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第16話 待ち人

小夜を試験会場に送り出した後、ついでに城の在庫補充のため街に立ち寄る。

 ギルド承認試験のためいつもより更に数倍は活気がある街をみて周る。街のあちこちに装飾が施され、いつもでは見ない所にも露店が並んでいる。

 

「それを、10ケース程頂けますか?」


「へい!!毎度ありぃ」


程なくして買い物を済ませたシルヴィは街を後にしようとするが、突然見知らぬ少女から声をかけられる。


「お姉さん!お城の人?だったら小夜お姉ちゃん知ってる?」


推定5.6歳ほどの見た目のくせっ毛のあるその娘はシルヴィを屋敷の人だと認知するとぱあっとした無垢な笑顔をこちらに向け走り寄ってくる。


「…ええ…存じておりますが」


少し瞳を大きく開けたシルヴィだったがすぐにいつもの調子で話す。


「じゃあ、お姉ちゃんにまた遊びに来てねって伝えて欲しいなっ!!」


「……遊びに?」


疑問符を浮かべたシルヴィだったが横から、中年男性が慌てて割り込む。


「こらっ!!ユナ勝手に出歩くなってゆっただろ!」


「パパっ!!このメイドのお姉さん、小夜お姉ちゃんのお友達なんだって!!」


ユナと呼ばれた少女は父親とおぼしき中年男性に抱きつきながら説明すると男はこちらを振り返り口を開く。


「とゆうことは、あの嬢ちゃんが話してたメイドさんってあんたのことだったのか!!いやあ嬢ちゃんとはよく娘と遊んで貰ってんだよ!」


その人物は以前、小夜が異世界転移をした時に最初に言葉を交わしたあのパン屋のおっちゃんだった。

 小夜はシルヴィの特訓中にちょくちょく買い出しに街に出ていたこともあり、この少女はその時に仲良くなっており時々あの時のパンの味が忘れられずよくここで買い物をしていたのであった。


「嬢ちゃん、冒険者になるんだってな!!最初見たときは心配だったが、まさかハイカカオット城の関係者とは恐れいったぜ!」


腕組みをし高らかに笑うおっちゃんにシルヴィが反応する。


「…関係者…というより今は居候が近いのかも知れませんが、あの方は私達にとってはなくてはならない存在です」


まさかその言葉が世界にとって必要とは受け取られなかった。


「はっはっはっ!よっぽど嬢ちゃん大事にされてるんだな!じゃあ俺はまだこれから仕事があるからそろそろいくぜ。また嬢ちゃんと店に来た時はサービスするからな!!」


「メイドのお姉ちゃん!バイバイ!!」


父親に手を引かれこちらに手を振る少女に思わずシルヴィも小さく振り返していた。



 シルヴィは屋敷に戻り、一メイドとして途中から参加という形で通常業務をこなしていた。

 床に落ちた食べカスを慣れた手つきで掃き取りながら、あのパン屋の親子のことを思い出していた。

 

「ふふ」


 まだここに来てから3ヶ月と少しだというのに既にここまでの存在感を与えた人間は彼女にとって初めてのことであり、夜な夜な見つからずにここでリスのように口を膨らませた小夜を想像してしまい思わず笑みが溢れる。


ふと、視線を窓の外に向け、奥の高い塔が並んだほうを見つめる。

 

「小夜様、ご無事で」


掃除の手を止め暫くシルヴィは願った。


コンコン


「シルヴィ様!いらっしゃいますか!」


突然のドアのノックに瞬時に只事ではないと察知しシルヴィが答える。


「どうされましたか?」


するとドアが開き、シルヴィの同僚であるメイドが慌てて入ってくる。

 そこにメイドとしての気品さは感じられずことの深刻さを助長する。


「はい!先程、禁足地帯に加勢に向かったグエン様が帰ってこられたのですが……率直に申し上げます。先遣隊の三番隊 ミラージュ・コロ・ライアス 絶命、それと共に向かった近衛兵も一人を残して全滅したとの報告が!!」


先程までの雰囲気とは打って変わっての状況にシルヴィは冷静に応答する。


「わかりました。私もすぐに向かいます」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

ミニ番外編


ハイカカオット城 戦闘メイドについて 


 現在ハイカカオット城の使用メイドは全体で数十人が在籍しており、その一人一人が高い能力を買われ住み込みで屋敷の管理をしている。

 明け方には起床し、身支度を済ませ、鏡で礼儀作法を一通り行い、仕事着(メイド服)に着替え再度自身の服装の乱れはないかのチェックを済ませ部屋を出る。


 まずは城に在籍してある全ての人間の健康チェックから行われ、異常があればすぐに適切な処置が施される。

 ちなみにハイカカオット城では医者、医療器具、緊急時の物資は粗方揃っているので迅速な対応が受けられることが利点である。

 もちろん足りない物資や、食料の買い出し、健康管理の行き届いた献立に至るまで全て城内のメイドが行なっている。


 次に自身、兵士含む城内の全ての人間の衣類、その他の洗濯を行う。洗濯は一日に数千の数を超え主に水魔法を駆使して洗われる。

 この時他の人の衣類が混ざり込まないように皆に印をつけていくことを念押しされる。

 ちなみに当初小夜は文字が書けず日本語で書いていたら行方不明になったことが幾度かある。

 それを終えるとようやく遅めの昼食となる。基本的にメイドの昼食は個人の作業が終わった順に向かうようになるため、メイドどうしで囲って取るといったことは極めて少ない。

 それが終わると館内、庭の掃除に追われこの作業が業務全体の大半を占めることになる。

 夜になっても仕事は終わらず、交代で夜間の見回りや国王陛下、その他役所者のスケジュール管理など行っている。自由になるのはそれらを全て終えた後でほとんどが深夜を周る。

 シルヴィはそのメイドの中でも特に優秀な部類であり、無口だが、決して弱音を吐くこともなく同じメイドの後輩からよく慕われている。


 そんなシルヴィも全ての業務が終わった後のお風呂では疲労のせいもあってか、かなりふやけるとか


ちゃぷ ちゃぷ


シルヴィ「ふにゃあ〜さいこう…でぇす」


その現場を一目見ようと訪れた後輩のメイドがあまりのギャップに悶絶し倒れシルヴィの仕事を余計に増やすらしい。


 

   ハイカカオット城メイドの一日end

 


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