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第4話 開かずの間

小夜はグエンと呼ばれていた男に手を引かれ、王城へと向かっていた。街は陽が落ち暗いオレンジ色の空をしていた。先程まで人が溢れかえっていた通りはもぬけの殻で民家には明かりが灯る。外にも等間隔で街灯が設置されており、明かりが灯っていた。

小夜はなぜ初めて会う男が自分を助けてくれたのかそれを疑問に抱き手を引かれるまま、ここまでついてきたがここにきて初めて会話を試みる。


「あのー」


小夜の声にきょとんとした顔で振り向いた青年は「ああ、すまない」と言い繋いでいた手を離す。


「急に連れてきてすまなかったね。国王陛下にすぐに連れてくるようにと云われたもので…急かしてしまった」


青年はキラキラとした輝きをみせニッコリと笑う。


「紹介が遅れた。僕は、アルフォード帝国近衛騎士団、三番隊隊長グエン・ブライト・ナーヴァだ。以後お見知りおきを」


ピシッと斜め45度に背中を曲げ保ったまま右手を前に添えお辞儀をする。まるで絵に描いたような誰がどう見ても無駄がなく完璧な所作だった。

しかし横文字で長い名前を聞かされきっと一度で覚えるのは無理だと悟った小夜は3区切りの一つだけを覚えることにした。


「私は、冷煎小夜です。先程は何故か危ない事になっていた私を助けて頂きありがとうございました」


そう云うと丁寧にお辞儀した。

そして2人の間に風が吹いた。ー2人の長い旅路の始まりを告げるようなそんな風がー


2人は歩きながら王城へ向かう。王城はここから少し離れており少し坂を登った森を抜けたところにある。ここはゆわば城下町のようなものだ。

そうグエンから聞かされるととりあえず行く宛もない小夜は彼と一緒に行くことにした。

流石に彼女も薄々とここが普通の世界ではないことには気付いているようだった。


森を抜けしばらく歩くと、開けた場所に東京ドームが数個は優に入るであろう巨大な城が現れた。

城下にいたときからも既に城が見え隠れし、かなりの大きさというのは分かっていたが近くにいくと、その巨大さに小夜も驚きを隠せないでいた。


「さあ、ついた。ここがアルフォード帝国、ハイカカオット城だ」


先導していたグエンが振り向き答える。


グゥゥゥゥゥ


小夜の腹の音が鳴った。


城の門をくぐり城内へ入ると流石に王の宮殿ということもあってか、王城の見張り、門番など先程の兵士達も屈強ではあったが、こっちはくぐってきた修羅場が違うといったように、顔に深い傷があるものや、眼帯をしているもの、一人一人が城下町の兵士より格上だというのが見てわかる。

近衛兵達はグエンを見かける度に敬礼をし、グエンは一人一人の兵士達に労いの言葉を送っていた。


「あのぅ」


小夜が尋ねる。


「ん?どうしたんだい」


「皆さんとても強そうですね」


「うん、強いよ。多分城下の兵士5人くらいだったら瞬殺だろうね」


相変わらずキラキラした笑顔でえげつないことを云う。


これ以上特に質問することがなかったので小夜は作り笑いを浮かべるとおとなしくグエンについていく。

というよりここまで来るのにそれなりに坂があり今日一日の疲れも蓄積し体力的にも限界だったので喋る元気もあまりなかった。


そして20分後…王の間、前扉にて


「ここが、国王陛下がいる部屋だ。くれぐれも粗相のないように」


そうグエンが振り返ると小夜の姿はなかった。

グエンはキラキラした笑顔で口を開いた。


「あれ?」


国王の間は3階にあったが、小夜はそこに到達するまでの2階から3階の間の間で力尽きていた。


「おい!?あんた大丈夫か?」


城の近衛兵に肩を借りながら彼女は広い階段を引きずるように上がっていた。


「すみ…はぁ…ません…ありがと…はぁ…う…ございます。この…はぁ…階段…はあ…上があ…見えないん…です…はあ…けどぉ」


「大丈夫だあと70段くらいだから!!」


それを聞くなり彼女は静かにその場に倒れた。


「ぜぇ…ぜぇ…私の…ことはいいですから…先にいって…ください…あ…と…で必ず…追いつきま…す…から…」


「いやそれ、よく同僚が云って絶対帰ってこないやつセリフベスト3だから!!!こんなとこで使用するのやめてくれる!!?」


いつの間にか名も知らぬ近衛兵に先にあったはずのグエンより仲良くなっていた小夜であった。


17分後  王の間、扉前


「フンッ!フンッ!フンッ!やあ!遅かったフンッ!じゃあないか?フンッ!一体どうしてフンッ!たんだい?」


待ちくたびれていたグエンがつけていた鎧を脱いで何故か上裸で腕立て伏せをしながらキラキラした汗と顔と笑顔で訪ねてきた。


「ハァ…ヒィ…ここ…広…すぎです…てゆうか…なんで…置いてったん…ゼェ…ですか…ハァ」


グエンとは裏腹に苦しみの表情浮かべた小夜が汗だくでふらふらで立っていた。


「じゃあ達者でなダチ公…あまりグエンさんに迷惑かけんじゃあねぇぞ」


小夜の後ろを先程の近衛兵が去っていった


「ゼェ、はい…ここ…まで、ありがと…お…ござい…ました。またどこかで…はあ…逢いましょう、相棒」


2人は互いに振り向かず別れた。


「フンッ!フンッ!フンッ!随分フンッ!とフンッ!彼と!フンッ!仲良くなったじゃあフンッ!ないか!」


相変わらず笑顔で上体起こしをしながら答えるグエンの姿がそこにはあった。


5分後


小夜の体力回復と筋トレを終了させた2人は王の間に入ろうとしたが門番に汗だくの2人を王に遭わせるのは相応しくないというドレスコードにひっかかり、2人はひとまず城の浴場に行くことになった。




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