第1話 Golden bread
行き交う人々、行商人や街の人、冒険者やリザードマン、露店ひしめくこの街はかなりの規模のものだろう。
遠くには高い塔がいくつも並んでいる。街全体が活気で賑わっている。ちょうどお昼を過ぎた時間帯、今がピークかも知れない。
そんな中心部に一際目を引く奇抜な服を来た女の子が1人、先ほどからなにやらジト目でパン屋のおっちゃんを困らせている。
その目線の先にはこんがりと焼いた食パンのような見た目のパンにハチミツのような甘いかおりのする黄金に輝く液体が注がれている。
それを彼女はおよそ5分ほど不動の状態で見つめている。
「お、おい嬢ちゃん買わねぇのか?」
「買いません。でも私、気になります」
痺れを切らした店主が先ほどから抗議しているが一向に拉致があかない。
「何が」
「その、黄金に輝く魅惑のパンがです!」
彼女のキラキラした目がそのパンに注がれる。
じゅるり
よだれが鳴る音を聞いたおっちゃんは困ったように頭を抱え塞ぎ込んだ。
「わりぃけどよ、うちにもタダでメシを恵んでやるほど余裕はねえのよ。悪いけど商売の邪魔すんなら帰ってくれ」
その言葉を耳にするやいなや鋭い視線でおっちゃんを睨む。
「ム、なんだよ…」
おっちゃんは少し驚きつつもすぐに彼女のほうを睨む。
ブワッッ!!!
!?!?!?
急に彼女が大粒の涙を浮かべると人目を気にせず泣き出した。
その状況をみた周りの人々はこちらに注目する。どこかおっちゃんに冷ややかな目で……
「おい!泣くな!?こっちが悪いみたいに見えるじゃねぇか!!」
「私だっでぇぇぇ!!わけがわがんなぃんだよおおお!!!!」
びええんという表現が正しいだろうか。おっちゃんの問に答えるつもりはない彼女は泣くのをやめない。
「わかった!わかったから、そこの一つ持っていっていいから!!泣くのをやめてくれぇぇ!!」
おっちゃんも泣きそうだった。
するとさっきまで泣いていた彼女はピタッと泣き止み
「え、いいんですか?」
「ふぅ……ああ…」
すると彼女の目がキラキラ輝き始めお目当てのパンを両手で掴み取る。
「ありがとうございます。では僭越ながらいただきます。」
「ほんと僭越だよ。僭越極まりねぇよ」
パクッッ
「〜〜〜!!?」
口に入れた瞬間、パンの柔らかさとまとわりつくハチミツ状のエキスが混ざり合いそれが口の中で甘く溶け合う。
常時置かれている状態だったのでかなり時間がたっているのかと思いきや中はアツアツでパンの旨味を最大限に引き出している。
「おいひ〜〜」
「そりゃあありがとよ。というかさっきからきになってたんだが変わった格好してるな。嬢ちゃん、どこの国から来たんだ?」
もぐもぐもぐ
「口の中で、混ざり合うこのパンとハチミツのもちゃもちゃ感。コンビニのケーキパンのように女の子の体重事情を一切考慮しないこのカロリー爆弾!しかしやめられない。もうどうにでもなれ。私は好きなものを食べて死ぬ」
「おおおおい!!もうその話しはいいって!?俺の質問に答えて!?」
結局質問は帰ってくることはなく彼女は夢中で食べ進めあっという間に平らげてしまった。
満足げな彼女の横で不満げなおっちゃんの絵がその時描かれていた。
そして彼女はペコリとお辞儀をして尋ねた。
「えっと…ありがとうございます。滅茶苦茶美味しかったです!!このご恩は忘れません。それと自己紹介がまだでしたね」
「私、冷煎小夜っていいます。あの度々申し訳ないんですけどここはどこですか?」
今日は厄日だとおっちゃんは思った。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
王城にて
豪華な内装の屋敷の中、1人の中年の男がしきりに懐中時計のようなものをみてソワソワしていた。
!?
「おお、きたか!!やはり成功だったようだな。反応がないから一時はどうなることかと思ってヒヤヒヤした。グエンいるか?」
その男はその瞬間を待ち焦がれていたように、嬉々としてある男を呼んだ。
「失礼致します。ご要件は?」
その男は片ひざをつき主の支持を仰いだ。
「先程あちら側の者がこちらにきたようだ。すぐに迎えに」
片ひざをついていた男はこちらを向きキラキラした凛々しい目つきで答えた。
「かしこまりました。直ちにいって参ります」




