第11話 ギルドの長
街の中心部、小夜が最初に現れた場所そこの南東にはアルフォード地方全てを管轄するギルド本部が存在する。そこにはビルのように高い塔が立ち並び、建物全てが灰色の石造りで出来上がっている。
ハイカカオット城ほどではないがこの王国で2番目に大きい施設には変わりなく、ここを拠点としてクエストを受注したり、冒険者ランクの申請も行える。
常駐する兵士も多いがなんといっても受付譲を始め従業員の数も500人を超え、その一人一人が優秀な人材、ゆわば人生エリートコースの者ばかりである。
しかし近年、マナ災害の影響で従来の試験よりも難易度が上がり外の危険性も高くなり引退を余儀なくする冒険者や死者が後を絶たない。
だが毎年年に2回行われるギルド実力承認試験では命知らずの者、腕に自身がある者、単に他より払いがいい冒険者志望の参加人数は後を絶たず、アルフォード地方の各地からこの日は冒険者志望の者たちが集結する。
もちろん小夜も、その一人だった。
城内で借用していた服では目立つので、現在は地味なインナーに申し訳程度の装甲プレートを施している。ちなみにシルヴィはいつものメイド服のままである。
「うわあ…すごぉ」
小夜は前の見えない程の行列の中、額に汗をかきながらなんとか受付を済ませようと人混みに紛れていた。
参加者は性別どころか、種族も問わず人間から鬼族、獣族、オーガなどまさに多様性である。その誰しもが冒険者になるため日々鍛錬し今日に臨んでいた。
「…はい…例年冒険者志望者は2000人を割らないと聞いております」
シルヴィはこんな行列にも汗をかくことなく涼しげな表情で語る。
「うへぇ…2000…私、本当に大丈夫かなあ」
ここにきてやはり心配になったのか小夜は緊張している。
「心配ありません。昨日も言った通り、万が一小夜様が不合格になることはございません。仮になったとしたらその時点でこの世界は終わりです」
淡々と云うシルヴィの、セリフの中に世界の命運を託されていた。
「…相変わらず言葉の重みがすごいなぁ…とゆうよりイオンさんもギルド試験に参加したらよかったのに…きっと余裕ですよね」
シルヴィの実力を知っている小夜はそういたずらに質問してみた。もしかしたら冒険も彼女と一緒に行けるかもと淡い期待を抱えながら。
そう小夜が、横目でシルヴィを見ながら促すとシルヴィは小夜の方を向き口を開いた。
「…いえ…私は…」
そのとき横から声がした。
「おや、シルヴィじゃないか」
そう呼ばれると途端に人混みが開かれる。
その先にはこちらに手を振りながら向かってくる男の姿があった。
中性的な見た目で片側にモノクル「片メガネ」をつけ黒と白の髪の色が混じり首には値が張りそうな赤色のペンダント白シャツのような服に黒いネクタイを結び上から袖を通さずに黒のロングコートを羽織っている。
見た目は紳士という感じで、城で見た時のグエンの着こなしとはまた違った魅力を醸し出していた。
「おい…ギルドマスターだ…」
周囲ががざわついていた。
シルヴィの前で止まると彼女は表情を変えず会釈する。
「お久しぶりです。クロノ様」
「相変わらず固いね、シルヴィは」
そういうと、彼は小夜に視線を移す。
「おや、君は…ああ…例の」
小夜の事情を知っている彼は失言のないようそこで言葉を止めた。
「はじめまして、私はクロノ・ヴァン・リチャード一応ここのギルドマスターをやっている。よろしく」
そういって手を差し伸べたクロノに小夜は握り返しながら
「私は冷煎小夜です。よろしくお願いします。バ…ン?さん」
相変わらず聞き慣れそうにない名前を小夜はなんとか繋ぎ止めようとする。
クロノは小夜の手に触れた時少し驚いたようだったがすぐに作り笑顔に戻し、手を離した。
「小夜…期待しているよ。試験頑張ってね」
そしてまたシルヴィの方に向き直るとクロノは口を開く。
「今日はグエンはいないのかい?」
少し含みのある言い方に違和感を覚えたシルヴィ。
「はい、本日は他の任務で席を外しております。どうしてそんなことを?」
「いや、ちょっと興味本位で聞いただけさ。深い意味はないよ」
相変わらず取り繕ったような笑顔だった。
「おい…今話してるメイドの女って」
「ああ…間違いない。元S級冒険者のシルヴィ・イオン・バレンツだ」
「シルヴィ!?あの「血のエスパーダ」の!?」
外野の声に小夜が反応する。
「血のエスパーダ?」
そう小夜が呟くとシルヴィが口を開く。
「昔、私が冒険者だった頃に所属していたギルド名です」
「えっ!?イオンさん冒険者だったの!?」
小夜の頭が混乱する。するとクロノがニヤっと笑い口を挟む。
「懐かしいねぇ〜あの頃はグエンと君とでよく暴れたよねぇ。そうだ!シルヴィも私の元で働かないか?君みたいな人材がいてくれたらウチも助かるんだよね。今うちもカツカツでね」
「お断りします。今の私の命はわが主に仕える身ですので」
クロノの軽口に即答するシルヴィ。
「冗談、冗談、じゃあまた逢おう二人とも」
そういってクロノは人混みに消えた。
「…イオンさんって…一体」
謎の経歴を持つ現戦闘メイドのシルヴィを小夜は見つめたが相変わらず、表情1つ変えていない。
「…時間を取りました。いきましょう。小夜様」
理由が解明されることのないまま小夜は試験登録を済ませた。




