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第15話 格上との闘い方

「では、よろしくお願いしますね」


黒縁のメガネを光らせペコリとおじさんは頭を下げる。


「あ、こちらこそ宜しくお願いします」


小夜も続いてお辞儀する。まるでバイトの面接のような挨拶を行った後、真っ先に彼女はおじさんに殴りかかった。


(さっきからの闘いで魔法を使った攻撃はほとんど効いていなかった。だったら残るは、手数の多い接近戦!)


小夜は自分の番が来るまでの時間ただぼうっと呆けてた訳ではなく、敵の動き、癖、弱点を観察していた。

 もちろんこの教えはあのメイドによるものだった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


王城中庭


「小夜様、闘いとは単に己の強さだけが勝敗を分けるとは限りません。まず、よく相手を知ることです」


「相手をよく知る?」


きょとんとした格好で地べたでボロボロになった小夜が聞き返す。


「はい、もしそれが自分より格上だったら尚更です。正攻法でいってもまず勝ち目はないでしょう。相手の得意不得意を見極め、その不得意を自分のフィールドに持ち込んで下さい」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


ー肉体強化ー 巡 (めぐり)


小夜の身体が一瞬光る。そして足を加速させる。


 そしてそれを見ていた演習場の誰もが感じる。


    ー速いー


「ほぉ」


おじさんはそう呟くと、背後から頭部に向かう回し蹴りを右手首で止める。


ガンッ!!


ー肉体強化ー 硬 (こう)


おじさんは瞬時に右手首だけに<硬>をかける。

 

「ッッッ!!」


小夜は空中で体勢を変え即座にもう一蹴を弾かれた側とは反対側に叩き込む。


「遅いよ」


するとひょいとかがみ込み蹴りをかわす。 

 空中で無防備になった小夜におじさんがすっと片手を小夜の下腹部に当てる。

 その瞬間小夜の身体が吹き飛ばされる。<硬>で防ぐ暇もないままダメージをモロに受けてしまい地面に転がるが両手を使い起き上がる。


「…はあ…はあ…魔法や…肉体強化も使ってないのに触れただけでこんな飛ばされるなんて…」


おじさんは直立した状態でニコニコと答える。


「…あれはね攻撃というよりただマナを手に集中させて放出したんだ。基本マナは変化させて使うけどこうすると発動までのモーションもなくて案外不意打ちにはもってこいだからね」


そう云われて見れば確かに、直撃はしたが、そこまで大きなダメージにはなっていないことがわかる。

 再び小夜は<巡>で強化し今度は真正面から立ち向かう。小夜は当初の作戦通り手数で勝負するため、最速の打撃を叩き込んだ。


いや叩き込んだはずだった…


おじさんは手の甲をまるで虫をはたくかのような勢いで小夜の拳を弾くと何故か彼女のバランスが弾いた方向に引き寄せられ、身体が持ち上がる。

 そしてそのまま手首を掴まれ地面に叩きつけられる。

叩きつけられた衝撃で地面にヒビがはいる。


「カハッ!」


今度は先程よりもダメージが通り、痛みが背中から、全身を駆け巡る。

 そしてこの動きには見覚えがあった。それは先程の多人数での試験のとき、周りの者がおじさんを囲んで一斉に魔法を当てにいき、おじさんは火、水の攻撃を全てあの手で軌道を曲げて全て受け流していた。

 そう、先程の小夜の拳と同じように、火も水もまるでおじさんの者になったかのようにベクトルを変えていた。激しい痛みの中で小夜はあることに気付いた。

 

「はあ…はあ…」


 小夜は少しふらつきながらも立ち上がりおじさんから距離をとる。


(もしかして、魔法が効かないんじゃなくて、マナを使った攻撃そのものが効かない…?)


(じゃあ無理じゃん!?)


「さて…どうしようかな…」


小夜は苦笑いしながら再び思い出す。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「…じゃあイオンさん、相手の弱点が観察しても見つからなかったときはどうしたらいいんですか?」


「完全無欠の相手…ですか」


その言葉にシルヴィは鼻先に人差し指を置いて少し考えこむ。


「まあ、これは私の持論なのですが、その場合は相手の攻撃を逆に利用してみます。カウンターみたいなものでしょうか…」


「…カウンターですか?」


「ええ、人は強くなれば強くなるほど、自分に自身がついていくものですから。そこが時に弱点になることもあります」


「相手の強さが…弱点」



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


小夜は更に距離を取った後、ここで思いもよらぬ行動を起こした。


水 初級魔法 ウォーターショット


 小夜の手から水の玉が連続でおじさんをめがけて放たれる。


(よし!やっぱり出来る!!)


小夜の疑心は確信へと変わった。


「んん?」


おじさんに違和感が走った。


(ここにきての魔法…私にマナを使った攻撃は効かないとわかっているはず…苦しまぎれ?それか何か作戦が…)


放たれた玉は当たる直前で予想通り手の内で弄ばれあらぬ方向へ飛んでいく。


それと同時に小夜が<巡>で迫っていた。そして先程と同じく俊足で背後に回る。

 おじさんは背後に小夜の気配を感じ、まだ数発は飛んでくるであろう水の玉を片手で弾きながらその水よりも数倍速く移動する小夜に危険視し後ろを振り向く。


(なるほど、自分のスピードを生かして接近と魔法の同時攻撃で私の隙を作ろうと…)


そして小夜の回し蹴りが再び繰り出される


(だが甘いよお嬢さん、私くらいになれば後ろを見ずとも残りの段数と正確な位置を把握し対応できる!後は残った片手でその回し蹴りの威力をはね返せば勝負はつく)


そして小夜の回し蹴りがおじさんの手に触れようとしたそのときー


バシュ!!


「ぶへっ!?」


突然おじさんの後頭部に衝撃が走る。その衝撃は冷気を帯び肌に伝わる。


(水!?何故!?残りの弾数と軌道は確かに把握していたはず…………まさか……利用した??魔法や肉体強化のマナを自分のマナで流れの向きを変えていたことに気づいて?しかしいつだ!?まさか…あの最初に彼女を吹き飛ばした時…私がマナの説明をした時に、あの一言で理解して水を操作し、私が跳ね返したことで油断させ、それをぶつけた…というのか?)


その答えを導き出す前に体勢を崩した身体は手に触れることなく小夜の回し蹴りがおじさんの顔とメガネをぶち破った。


ドゴォォンッッッ!!


けたたましい音を立てたおじさんは10メートル程吹き飛ぶ。



そして着地した小夜は吹き飛んだおじさんに慌てて駆け寄る。


「だ、大丈夫ですか!?」


吹き飛ばされたおじさんは向こう側から走ってくる少女を割れたメガネの視界で見つける。

 彼女はつい先程あったばかりの人間を心から心配し不安そうな面持ちで覗いていた。


「あっはっはっは!!君!試験中だよ!私がいいってゆうまで闘わなきゃ」


倒れたまま突然吹き出すおじさんを見てホッとする小夜


「いや、でも思いっきり入っちゃったし…あの…本当に大丈夫ですか!?大分痛いんじゃ…」


「心配ご無用!!これくらい!!カミさんのパンチに比べりゃ軽い軽い」


そしておじさんはすくっと立ち上がり笑いながら


「はい!!合格!!おめでとう!!」


「へ?合格…」


突然の発表に驚く小夜だったがおじさんは割れたメガネのまま次の受験者のところにそそくさといってしまった。

 第二試験が終わり、視野も広くなった小夜は改めて周りの状況を観察する。

 やはり他の試験管も一対一で対峙しており、先程まであった冒険者達の余裕もなくなっている気がした。今ここに残っている人達は一人一人が並の強さではないという証拠でもあった。

 そして仮合格となった小夜は待合室に案内され、演習場を後にする。


(とゆうよりここまできて筆記試験で落ちてたら恥ずかしすぎるッッッ!!)

 

小夜は祈った。シルヴィに




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