第6話 魔法の世界へようこそ
「まじか…?ミスったわ」
小夜は国王陛下に今日のことを全て話すと少し考え込むような姿勢を見せ、あっ…といった表情を浮かべそう云った。
話しを聞くとこの世界では密かに今のような世界の危機に陥った時、別の世界からこの世界を救う才能を持ったものが召喚されこの世界を幾度となく救って来たという。
今回、小夜はバーガーショップのトイレの扉を介して異世界転移を行なったが、実は向かい側の男子トイレに本来召喚されるはずだった人物(主人公になるはずだった人)がいたが、何らかの手違いでその男が扉渡りをする前に小夜が扉を開け異世界に来てしまったというのは知る由もない。
基本的に異世界転移は他のものが紛れ込まないよう、密室の空間が狙いやすい。だから近くにいた小夜が条件を満たしていたと国王陛下は語った。
(なに…その大規模な誘拐……犯罪じゃん)
基本異世界に来る主人公は大体そうなのだが知識ゼロの女の子である小夜にとってはそれは犯罪と変わらなかったらしい。
「まあ、でも転移?された人が違うんですよね?じゃあ人違いですのでその方に早急に来てもらって、私は早く元いた場所に返して頂きたいです」
当然といわんばかりに発言した小夜を国王は快く承諾した。一時はどうなることかと思ったがなんとかなりそうな雰囲気が生まれ小夜は胸をなで下ろした。
「まあ、でも、ちょっと…せっかく…ねぇ異世界来たんだし…ねぇ…魔法とか使ってみたくない?」
何やら国王陛下が後ろめたいことでもあるのか、この国の魅力を提示し始めた。
「いえ、間に合ってます」
真顔できっぱりと小夜は断ったが彼女の意図とは関係なく、国王陛下は木で作られた人型の的を用意させた。
国王陛下は席を立つと自身の右手を的に向け口を開く
「いや、私は別にそういうのは−−」
小夜の声なんて聞こえていないかのように国王陛下は術式の成り立ちを語り始める。
「魔法とはつまり、この世界のマナ、マナとは生命の源、誰もが持っておりこの世界では生活の便として、あるいは身を、大切なものを護る力として古くから伝えられてきた。」
初級魔法「ブレイズショット」
そう唱えると右手を包み込むように火が巻き上がり的目がけて突き抜ける。
的はパチパチと音を立て燃え盛る。待機していた近衛騎士が燃え盛る的に向かって更に呪文を唱える。
初級魔法 ウォーターフォール
それを唱えると燃え盛る火の上から水が湧き出し火を鎮火する。
それを見ていた小夜は
「ただ知ってる英語を云っただけじゃん…」
異世界の魔法とはそう云うもので基本誰も口を挟まないのがお約束だが小夜に空気を読むとかはできない。
国王陛下は小夜をみつめ、うち、こんなんできますよ!!とゆわんばかりに凛々しい顔でこちらを見ていた。 そして小夜はありったけの笑顔と嬉しそうな声で
「わぁぁ!!すごいですねー!!帰ります!!」
「………………」
何故か国王陛下はすんと黙った。
「え?帰れるんですよね?」
小夜の圧に国王陛下は目を泳がしている。
「帰れないんですか?」
「いや、勿論帰れる…んだけども、やっぱりね…異世界転移ともなるといくら私が国王でも…ね、そんなポイポイ独断で発動できないわけよ。五大国の首王対談とか、失敗しないように上級魔道士とか呼んだり、臨床実験とか何回かしたり、ゲートを開けるための宝具が五大国にそれぞれあってそれを同時発動させてやっと、転移できるのだ。しかも、今回の転移責任者私の国だったから、ね失敗したと知れたら…その色々マズイわけよ…ね情勢的に」
国王陛下は指でモジモジしながら呟く。
「つまり、帰れないと」
小夜が下にうつむく。
「だから小夜君が本当の転移者ということにして、先の事件を解決してくれれば全て丸く収まるんだ!どうだろうか?」
完璧な打開策を見つけたといわんばかりに国王陛下は鼻を鳴らしながら答えた。
「ふ…ふふ…ふふふふふ」
下を俯いていた小夜が急に笑い出す。
「ふざけんなぁぁぁぁァァァァ!!!!!ブレイズショットぉぉぉぉォォォォ!!!!!」
ブチギレた小夜は国王陛下に先程の3倍程の大きさの火球を放った。記念すべき最初の標的はアルフォード王国代17国王陛下になった。この一撃が冷煎小夜、若干17歳の初めての魔法発動になる。
「国王陛下ぁぁぁぁぁぁ!!」
突如の襲撃に慌てて駆け寄る数名の近衛騎士。驚きの余り一名はよろけて転倒を始める。誰一人としてとても間に合う距離ではなかった。1人を除いては
グエンは先程のニコニコ顔から一転、鋭い目つきに変わり、国王陛下との距離約15メートルをわずか0.1秒で埋めた。
そして護身用で持ち歩いていた、短刀を火の玉に振りかざす。
瞬時にとてつもない風圧が火の玉をかき消す。前方にいた小夜も突然の突風に吹き飛ばされそうになる。
本当ならこの部屋ごと丸焦げにする程の熱量をグエンの短刀のおかげで無効となった。
唖然とする傍観者達。短刀をしまったグエンが爽やかな顔で口を開いた。
「小夜殿。国王陛下暗殺で、本当なら死罪も免れない状況だが国王陛下の寛大な御心によって今調査に協力するというのなら不問にするとおっしゃっている。ですよね?父上」
グレンが振り向くと、国王陛下は首を縦に大きく降っていた。
最早小夜に選択肢はなかった。彼女の冒険者としての旅がここよりスタートしたのだった。
「…そんな…う…そ…嫌…嫌ャァァァァァァァァァァァ!!!」
小夜は号泣した。




