マズイ!?二手に分かれろ!!すぐに数人で結界を張れ!!」


ミラージュ隊長の指示で隊員は二手に分かれ、そこからは自身と地竜に個々でウォーターサークルを発動する。しかし中級魔法以上の魔法を単独で使用するというのは限りなくマナ消費を必要とするため迅速な対応が余儀なくされた。

 火山は完全に噴火し、溶岩が流れ出してきていた。

そして、黒煙が消え始めそのスキマから巨大な影がちらついた


 赤い黒い毛並みに岩のような硬い鱗が肉体から突起しそこからマグマのような液体が漏れ出ている。

 ゴリラのような顔に象ほどの大きさ。いずれにしても元の世界で該当する生物は見つからない…


「…炎岩獣…」


ミラージュが、そう呟くとその獰猛な獣は勢いをつけ四足歩行で向かってきた。


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