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第19話 マイナス1話


ピピピ ピピピ ピピピ


 「ッッッ!!?」


まるで悪夢でも見ていたような衝撃で目を覚ます。

 一面、白い天井に窓の外から溢れる朝日が光を反射させ耳元から聞こえるアラームがうるさい。


「知ってる天井だ」


それは小夜がよく知る光景、いつもの始まりの場所、起点であり今日も長い一日が始まる。


「ってて…なにいってんだろ…私」


重たい身体を上げると、軽い偏頭痛のようなものが付き纏う。


「私の…部屋だよね?」


小夜はスマホのアラームを止めるとふいに辺りを見回した。


 デフォルメのくまの模様が描かれたカーペットに小さめの丸テーブル、クレーンゲームでとったぬいぐるみ2体に圧迫された座椅子、5段の収納ボックスの上には数冊の漫画と小説、勉強机とデスクチェア、30インチほどの壁掛けテレビ、クローゼット(中には服や、スナック菓子が半分を埋め尽くす)やその他小物諸々…


以上


まだ半分寝ているような状態で呆けている彼女だったがいきなり部屋の戸が空き、ビクッとなる。


「小夜、いいかげん起きないとまた遅刻するわよ?」


黒髪で背中まである髪を束ね前側に下ろし、薄いピンクのエプロンをきた女性が部屋に入るなり小夜に小言を云う。


(えっと…)


「お母さん?」


その反応に目を丸くした小夜の母はため息をついて彼女にご飯できてるからおりてくるよう催促し行ってしまった。

 すると自分でもわけのわからない反応を取ってしまった事に疑問を持ち顎に手を当てて考えた。


(私、さっき部屋にお母さんが入ってくる時違う人を思い浮かべてた?誰?)


頭にモヤがかかったように思い出せない小夜だったがきっと:悪い夢:でも見たのだろうと納得する。


「よし、考えても仕方ない。ご飯たべよ!!」


そうゆうと彼女は自分の部屋を後にした。


 朝食を食べ身支度を済ませると朝のテレビの時間は7時50分を回っていた。

 早く行かないと本当に遅刻になってしまう。小夜は朝の徒労を後悔し少し急いで家を出る。


「いってきまーす」


 母に見送られ家を出る。いつもの風景、いつもの日常、こうして淡々と自分の高校生活は過ぎていくんだと夏服の制服に袖を通し、燦燦と輝く太陽と蝉の音を聞きながら心の中でそう感じていた。


なんとか、安全圏に入ると小夜は走るのをやめ通学路を歩き出す。


「あっつー」


小夜は額の汗を拭うとさっき買っておいた水のペットボトルを空け口に入れる。

 走ったせいもあるが今日は本当に熱い。ぼうっとする。小夜は一瞬立ちくらみを感じ額に手を当てて地面を見る。


(やば…熱中症かも)


とりあえず学校までは持ち堪えて欲しいと願い顔を上げて歩み出す。


しかしすぐに足は止まった。


石でできた道、目の前を覆い尽くす程の人々、周りの人は布の服を着用し、しきりにこちらに視線を飛ばす。

 道の端にひしめく露店、見たことのない装飾や食べ物、剣や盾などもある。地竜が台車を引き、動物の耳が頭の先から生えている人、トカゲが二足歩行でこちらをみている。それに向こう側に高い塔がいくつも並んでいる。

 


「…ハァ…ハァ…」


呼吸が苦しい。真昼の白昼夢のように視界がおぼろげに歪み、視界がそれを映し出す。そして山の上にそびえたつ建物を視界で捕らえ、頭痛が更に増す。


(あ…れは…お…城?)


ポン


いきなり肩を叩かれ、振り返ると同じクラスの友達だった。


「よっ!おはよ、こんなとこで立ち止まってると通行の邪魔だぞ!」


「…えっ」


小夜はすぐに向き直るが、そこはいつもの通学路だった。


「おーい、本当にどうした?暑さでやられた?」


少し心配そうに言い寄る2人に小夜が咄嗟に答える。


「いや…その…お腹…すいちゃって…さ…立ち…止まってただけ」


小夜は必死に震える声と吐き気を隠して伝えると2人は腹を抱えて爆笑し怪しまれることなく一緒に登校した。



いつもの授業風景。黒板にスラスラと文字を連ねる教師をよそに小夜は窓際の席から空を見る。

 どこか上の空の彼女をしきりに先程の2人は気にしていた。



昼休み



空席の3つの席を合わせ3人用の弁当が並べられる。

 小夜含む今朝の2人と弁当を共にしていた。


「小夜、本当に大丈夫?」


友人が察し彼女の異変を心配してくれているが本人もその答えは持ち合わせていなかった。


「へ?あ、ああ、うん。大丈夫だよ!多分」


愛想笑いを浮かべながら、弁当のタコさんウィンナーをコロコロと転がしながら適当な言葉を紡ぎ返す小夜に2人は呆れていた。


「駄目だ、こりゃあ」


2人は半ば諦め健康状態に問題はなさそうと判断しこの話しを切り上げる。


「今日ウチ暇だし、久々にモールでもいかない?」


「おーいいね〜いこー」


そうゆうと金髪ギャルとおとなしめの、少し陰キャが入った個性の固まりのような2人が小夜に視線を合わせる。


「小夜もくるっしょ?」


「へ?私?えーーー」


「ハイ決定ー」


「うぇぇ!?ちょっと!?」


半ば強制的に放課後のスケジュールが埋まった。


 

それからも小夜はずっと上の空であっという間に下校時間になった。


放課後、ショッピングモールに続く道を先に歩きながら駄弁っている2人を背に小夜も歩く。

 制服姿で帰りに寄り道…いつもやっていることなのに、何故かそれがすごく久しく感じた。


ショッピングモールに到着すると3人は適当に服を見て回った。


「ねぇこれ良くない?」


「よき!」


流行の服をあてがいながら2人は楽しそうにはしゃいでいる。

 小夜も適当に服を手に取り鏡に映る。


「…なんでだろう…しっくりこない…」


おかしいところはない、むしろ自分でも似合ってるんじゃないかと思うほどだったが、おもむろに服を戻し小夜は結局何も買わなかった。

 満足のいく買い物をし袋を下げ嬉しそうな2人に小夜は後に続く。

 色々な店を流し見しながら歩いていると足が止まる。


(これって…)


そこはヘアーアクセサリーを専門としたお店だった。

 小夜はふと無造作に並べられた髪留めの1つを取る。


それは青の花を模した髪飾りだった。


 「へぇ、可愛いじゃん!買っちゃう?」


隣から友人に声をかけられたが小夜にその声は届かなかった。


「…これ、知ってる」


小夜は自分が付けている髪留めを外し確認する。


そこには以前自分が気に入りおこづかいで購入したヘアクリップがあった。


「…青色のヘアクリップ…」


不思議そうにそれを見つめる彼女に友人は口を開く。


「いや、ずっと前からそれつけてるじゃん」


「…うん……そう…だね…」


(なんでだろう、すっごく大切なものが抜け落ちてるような…わからない…何も思い出せない…絶対忘れちゃいけなかったこと)


「えっ!?急にどうしたんだよ!?小夜!」


「小夜…大丈夫?」


「へ?」


いつの間にか頬から涙が伝っていた。




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