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第25話 異次元


数時間前



 グエンとシルヴィは第三次試験開始直前、突然のクロノの参入に異変を感じ急いで駆けつける。

 クロノの事を誰よりも知っている2人だからこそ彼の持つ能力は異質であり取り返しのつかない事態になる前に絶対に阻止しなくてはならなかった。


 2人の足なら数十キロと離れた目的地も僅か数分で到着するレベルであり、途中で過ぎ去る一般人には彼らの姿を認識することさえ敵わない。


 既にギルド本部は鉄の壁のような硬い門に閉ざされていたが、シルヴィとグエンはその神速を止めることなく蹴破った。


ガシャァァァァンン!!  


鉄の壁は2人の衝突によって凹み、こじ開けられる。

 数秒後看守が来た時には既に人影はなく、広大な中庭を既に通り過ぎ森の入口に迫っていた。



2人が到着した時には既に遅く、小夜を含む受験生達は森の入口前で全員倒れていた。


「小夜様!」


シルヴィは急いで倒れている小夜の元に向かう。


一方グエンは元仲間でもあり親友でもあった、クロノの胸ぐらに掴みかかっていた。


「これはどういうことだ?説明してくれるか…クロノ」


碧眼の瞳で鋭く相手を睨みつけると、クロノは余裕そうに笑った。


「…何がおかしい?」


するとクロノはそのニヤケ面を続けたまま言い放つ


「お前のそんな表情みたの久しぶりだなあ、シルヴィもそうだがよっぽどあの娘のことがお気に入りなんだな」


「そんなことはどうでもいい…質問に答えろ」


グエンの掴む力が強くなる。するとクロノはグエンから目線を外すとその後ろを見る。


「そろそろ危機感持ったほうがいい…今後ろで寝ているのがただの受験者だと思うな…お前はいつからそんな最強の肩書き一つで相手の力量を測れなくなった?」


 一瞬グエンはクロノの言葉の意味に戸惑い頭の中でその真意を探る。


(危機感?ただの受験者?…小夜殿ことか?確かに彼女には高い潜在能力も秘めているしその成長速度にも目を見張るものがある…しかし彼女が脅威の存在になるなんてことは…ではそれ以外?)


グエンは後ろを振り返ると一人一人の受験者を流し見する。


「!!?ッッッ」



刹那、コンマ0.2秒にも満たない程の速度でシルヴィの背後に何者かが刃を突き立てる。

 その速度は時速にするとkmを超えていたかも知れない。無論その速度で貫かれた肉体は無事では済まないだろう。


キィィィィン


その斬撃をグエンが紙一重で防ぐ。


「くっッッッ!?」


シルヴィも遅れてその方向に振り返る。白色のワンピースを身に纏い肩まで伸びた白銀の髪に透き通るような白い肌、闇夜でもギラギラと光る赤い目を大きく見開いてこちらを見つめ目の下にはクマができていた。


 見た目は小夜よりも幼く見え、14か15位の顔立ちだった。そんな少女がたった今までグエンやシルヴィに気付かれることなく一切の躊躇いもないまま切りかかってきたのだ。そしてそれをグエンの驚異的な速度でやっと防ぐ事ができた。少女の手には銀色の握りバサミが握られていた。


「これは…一体!?」


シルヴィは目の前の少女が敵だと認識すると構えを取る。既に先程から抜剣し一切の隙を見せないグエンが叫んだ!!


「狙いは小夜殿だっ!!彼女を連れて森へ!!」


シルヴィがそれを理解すると寝ている小夜を抱え森へと続く柵の扉を壊した。


白銀の少女がそれを確認するとすかさず加速し距離を詰める。だがその驚異的なスピードに唯一対応できるグエンが立ちふさがり剣を振るう。

 するとグエンの剣閃はハサミの刃と刃の間で止められる。


「なっ!?」


そのままグエンの剣は少女のハサミの握力によって切り落とされる。

 グエンはすぐに折れた剣から手を離すと後ろに大きく飛ぶがその距離を一瞬で詰められる。


「ッッッ!?」


グエンはすぐに格闘に切り替え構えを取り、向かってくる少女のタイミングに合わせジャブを繰り出すが、まるで流れるようにかわされ裏ひじをもらう。


「くっッッ!!」


数メートル後ろに吹き飛び顔面にモロに打撃を受けてしまったグエンだったが、案外平気そうだったが額から血が流れる。


(見た目が少女だからって手加減してる場合じゃないな…)


彼は先程より速度を上げ閃光の残像を残しそのまま黄色い拳を少女にぶつける。


 だが、またしても紙一重のところで身体をよじりかわされるが少女がまだ体勢を立て直す前にグエンは回し蹴りを決め、少女の持っていたハサミを空にはじく。

 少女はそれに見向きもせず、前方に来るグエンの手刀をかわしながら自分の拳を叩き込みグエンもそれに反応しいなし再度蹴りと拳を叩き込み一歩も譲らない。


「はっ…はっ」


グエンは少し距離を取り軽く乱れた呼吸を整える。

 そしてもう一度接近を試みたが背後から先程のハサミがグエンに向かい、それをかわす。


「ちっ」


そして再び手中にハサミを持った少女はグエンを少し見つめると殲滅を諦め、変わりに受験者の方に手を向ける。


中級魔法 エンセントレイ


するとバスケットボールサイズの光の玉が無防備な受験者達めがけで襲う。


「なにッッ!!?」


グエンは少女から目を外し光の玉めがけて走り、それを両手で止める。


キィィィィイイ


手に触れた瞬間機械音が響き渡り、周りの地面がえぐれる。


「うおおおおおお!!」


グエンは叫びながら耐える。すぐ後ろには受験者達が眠っており、絶対にここで受け切らなければならない。

 グエンは耐えながら何とか右足で光の玉を捉え、軌道をずらし跳ね返す。

 跳ね返った玉は森に飛び破裂する。その衝撃で地鳴りと爆発音が同時に発生した。


「はあ、はあ」


手を見るとやけどし、少し皮膚が破れていた。


「急がないと」


 グエンは受験者達にケガがないことを確認すると森の侵入を許してしまった少女を追いかける。


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