第7話 暴食の晩餐
王城別館 寮内
部屋の中はワンルーム程の広さで二段ベッドの布団が2台並べられている。
その片隅でランタンを机に置き、したためている青年がいた。
彼は先日、日頃の努力の末ついにこのハイカカオット城、給仕担当として住み込みをすることになった。
元々は小さな村出身の彼が都会の刺激を求め14の時に村を飛び出して早4年、ようやく軌道に乗ってきたところだ。
そんな彼は今、一日の業務を終え自分の部屋で村への手紙を書いていた所であった。
(父さん、母さん元気ですか?俺は先日ついにハイカカオット城の給仕担当として王城で、住み込みとして働くこととなりました。この金で少しでも村での生活を楽にして下さい。今度メリルが喜びそうなおもちゃを買って村に帰ろうと思います。そういえばーーーー)
「よし、こんなものか。ふぁ〜明日も早いしそろそろ寝るかぁ」
青年は伸びをしてそろそろ寝ようかと思っていたところ、部屋の扉が強く開かれる。
すると同じ部屋の先輩が額に汗をかきながら走ってきた。
「おい!新入り!!ちょっと手を貸せ」
「どうしたんですか?先輩?今日は来客は来ない日じゃ…」
青年は今日のスケジュールを確認しながら答える。
「それがさっきグエン隊長が急に連れてきた娘がいたんだがそいつが今食堂で飯をくってんだ!」
「グエン隊長が急に女の子を…へぇやっぱあれだけ整ってたらモテるんですね。でも調理場は夜勤担当の2人がいるはずですが?」
「駄目だ…とても手が足りない!!とにかく来てくれ!!」
青年は理解ができないまま先輩の後を追って王城本館の調理場まで向かう。
先輩は扉を開けると、明るく照らされ何人もの腕利きのコックが必死にフライパンを降っていた。
「これは、一体…団体の来客が急に入ったんですか?」
青年が驚きの表情で質問すると先輩が口を開く。
「だから、グエン隊長がつれてきたその女が食ってんだよ…」
先輩が青ざめながら云った。
「え?」
王国大食堂
カチャカチャ
もぐもぐ はむはむ ゴクゴク
30メートルほどの長机に60席ほどの長椅子、天井には燦燦と輝くシャンデリアが辺りを照らしている。周りにはそのどれも1つの価値は家が買えてしまうほどの高級アンティークが並べられ、窓から見える城下の光と街並みが美しい。
普段ならここは王族、貴族などが集まり宴をするところではあるが今宵の客は一人だけだった。
テーブルに並べられた食材はどれも鮮度がよく、国王直属の一流料理人が振る舞う最高の一品ばかりで、生涯口にすることなく死んでいくものがほとんどである。
パクッ
「おいひぃーこのぷりっとしたエビみたいなのおいひいよぉ!!」
もぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐ
まるで回転寿司の皿の如く並べられ消化されていき、ウェイターが次々と料理を運んでくる。
その様子をグエンと国王陛下はニコニコしながら見ていた。
「いつまで食べるんだろうね」
「わかりかねます」
小夜は次々と運ばれてくる料理を夢心地のような表情で自分のブラックホールに送る。
先程、半ば強制的に冒険者としてこの国の窮地を救うことになり泣き喚いていた小夜がふと視線を送るとグエンの後ろでダブルピースで小躍りしている国王陛下に再度覚えたてのブレイズショットを放ったところ、やはり笑顔を崩さないグエンにかき消されていた。
そしてもう一発小夜が構えをとった時、国王陛下が口を開いた。
「とりあえず、食事にしようか」
小夜は構えを解き今日出逢って最高の笑顔になった。
この世界のマナは生きるもの全てに宿る。植物にも動物にも、時として物にも、基本的にそのマナを消費して魔法、スキル、武技などに応用される。
無論、魔法を使うということは膨大なエネルギー消費を余儀なくされる。
元々食い意地には自身があった小夜だったがマナという極端に燃費の悪い存在が生まれてしまったことにより小夜の胃袋をブラックホールに変えてしまった。
止む気配のない小夜の終わらない食事にみかねて国王陛下が口を開く。
「小夜君、今から大事な話しをするから食べながらよく聞いてくれ。今のこの世界の現状についてだ」
この世界は五つの大陸に分けられている。
アルフォード大陸
メサイア大陸
シード大陸
リーフ大陸
インビジブル大陸
かつて私達の先祖達が大陸の中心部にその大陸の名と同じ国を作り、それぞれの権力者達が現在国を統治。
各国にはこの世と別の世をつなぐ特殊なマナを持つ神器を所有しており、世界の危機にのみその神器を使い異世界転移を行う。
謎のマナ災害により民衆に被害が出ており今も拡大していること。
今回誤って召喚された小夜は他国に悟られず異世界転移者として現在発生している、マナ災害の原因追求と収束にあたること。
以上
「わかったかね?」
もぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐ
「これっ…おいし!!ホロホロのお肉が口のなかに入れた瞬間トロけるようでそれでいてしつこくない、いくらでも食べられそう!!」
幸せそうに肉を頬張る小夜をみて
「はぁ…やっぱり聞いてないか…グエンまたおいおい話しておいてくれ。私は席を外す」
そういって国王陛下は部屋を後にした。
王室
国王陛下は一日の業務を終え、身体を身軽にするとお気に入りのワインをグラスに注ぎ、窓から映る、城下町を眺める。
すると今日遭った冷煎小夜という少女のことを思い返していた。奇想天外で、表情がコロコロ変わるあの娘のことを
「ふっ…あの娘の世界はとても平和なんだろうな…」
グビッ
「それ故に、小夜君には辛い世界かもしれないな」
国王陛下は窓の外から城壁の更に外の世界を見つめながら眉をひそめた。




