第20話 親友
小夜は自分でも理由が分からない涙と心が締め付けられる気持ちでその場にうずくまる。
すると周りにいた人達も彼女の異変を感じ取りチラチラとみてくる。
「たくっ…しょうがないなーほら、小夜つかまんな」
「…小夜あたしも…」
2人が背中を差し出す。
「いや、お前もしてどうすんだよ…」
小夜は2人の会話に元気をもらうと少し気持ちが収まり、肩に乗る。
ショッピングモールを肩車で移動する女子高生はやはり人目の注意を引いている。
小夜は少し恥ずかしかったがおんぶしている方は真剣だった。
「…小夜」
「なに?」
友人の耳元で小夜は囁く。
「何か辛いことがあるんなら、ウチらに相談しなよ。必ず助けるから」
その言葉に小夜は目を閉じて背中に顔を預ける。
「うん。ありがと」
小夜がおんぶされているとその後ろから声が聞こえた。
「…小夜」
「ん?」
「…パンツ見えそう」
「隠してッッ!?」
3人はショッピングモールを後にすると近くの公園のブランコに腰を下ろしブランコを動かす。
夕に染まった公園で小夜はブランコの真ん中に座り左右に2人が座る。
ギーコ
「本当にありがとねっ!もう大丈夫だよ!!」
風に髪を揺らしながら小夜は自分が正常なことを2人に伝える。
それを聞いて少しほっとしたような表情の2人。
ギーコ
「なぁ、小夜…私達が初めてあったときのこと覚えてる?」
小夜は唐突な質問に一瞬疑問を感じたがすぐに笑顔で答えた。
「もちろん」
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小夜が高校に入学して間もない頃
この学校の購買には限定50食のプレミアムローストビーフパンという長方形のパンの切れ目にローストビーフがぎっしり詰め込められ、お値段250円という超破格のメニューが存在していた。
もちろん小夜も高校入学前に既に織り込み済みで入学後、初日から買いに走ったものの、彼女が到着する頃には必ず完売になっており、結局入学してからしばらくの間お預けを食らい小夜は悶々とした日々を送っていた。
それには理由があり、彼女のクラスは校舎の反対側に位置し小夜がどれだけ急いで買いにいったとしても事実上パンを手に入れることは不可能だった。
そして小夜はその日恐ろしい作戦を思い立った。
授業中〜昼休み直前〜
「先生!お花を摘みにいってきます!!」
小夜は腕をピンと伸ばし懇願する。
「…行ってきなさい」
そして小夜は教室を出る。
(計画通り)
小夜は邪悪な笑みを浮かべると一番近いお手洗いとは逆の方向に駆け出した。
それを見ていた教室の生徒と教師は
一同 (アホだ)と心の中で思った。
そして授業終了のチャイムが鳴る。
廊下を走ってはいけないという、いにしえからの掟をものともしない小夜は額に少し汗をかき全力で走った。
「良し、このままいけば何とか間に合う」
購買に到着した小夜だったが既にかなりの列ができていた。
(うわ、結構並んでるなあ)
小夜も慌てて後ろに並んだ。
残り 40…30…20…10…5
(よし、前に3人だからこれで確実にいける!お一人様1個ずつだし!!)
小夜は勝利を確信しワクワクしながら自分の順番を待つ。
「おっ!!お前らおせーよ!もうなくなっちまうから早く来いよ」
「へ?」
しかし、小夜の前の男子生徒が他の生徒を割り込ませてプレミアムローストビーフパンを購入しようとしていた。
「そんなあ」
小夜が涙目で手を伸ばすが前の男子生徒に声は届かない。その時ー
「おい、あんたら後ろ並んでるだろ…順番も守れないの?」
「あん?なんだお前?上級生優先だろ?」
男子生徒は横やりにガンを飛ばすが、そこに立っていた高身長金髪ギャルが鋭い目つきで睨み一歩も引かない。
「何が上級生だよ。ただのハイエナじゃん」
「ああッッ!!もうぺんいってみろや!!」
金髪ギャルと男子生徒複数が喧嘩になり小夜はその状況にあたふたする。
「ちょ、ちょっと喧嘩は…」
その時小夜の後ろで隠れていた小さな少女がダウナー声で口を開いた。
「うるさいですね…金髪ゴリラ女と、ハゲザル共が!」
そこには小夜より更に小柄で低身長の少女がいた。
(この子、見た目に反して口悪っ!?)
その言葉に金髪ギャルと男子生徒は反応する。
「「ああんっ!」」
そして男子生徒と金髪ギャル、低身長少女の三つ巴の闘いが始まろうとしていた。
するとその状況に耐えられなくなった小夜が叫んだ。
「もうやめてよぉ!!私はプレミアムローストビーフパンが食べたいだけなんだよぉッッ!!!」
「…………」 「…………」 「…………」
ぶわっ
大泣きする小夜
「「!?!?」」
小夜の涙の決壊により結局、最初に並んだ順でお目当てのものを購入できた。
屋上
もぐもぐもぐ
「おいひ〜」
「で、なんで私らメシ一緒に食ってんの?」
「…なりゆき」
屋上のアスファルトに座り金髪少女と低身長少女と袋の中にパンパンに食料をつめた小夜がいた。
「てか私さっきのことで自分が買いたかったあんぱん買うの忘れたんだけど」
すると、小夜は白い袋をガサガサと探るとあんぱんを取り出し彼女に渡す。
「はい!助けてくれたお礼!」
「あんぱん!?」
金髪ギャルがひみつ道具のように取り出されたあんぱんに驚く。
するとそれに反応した低身長少女が饒舌に口を開いた。
「この学校は、好きですか
わたしはとってもとっても好きです。
でも、何もかも…変わらずにはいられないです。
楽しいこととか、嬉しいこととか、全部。
変わらずにはいられないです
それでも、この場所が好きでいられますか」
満足げに言い終わると彼女がドヤ顔でこっちをみる。
「?」 「?」
「なんだ…いまの」
「…人生」
それが3人の出逢いだった。それからは何故か一緒につるむことが多くなり気付けば親友と呼ぶに相応しい関係になっていた。
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ギーコ
「ほんっと私らって全く性格全然違うのに、よく今まで付き合ってこられたよな」
「そうかな?」
「…多分そう…」
3人は共に笑い合う。
ギーコ
「なあ、私らあと半年ぐらいで卒業しちゃうけど、卒業してもこうやって今みたいにいろんなことしような。3人でー」
「…もち」
「もちろん」
小夜の声が心なしか心細く感じた。
そして辺りは夕闇になり解散する。
「じゃあなー」
「…また…ね」
「バイバーイ」
小夜はいつもの帰り道を歩いて家に向かう。
「…楽しかったなあ」
「………………」
(何故だろう…こんなに満たされてるのに…こんなに幸せなのに…なんでこんなに悲しいんだろう…分からない…何も)
彼女達との思い出を紡ぐほどに小夜の心は引き裂かれるような、気持ちになっていったのだった。




