Part23 ショカン山ダンジョン攻略その5
Part23 「ショカン山ダンジョン攻略その5」
暗殺者たちの襲撃を受けた後3日が経過した、僕たちは襲撃自体を隠し誰にも言わなかった、出来れば襲撃者たちがモンスターにでもやられ僕たちと接触しなかった事になれば良いと思っている。
とは言え、やはり放っておくことはできずシスターズの皆さんに情報収集を急がせている、シスターズの皆さんはダンジョン内で襲撃されたことに対し、過敏に反応し、王宮の影の組織から応援を呼び、黒幕を暴き粛清すると息巻いていたが、狙いは僕一人であること、リズさんに害意はない事を理由に何とか隠密行動に賛同してくれた。
ショカン山ダンジョンの探索も何食わぬ顔で続けていたが、ちょっと広い空間に達しそこから7本もの枝道が繋がっていることが判明し、そこにベースキャンプを設営することにした、ベースキャンプには、頑丈なテレポート用の転移小屋を造ることとし、その工事のため暫く探索は中断しているが、オーアールさんと工事のため雇った大工が2人とデアリスさんが用意してくれた護衛が2人、それとリリッカさんとシャルさんが日替わりで護衛をし毎日ダンジョンに向かっている。
「さてと、情報はだいぶ集まったすか?」
僕達は宿舎の部屋に集まり会議を開いていた。
「はっ、デアリス殿、カショギ殿それと、貴族たちの中に不穏な動きの有る者ですね。」
二さんが立ち上がり。
「デアリス殿については私が。デアリス殿はご存知の通り、平民からマスケ地方の行政官となった人物です、幼少の頃は二つ名を“切れ者”又は“優等生”と呼ばれ、将来を嘱望されていたそうです、現在は二つ名を“及時雨”又は官職名の“行政官”と呼ばれ親しまれています、行政官としての実績についてはなかなかの出来といったところでしょうか、善政を布き住民達の評判はすこぶる良いものです、ただ気になるのは行政官に選出される時に、同じ行政官の候補の貴族が3人亡くなっています、何れも高齢で持病の悪化が原因とされたので、その時は問題にもならなかったのですが。」
「デアリスがやったっていうのかよ?」
「証拠は何もありません、むしろやっていないという証拠が山の様にあります。」
「あまり多すぎる証拠はかえって怪しいっすね?それにしても“及時雨”とは随分な評判っすね。」
「なんだい!その“及時雨”てーのはよ。」
「干ばつで困ったときの雨のような人って意味っす。」
「随分よのう、如何ほど努力したにせよ、人としての誠がなければこれ程の評判はつくまい、デアリスについては信用してもよさそうぢゃ。」
「しかし行政官になったいきさつが気になるっす。引き続きその辺のところの調査をお願いするっす。」
「はっ、御意にございます。」
三さんが立ち上がり。
「私からはカショギ殿について、二つ名を“お大尽”と呼ばれ、手広く商売をやっているようです、商品も日用品の小物から、軍事物資、船の建造から販売まで多岐にわたります、評判の方は好評と悪評に二つに分かれ、悪評の方は腕の良い商売人なら必ず付くようなもので、かえって商人として信用を高める類の物かと推察されます。」
「それほどの大商人が、なぜこんな田舎にいるんすかね?」
「はっ、カショギ殿の店の本店はサッポの都にあり、カショギ殿もサッポの都にいることが多いのですが、なぜマスケの町に本人が出向いているのかは確かなところは不明です、番頭の一人がカショギ殿が王家との取引を望み、エリザベート様に近づきたいのだと知っている風のことを申しておりましたが、本当の事は本人以外にはわからないでしょう。」
「という事は、王家や貴族との取引はそんなに多くはないという事すか?」
「はい、軍には随分と信用があり、取引も多いのですが、王家や貴族たちとの取引はそんなに多くは無さそうです。」
「軍には信用されているんっすか?つまり実用的で、品質が確かな物、商人として堅実そうっすね?」
「王家出入りの商人は何人かとお会いしたことがありますが、カショギさんとはここで初めてお会いしましたわ。」
「リズさん、やっぱり王家御用達というのは、伝統と格式とかが必要なんすか?」
「そういう訳ではないのですけど、やはり古くから信用のある商人が好まれるのは確かですわ。」
「ともかくそれ程の大店の主が、こんな田舎に出向く訳が知りたいっすね。」
「政商を目論むか?なかなか手強そうぢゃのう、楽しくなってきたのう。」
一さんが立ち上がり。
「その他の事については私から。まず、サッポの都の貴族たちですが、影の組織に依頼しそれとなく当たっておりますればいま暫くお待ちください、しかしながら今のところ特に注意を引くような方は見当たりませぬ。“千三つ”のシャイロックですが、怪しげな風体のわりに意外と真面目に商売をしているようです、確かに怪しげな商品は多いのですが、その取引先や仕入れ先には、犯罪とは全く無関係であり、反社会的勢力とは慎重に距離を置いているようです。」
「真っ当に商人としての成功を目指しているわけっすね、でもあのレリーフそんなに簡単に手に入るもんっすか?」
「あれ程のものぢゃそんな簡単に落ちている物ではないのう、しかしあれは生半可に強い力があり、持つ者に障りを呼ぶものぢゃ、あ奴が自力で探し出したわけではあるまい、どこぞで持て余していた者から買叩いたかのう。」
「シャイロックには色々コネがあるようで、商人としてより情報屋としての評判があるようです。」
「情報通っすか、使えそうっすね。」
「ところで、オーアールさんベースキャンプはどの程度仕上がっているっすか?」
「はっ、あと2日ほど、お待ち頂ければ、完璧に仕上がるであります。」
「リリッカさん、危険なモンスターなど出ていないっすか?」
「おう、ダンジョンも深くなってきたからな、退屈しないぜ、まあ手に余るって程の奴はまだ出っくわしていないぜ。」
「妾の方も、使い魔で適当にあしらえる程度ぢゃ、しかしデアリスが用意した護衛だけではちょっと厳しかったかのう。」
「本来業務であるショカン山ダンジョン探索も、緊張感が出てきたっすね、こっちも慎重にいくっす。んっ?マリエッタは?」
「退屈しちゃってもう寝ていますわ。」
「まあ仕方あるまい、マリエッタやリリッカには難しい話ぢゃ。」
「おい!俺まで入れるな!」
WWWW…
☆☆☆☆
マスケギルドの一角、多くの商人と冒険者たちが商談で賑やかな喧騒を作っている中、僕は“千三つ”のシャイロックさんを探していた。
「やあ、勇者さん今日はのんびりしている様だな。」
「ああ、シャイロックさん、貴方を探していたんっす。」
「へへえ、実はおいらもあんた達を探していたんだ、“使える”ダガーはまだだが、冒険者の皆に評判の良い品があってよ、ちょいと見て言ってくんな。」
シャイロックさんは直径10cmほどの岩の塊を桶の底に置いた。
「良いかよく見ててくんな。」
桶の底の岩に紙のお札を張ると、岩が水に変じ桶の底に少しばかりの水がたまった。
「どうーでえ、水ってのはよう、苦労して運んだ割に、いざ使おうとしたら水筒に穴が相いていて使い物にならねえ、ってことがよくあるだろう、こいつはどんなにぶつけようが、乱暴に扱っても、お札さえ張れば間違いなく水になるちゅう、便利な代物だぜ。」
僕はウォーターで水球を出し、その桶に放り込んだ、大量の水が桶からあふれこぼれる。
「おいおい!なんだこりゃ~、もしかして魔法なのか?」
「はい、僕たちは水を運ぶ必要がないっす。」
「ちゃー、こりゃ参ったぜ勇者さん。」
「シャイロックさんには人を探してほしいっす。」
「ふーんどんな奴でえ?」
「そうっすね、ここに集まっているのは冒険者ギルドに所属している、冒険者っす、大概は誰か彼が同じギルドに所属したことが有ったり、顔見知りが居るはずっすよね、だけど誰も見たことのない人、冒険者のふりをしているような人を探しているっす。」
「つまりここで浮いている奴だな、よし、このシャイロックさんに任せてくんな、情報料はそれなりに請求するぜ良いな。」
「はい、良い情報にはこちらも出し惜しみするつもりはないっす。」
口元に笑いを残したままシャイロックさんは商売を再開した、改めて周りを見渡してみたが、本当に雑多な人込みで、いろんな人が居る、ショカン山ダンジョンの模型となっているホログラムも色々な情報が加えられ、探索が佳境に入っていることを示している。
☆☆☆☆
新たな転移小屋の設営も終了し、今朝からショカン山ダンジョン探索を再開した。
転移早々、転移小屋の点検をしているオーアールさんに声をかける。
「異常はないっすか?」
「はい、シャルロッテ殿の見張り番がきっちり仕事してくれたであります、転移小屋の周囲には怪しげな足跡がいっぱいですが、小屋は無傷であります。」
「ふむ、何やら楽しそうな痕跡が沢山あるのう、ここからの探索は退屈しなくて済みそうぢゃ。」
「勇者様、どの道から攻略するでありますか。」
「えっと、道は7本、うち1本は来た道ですから、残りは6本。」
僕は洞窟内をぐるっと見渡して。
「あの道からで良いっすか?」
「いきなり、一番険しい道を選んだのう。」
「いや、あの崖登りは夢に出てきそうで、早々に潰しておきたいんっす。」
僕が指さした道は20メートル程切り立った崖の上に入り口が口を開けている。
「あのクラック沿いにルートを確保するであります、ホールドに困ることは無さそうであります。」
オーアールさんは笑顔を見せ、クライミング道具を背に担ぐ。
「へへっ、ダンナ、俺とオーアールとマリエッタでルートを作るから、ここで見物していなよ。」
程なくルートが完成し、みな慎重に登った、思ったより険しい道で、ザイルが頼りの登攀が続く。
「ザイルは今ので最後だぜ、また厳しい登りが現れたら、引き返したほうが良さそうだぜ。」
巨岩を右に巻いたら大きな広間に出た。
「ちょっと待て!」
「どうしたい、シャル。」
「何か居るのう、かなり厄介そうな奴ぢゃ!」
「ああ、あれか?かなりヤバイな。」
広間を見渡してみた、直径30メートル程、天井がかなり高い、足場は今までの岩場と違いかなり良さそうだ、僕のいるところから左側の壁面が窪んでいて上からの落下物を避けることが出来そうだ。
「皆さん、左側を見てください、壁が窪んでいて、上からの落下物を避けらそうな所、あそこに移動してください。」
リリッカさんと、シャルさんが広間の中央で睨みを利かせる、あと全員が岩陰に身を潜める。
「リリッカさん!シャルさん!合図したらすぐこちらへ避難してください!」
「おう!何する気か知らないけど、頼むぜ!」
「ふふん、亭主殿のお手並み拝見ぢゃな。」
広間の反対側から、大きな影が3つ近づいてくる。
「おい、ミノタウロスだぜ、でかいなあ、3頭もいるぜ。」
「ミノタウロスの頭脳ぢゃ3頭の連携など取れるはずが無かろう、ぢゃが油断するな。」
身長4メートルは有ろうかという巨大なミノタウロスの体が見えた、ミノタウロスは裸の人間の上半身、毛むくじゃらの牛の下半身と、頭部。緑、赤と黒の毛色をしている。そしてそれぞれ刃渡り1mは有りそうな、巨大な戦斧を持っている。
まず、シャルさんの魔法火球が3頭のミノタウロスの中間で爆発する。
リリッカさんが左へ飛び赤ミノタウロスの腿を切りつける。
「ちぃ!浅い!」
シャルさんの雷が緑ミノタウロスを貫く。
「モ˝ッホ、モ˝ッホ」
“紅”が閃光のように、駆け抜ける。
僕は天井に意識を凝らしサンダー魔法の音で共鳴しそうな個所を探る。
火球が爆ぜる。
ミノタウロスの戦斧が唸りを上げ振り回される。
戦斧を“紅”で受けた、リリッカさんが吹き飛ぶ。
リズさんのヒールの詠唱が一丸と高くなる。
フライクーゲルから放たれた矢が雨のように降り注ぐ。
雷が走り抜ける。
一旦は止まった“紅”の閃光が迸る。
<ここだ、ここなら動きそうだ。>
3頭のミノタウロスはすでに血まみれだ、リリカさんとシャルさんは肩で息をしている。
「二人も、避難してください!」
ミノタウロスの足元が爆音と共に弾け、大量の土砂が舞う。
リリカさんとシャルさんが岩陰に逃げ込む。
轟音と共に天井が崩れミノタウロスの体は岩塊で埋もれる。流石のミノタウロスもその動きを止めた。
「ふえ~何が起こったんだ?」
「今のはご主人さまですか?」
「はい、共鳴の力です。」
「亭主殿の音だけのサンダーがとうとう岩をも砕いたかのう。」
「そんなことより、リリッカさん大丈夫ですか?」
「ああ、心配ねえよ、リズのヒールが効いている。」
マリエッタが興奮しながらミノタウロスの周りを飛び跳ねている。
「見て、見て!すごく大きな角だよ。」
「角を切り落として持って帰ろうぜ、こんな立派な角は見たことがねえぜ、凄いお宝だなWWWW」




