第14話 ふるいにかける
小夜は肩で息をしながらなんとか演習場にたどり着く。入口前で待機していたガタイのいい門番のような人に急かされる。
「…ハァ…すみませんっ!」
中は巨大な体育館のようになっており、コンクリートのような、灰色の分厚い壁で外からの音漏れの心配はない。
その証拠にここには窓ガラスが1枚もなく外との繋がりを完全に遮断するには出来過ぎた作りになっている。すると小夜が演習場に入ったのを最後に後ろに控えていた関係者が扉を強く閉めた。
先程の獣耳の少女はまにあったのだろうか?小夜がちらちらと確認するがひしめく人の群れで探しようがなかった。
「それでは、只今より第二次試験、能力実技を開始致します。既に存じている方も多いようですが、この試験では冒険者と成り得るために、相応しい実力があるかどうかを測定させて頂きます。」
係員はそういうと奥の方に手を向ける。そこには十数人程度の人達が固まっていた。
「こちらの方々は現ギルド冒険者として正式に認められている者たちです。この試験では彼らプロの冒険者によって合否を決めて頂きます。魔法攻撃、強化魔法、武技何を使用して頂いても構いません。あなた達が冒険者になるに相応しいかを判断します。以上です」
説明が終わると冒険者志望者達の目つきが変わる。
「なるほど、わかりやすくていいや」
「用は、あいつらの誰かを力ずくで黙らせりゃ良いわけだ」
「…ヒヒヒ…もちろん、何が起こってもお咎めなしだよなぁ!!」
血の気の多い参加者にアナウンスをしていた係員が淡々と答えた。
「ええ、勿論です。できればですが…」
その答えを彼等はすぐに知ることとなる。
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第二試験が開始されて約20分…
「ぐはぁッッッ!!」
小夜のすぐ隣を2メートルはあろうかという大柄の巨漢が吹き飛ぶ。前に立っていたのはメガネをかけ髪を七三分けにしたポロシャツのような服を着た中年の男であった。
周りの現役冒険者も一見か弱そうな女性の冒険者や70は迎えていそうな腹巻きをし腰の曲がった冒険者、驚くことに子供の冒険者の姿もある。
だがもっと驚くべきところは、その誰もが相当な実力者でいっぺんに5人くらいの人数を相手取っていても表情に一切の疲れを見せていない。
失格となったものは速やかに後ろの扉から返されている。もちろん怪我人も少なくなく、救護班が慣れた手つきで怪我人を運び出している。
ちなみに先程大口を叩いていった者たちももれなく運び出されていた。開始から僅か30分が経つ頃には既に半分以上が退場になっていた。
第二次試験の順番は各冒険者の名指しで多い時には10人ほどを指名することもあった。小夜はというとバタバタと吹き飛ばされている受験者を間近で観察させられており先程から恐怖と不安が募り募って震え上がっていた。すると、小夜の足元にモヒカン頭のムキムキの男性受験者が気絶して転がってきた。
「うおぉ!!!?」
(私生きて帰れるのかな?多分無理…)
そして更に時間は経ち先程までパンパンだった演習場は今は100人ほどしか残っていない。
更に驚くべきは小夜の目視によればまだ合格者と呼ばれた者を見ていない。
その様子を武道場の2階の手すりから見ていた男は満足げに笑っている。
「うん、良かった。やっぱりこうして正解だった。ご苦労だったね。大変だったでしょ?集めるの?」
その男は現ギルドマスタークロノ・ヴァン・リチャードだった。
そんなクロノの話しをまるでOL秘書のようなスーツを身に纏った金髪の秘書が耳を傾けていた。
「いえ、皆様それなりに積めば快く引き受けて下さいました。今回の冒険者はどれもBランク、Aランク相当の冒険者を集めさせて頂きました」
「やっぱり流石に優秀だね。良い粒ばっかり残ってるよ…まあこうでもしないと、後々無駄死にだしね」
その言葉を聞き秘書は細い目でクロノを睨む。
「ええ、前回の第三試験のせいで多くの犠牲者がでました………あなた…ほとんど殺人者ですよ?」
その言葉を聞き顔に手をやってクロノは笑い出す。
「…ひどいなぁ、だからそうならないために、今回は審査を大幅に厳しめにしたんじゃないか。感謝してほしいね。それに半端もんが冒険者になってもすぐに同じ道を辿ると思うよ?遅いか早いかだけの違いだ」
「相変わらず下衆ですね」
秘書が何かをぼそっと呟く。
聞こえたか聞こえてないかはわからないがクロノはクックックと笑っていた。
「それと、今回の冒険者依頼料のギルド本部への請求書です」
そういうと秘書はクロノに1枚の紙を差し出す。
クロノはそれを見ると、目を細めてため息をこぼす。
「…あー急に冷めた…いこう…」
「はい」
その言葉を残してクロノと秘書はその場から立ち去った。
「じゃあ次そこのお嬢さんいきましょうか」
すると小夜は汗一つかかずに数百人は一人でなぎ倒した七三男に指を刺される。
「は、はい!!」
(私と組む人達は誰なんだろう?)
小夜は周囲を見渡すが誰も呼ばれない。
「お嬢さん?どうしたの?」
おじさんが不思議そうな顔で尋ねる。
「え?いや…他の人達は呼ばないんですか?」
そうゆうと、おじさんはまるで娘と会話するような優しい顔で答える。
「何言ってるの?君一人だよ」
「へ?」
そして小夜のワンツーマンの試験が始まった。




