表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
30/31

第27話 夜明け


シルヴィは小夜に全てを伝え終えると、念を推すように伝えた。


「小夜様、まずは正式に冒険者としてのご登録おめでとうございます。しかし先程も申し上げた通り、あなたは異世界人、何から狙われるか分かりません。現に今回の敵は我々の予想を遥かに上回る実力を有していました。今後、またいつ狙われるか分かりません。ですから旅を通して仲間とその強さを磨いていって下さい。そうすればきっとこの冒険はあなたにとってかげかえのないものになるはずです」


シルヴィは小夜を優しく笑顔で見つめるとまるでこの先の未来を暗示しているかのように彼女に思いを託す。

 

「旅を通して仲間と…強さを…磨く…」


 おそらく今の彼女にはその言葉の意味は半分も理解できていないだろう。

 しかしその言葉は小夜自身の胸に強く刻まれそして彼女の旅の終わりを告げるその時までシルヴィが小夜に初めて見せたその笑顔と共に彼女の一生の宝物となった…


 それから小夜達は無事に城へと帰還すると、既に真夜中ということもあり城内は静まり返っている。

 そして3人は大広間で解散すると彼女は先程あれだけ寝ていたというのに強い睡魔が襲い自室で泥のように眠った。


この日が冷煎小夜【元現役高校生】若干17歳にとっての冒険者への夜明けとなった。


 数日後



 「小夜様、準備はできましたか?ここへはしばらく戻ってきませんので、お忘れ物のないように」


 シルヴィが部屋の外でいつものように小夜を気にかけている。

 

「はいっ!!バッチリです!」


小夜は自信満々に答えるとできるだけコンパクトにまとめたポーチと大きめのバッグを背負い、先にいってしまったシルヴィに追いつくため急いで部屋を出ようとする。

 

ふと部屋の扉の前で彼女は立ち止まると振り返る。

 

そこには片付いた部屋だけが取り残されていた。


「短い間だったけどありがとう、ちょっとの間留守にするけどまたいつか帰って来た時にはよろしくね」


小夜は少し悲しそうな笑顔でそう呟くと部屋を出て静かに扉を閉める。


ここでシルヴィと出逢い、よく笑ってよく食べて、時には喉が枯れるまで泣き明かして挫折して、でもその度にみんなが小夜を支えてくれた。

 本当にあっという間の時間だったが、小夜にとってはかけがえのない場所になったのだった。


そして部屋はまたいつもの客間に戻ったー


 

 そしてシルヴィと共に城の外へと出ると数百人の近衛兵達が小夜を見送ってくれていた。


「頑張れよ!!」


「風引くなよ!」


「じゃあな!相棒」


 そしてその先には白い顎髭を蓄え、いかにも王族と言わんばかりの男が立っている。


「あっ、王様ぁ!!」


小夜は無邪気に笑顔で手を振る。


すると国王陛下はまるで娘を見送る父のように、云う。


「旅が終わったらいつでも帰っておいで、席は開けておくから…あとお父さんって呼んでもいいよ!」


 軽く衝撃的な発言だったが、ここにいる皆は聞かなかったことにしている。


 そして小夜は城の門の前で振り返ると、ここにいる全ての人達に対して深々と頭を下げた。


「本当にお世話になりました。いってきます」


 すると兵士含め、国王陛下も涙ぐみ見送った。


(小夜くん、国を…この世界を頼んだぞ)



小夜はハイカカオット城にしばしの別れを告げシルヴィと城下町へ続くくだり坂を下りる。


「イオンさん…本当に一緒に来てくれないんですか?」


小夜が寂しそうにシルヴィに尋ねる。


「私も行きたいのは山々ですが私はここで主の身の回り、そして護衛を基本とする一メイドですから…大丈夫です。頼りになる護衛はつけておりますので、戦力的には申し分ないかと」


シルヴィは合理的に淡々と話しながら勝手に納得していた。


「そういうことじゃ…ないんだけどなぁ」


小夜は納得できないまま坂を下ると城下町へ出る。


 少し歩くと中心街に出る。相変わらずここは人が絶えず、いつも賑わい、この国を盛り上げているようだった。


「あれ?小夜ちゃーん」


小夜が振り向くとそこにいたのは、いつかグエンと買い物に出かけた際に立ち寄った「よじげんぽけっと」の店主のミュゼ・ハルト・ブルーネであった


「ハルさん!!おはようございます!」


小夜が大きく手を振って挨拶する。あれから何度かあの店に立ち寄っていた小夜はすっかり顔なじみになっていた。


ガバっ


「ふぐっ!?」


 ミュゼは小夜を見つけるやいなや小夜の頭をほぼ肌着のような服で胸元に吸いつけるように抱きしめる。


「ハル…しゃん…はな…離してっ!…息が…ふう…できないよぅ…」


「なんだよぉー小夜今日十発するんだって?寂しいじゃんかよぉ…また絶対帰ってきなよぉ?」


ギュウウウウ


「わか…わかりしたから!!…離…ひて」


そして何とか窒息する前に離れるとミュゼに別れを告げ正門に向けて歩き出す。


「あっ…ごめんなさい…イオンさん!最後に一つだけ寄り道していいですかね?」


シルヴィはコクリと頷くと、進路を変更し寄り道をする。

 小夜が最後に寄りたかった場所それは…


そう、彼女にとっての始まりの場所であり思い出の場所でもあった…


小夜が店に近づいていくと、露店の脇から、小さな女の子がこちらに向かってやってくる。


「小夜お姉ちゃん!!それとメイドのお姉さん!!」


 少女は小夜に嬉しそうに近づくと彼女は頭を撫でる。

シルヴィはというと、その横の屋台で腕組みをしているおっちゃんに頭を下げる。


「嬢ちゃん、今日いっちまうんだってな…」


「はい。短い間でしたがありがとうございました」


小夜がお礼を云うとおっちゃんは袋にパンを入れ小夜に持たせてくれた。


「いいんですか!?」


「ああ…旅先で食ってくれ!」


「ありがとうございます!!大事に食べますね!」


小夜はそういうとパンをかじる。


「ああ…大事に食ってくれ…」


 そうゆうとおっちゃんは苦笑いする。


「小夜お姉ちゃん、どこかいっちゃうの?」


「うん、ちょっと世界を救いに」


「セカイ?救ったらすぐ帰ってくる?」


「そりゃあもうすぐ帰ってくるよ!その時はまた一緒に遊ぼうね!!」


「うんー!約束だよ!!」


 そうゆうと2人はニシシと笑い合う。


そして小夜はもう一度、お辞儀をするとシルヴィと人混みに消える。



「全く、急に現れたりどっかいったり……………必ず帰ってこいよ…嬢ちゃん……」



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ